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マックス爺のエッセイ風日記

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2019.07.17
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テーマ:世界への旅(365)
カテゴリ:旅、温泉
~首狩り族・日本・丸木舟~

   

 夕食には台湾のビールを飲んだ。私は元々ビール党じゃないので、日本製には拘らない。本当は体のために余分なカロリーは摂らない方が良いのだが。朝食は6時半にホテルのレストランで。私はずっとお粥を食べていた。中国風の肉入りスープが塩辛い。その分野菜と果物でカバー。前夜は11時には眠ったはず。日本語放送のテレビが点けられたのは初日だけ。後はずっと操作が分からなままだった。

        
                   <高雄市内の夜明け>

 台湾随一の工業都市である高雄は日本統治時代につけた名前で、それ以前は「打狗」(ターカオ)と書いていた由。意味は「犬を打つ」。それではあんまりと発音に近い高雄を選んだわけだ。その「たかお」も今では現地の発音で呼ばれている。日本統治時代の日本名は「松山」など多数あるが。現地読みになったと陳さん。7時半、バスが出発。

  

 次第に空模様が怪しくなる。まあ熱帯に所属する島の南部に来たのだから、そんなものだ。運転手さんは大変だろうが、客の我々は暢気なもの。山脈が低まった辺りから進路を東に取る。峠越えで島の東部に向かうのだ。つづれ織りの山道に入ると陳さんが言う。「ここはパイワン族の縄張り」と。「字は」と私。「排と湾」。陳さんが答える。食人種でしたっけ。いや、首狩り族と物騒な会話が続く。

       
         <パイワン族の家屋=戦前に日本の研究者が撮影>

 明治4年(1871年)沖縄本島に向かっていた宮古島の船が嵐で台湾に漂着し、パイワン族に捕まった。逃げ出した宮古島民のうち54名が捕まって首を切られた。当時はまだ琉球王朝だが、薩摩藩の支配下にあり実質は日本の統治領。翌年琉球王国は「琉球藩」となり、明治7年、日本政府はこの事件の賠償を清に求めるが、清国は「台湾は化外の民」として拒否。このため台湾に軍隊を派遣し蛮族を処罰する。明治12年(1979年)琉球藩は沖縄県として再出発。いわゆる「琉球処分」がこれだ。

  
   <旧台湾総督府=戦後改装され現在も総督府として使用>

 明治28年(1895年)日清戦争で勝利した日本は下関で条約を締結し、朝鮮を独立させ、遼東半島、台湾の割譲と賠償金を得る。以降、第二次世界大戦で敗れるまで、台湾は日本の統治下となった。バスは峠を越えたが五里霧中。太平洋に出たと陳さん。海の彼方の「緑島」は全体が刑務所なのだとか。私はてっきり東シナ海だとばかり思っていたが、帰宅後に調べたらフィリピン海だった。あらま。

     
         <台東市での昼食(左)とお疲れモードの陳さん(右)>

 雨が上がって海が見えた。だがエメラルドグリーンではなく濃紺。「急に深くなってるので」と陳さん。遠浅ならサンゴ礁が出来て海の色が変わるのだが、きっと直ぐ沖合を黒潮が流れているのだろう。昼食は台中市で摂った。写真の端に「紹興酒」が写っている。これじゃ太るわけだ。再び走り出したバスの席で、陳さんに丸木舟と石器の話をしたが反応が鈍い。考古学にはあまり興味がないのだろうか。

   
   <フィリピン海に浮かぶ緑島や与那国島が見える。右は今回実験の丸木舟>

 後日談だが帰国後数日して、国立科学博物館の実験が成功したとの報道を聞いた。台湾の東海岸から自分たちで作った丸木舟を漕ぎ出し、約2日間かけて与那国島へ渡ったのだ。1回目の草舟は海水が沁み込んで失敗。2回目の竹の筏は、黒潮の強い海流に流されて到着に失敗。3度目の今回は、昔ながらの石器で杉の丸太を切り、中を抉って丸木舟を作った。

   
  <丸木舟を作る縄文人。これでは浅くて転覆する> <流されるため直線とは行かないが>

 女性1人を交えた5人で漕ぎ、太陽と星の位置から方位を推定。黒潮の流れを借りつつ、それを横切り、日本最西端の与那国島に到着。これは我々の祖先がどのように海を渡り、日本列島へ来たかを確かめる学術調査なのだ。

 実は丸木舟製作専用の石器が、インドネシア、フィリピン、沖縄、九州、そして東京の新宿からも出土している。考古学ファンの私にとっては、とても意義深い旅となった。なぜならその海を、ごく間近にみたのだから。<不定期に続く>





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Last updated  2019.07.17 05:36:28
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