カテゴリ:芸術論
<早池峰岳神楽1>
仙台市歴史民俗資料館(れきみん)秋祭りの催しである芝生公園での演技は、とうとう最後の早池峰岳神楽(はやちねたけかぐら)になりました。早池峰山は岩手県のほぼ中央にある山で、標高は1914m。「日本百名山」の一つであり「花の百名山」にもなっています。中でも、エーデルワイスに似たハヤチネウスユキソウが特に有名です。この山はアプローチが深く、東西南北のいずれにも登山口があり、そして早池峰神社が置かれているようです。 早池峰山は花巻市、遠野市、宮古市の境界にあります。その麓である花巻市の岳(たけと大償(おおつぐない)の2つの地区で継承されて来た神楽の総称が「早池峰岳神楽」で、早池峰神社に奉納され500年以上の歴史を持っています。国指定の重要無形民俗文化財であるばかりでなく、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている、日本の代表的な神楽なのです。 ネットの地図検索で探したら、大償は山間の小さな集落でした。きっと相当の過疎地なのでしょう。でもそこに「神楽館」があることも分かりました。そんな山間で500年以上も伝統の神楽を伝え続けて来た人々の努力に、先ずは敬意を表したいと思います。 最初の神楽は「鶏舞」(とりまい)です。鶏の冠を被り、面はつけません。踊り手はとても神妙な表情をしています。鶏は朝一番に鳴く鳥。きっとこの舞は日本の国の夜明け(国の初め)を象徴しているように思うのですが。 踊り手は2人の男で、とても静かな舞が続きます。 静かであると同時に、とても緩やかな舞でもあります。 深々とお辞儀をする踊り手。これは一体何を表しているのでしょう。説明は一切ありません。 地味な着物姿の踊り手2人が、くるくると廻りながら舞います。 手を広げるしぐさは、きっと鶏が羽根を広げる姿なのでしょうね。 扇子を広げ、神妙な面持ちの踊り手。 これは日本列島誕生の物語なのでしょうか。謎めいた舞でした。最後に踊り手は一礼して舞台から去ります。 ここからは2番目の「天女」が始まります。面をつけ、晴れ着を上から重ね着しています。 天女の表情も、舞そのものもとても明るいものです。 天女は天の国から日本列島に遣わされた使いなのでしょうか。 ヤマトの国の繁栄を祈るかのような天女の舞。 この大八島に幸あれ。このヤマトの国に幸あれと。 天女の顔には穏やかな笑みが浮かんでいます。 人々の暮らしが豊かなものでありますよう。 そして天のご加護がありますよう。 厳粛な中にも華やかな舞。 天女の舞はなおも続きます。<続く> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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