テーマ:創作童話(818)
カテゴリ:写真
この連休中、私は4つの美術館と博物館を訪れました。今日はその時に撮った写真を使って、小さなお話を書いてみますね。退屈しのぎにお付き合いいただけたら嬉しいです。 5月のある日、女の子は郵便受けのふたが閉まる音を聞いた。「変だねえ。今頃郵便屋さんが来るなんて」。そう思ってレースのカーテンを開けて外を見ると、走り去るウサギの背中が見えた。 女の子は急いで郵便受けのところに行ったんだって。そしたら何と中に入っていたのは招待状。でもね、住所は分かったけど差出人の名前が書かれてないんだよ。「ふ~ん。なぜ招待状が来たんだろう。それに誰がわたしに招待状をくれたんだろう。ともかく行ってみなくちゃね」。女の子はそうつぶやいて、街の方に出かけたそうだ。 「ここは1丁目だから違うし・・」。女の子はお店の前を通って行った。 「ここはまだ2丁目か。じゃあ違うね」。すたこらさっさと女の子はここも通過して行った。 「みどり町3丁目1番地は確かにここだわ。でもここは美術館みたい。裏の方から入ってみようかな」。女の子はそう言って、どうやら裏庭の方に向かったようだよ。これはその様子を見ていた風のつぶやき。 ここがね、美術館の裏庭なんだ。女の子はきょろきょろして辺りを捜して見たんだと。「誰かいないかなあ?」。 「犬さん犬さん。この招待状を書いた人は誰ですか?」。「なになに~っ、招待状だって?ちょっと見せてごらん。ふ~む。これはタロウの字だねえ。それなら、そこの道を真っ直ぐ行けばいいよ」。犬は澄ました声でそう言ったんだと。 「犬さんどうもありがとう。じゃあ真っ直ぐ行ってみるね」。そう言うと女の子はとっとことっとこ石畳の道を歩いて行った。 「変ねえ。そろそろ着いてもいいころだけど」。女の子はここでもきょろきょろ辺りを見渡したんだと。これもまた風の話。 「おじさん、おじさん。この招待状をくれたタロウさんはどこにいますか」。「なになに。君はタロウを探しているのか。それならそこのドームを入って、階段を3つ登るといいさ」。「ありがとうおじさん。じゃあ行ってみるね」。女の子はドームに向かって一直線。 「ああ、きっとあそこがドームだわ。行ってみなくちゃ」。そう言うと女の子はドームの中に入って行った。 「1番目の階段ってこれかしら。ずいぶん小さいけどねえ」。女の子は迷いながらも、その階段を登って建物の中へと入ったんだと。ここまでは全部風の話。 「あらっ、変ねえ。ここは真っ暗よ。ははあ、これは地下へ行く道ね。こんなに暗いはずはないもの」。そう言うと女の子は、2つ目の階段を探したんだ。これはね、見ていた壁の話。 「失敗失敗。ふふふ。これがきっと2つ目の階段だわ。だってとっても明るいもの」。女の子は喜んで階段を登って行ったさ。これも壁から聞いた話だけどね。 「あそこが天井だとすると、もうすぐね」。女の子は喜び勇んで3つ目の階段も登ったようだ。これは階段の話。 「あそこに光が見えるわ。きっとあっちの方だと思うんだけど」。女の子はおっかなビックリ光の方に向かって行った。これは光から聞いた話。 「まあ、誰もいないわ。ここじゃないみたいねえ」。女の子はまた前へと進んだ。これは椅子の話。 「変ねえ。ここにも誰もいないよ。いったいタロウ君ってどこにいるんだろう」。これはテーブルから聞いた話。 とうとう少女は疲れて座ってしまった。それを観ていたのがボタンの花。これはボタンの花に聞いたんだ。 「お嬢さんこんにちは~。その招待状を届けたのはボクですよ」。その声に驚いて少女が見上げると、確かにそれはあのウサギのようだ。「まあ、じゃあここで良かったのね。ああ安心した」。少女は初めて小さく笑ったんだと。これはウサギから聞いた話。 「やあ待たせてゴメン。ぼくがタロウだよ。あわてて書いたもんだから、この場所が良く分からなかったでしょ。おわびにこのリンゴ上げるね。ところで君、病気はすっかり良くなったみたいだねえ」。「あら、どうもありがとう。おかげさまで、もうすっかり病気は治ったのよ」。少女の顔に赤みが差した。これはリンゴに聞いた話。 ここはみどり町美術館の不思議な広場。壁が鏡になっていて、物が二重に見えるのさ。これは鏡に聞いた話。 ふふふ。ここは何でも2つに見える不思議な広場。実はあのウサギさんは不思議の国の住人なのさ。それでタロウにお使いを頼まれたって訳。これはこの爺がウサギから聞いたんだけどね。その爺も、ここでは2人になってる。つまり4つの耳で聞いたから、この話は間違いないと思うんだ。爺がそう言うと、風も笑った。ではまたね~!!<おしまい> < 昨日のO川さんの記録 > 雨の中を青森市から秋田県大館市まで80.2kmを13時間かけて走破。今日は秋田県五城目町まで走る予定とのこと。O川さんガンバ~!! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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