テーマ:短歌(1696)
カテゴリ:短歌
~熟年離婚を詠む~
あまたある言葉の中で哀しきは「熟年離婚」の重き現実 エイプリルフールのその日選びたる華燭の典はいづこに去りし 調停後分割されたる年金を大事に使ひ命をつなぐ 世迷言泣き言すべて捨て去りて食料品を黙々選ぶ :よまいごと 離婚より二年経ちてやうやくに家事の手順もスムーズとなる *ふたとせ 子は三人いづれも遠き地にありて忘れられたる老父の日常 *みたり 七十も半ばとなれど悲しみをわれな忘れそなほ生くるため 女とは妖怪変化と気づきつつまだ煩悩に取りつかれをり 唐突に怒りの言葉吐き出せど聞く人もなしわれのほかには 迫り来る不安を無理に押し込めて一日終へたりあしたは如何に *ひとひ 真夜覚めて胸の動悸を怖れつつまた床に就く独り身のわれ 朝食の後に飲みたる六種もの薬の名をばつひに覚えず 余人には体験出来ぬ離婚すら人生修行と受け止めて生く 三月も晦日となりて降る雪を清しと見つつ春の日を待つ 時ならぬ春の雪とはなりにけりされど闘志はいまだ捨てざる 別れたる妻は健やかに過ごせるや炊ぎの間にもふと思はれて *かしぎ=炊事 昏き歌されども捨てずわが胸に湧き出したる言の葉なれば *くらき 埋火のごとく耐へをるわがいのち春はいつ来るいつ来る春は *うづみび 融けそめてまた降りかかる淡雪に平成の御代いま去らむとす 苦しみを喜びとなし生かしめてさらなる試練われに与へよ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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