テーマ:世界への旅(365)
カテゴリ:旅、温泉
~旅の美・宿の美 その2~ 花蓮の宿にて
花蓮市のホテルのロビーに、こんな天然木が置かれていた。左はとても軽やかなフォームで、右はいかにも重厚な素材。どちらも何の手も加えてないはず。木の素材の美しさと生命力を感じて、わたしはシャッターを切った。 階段の下に無造作に転がっている木。これにも全く人の手は加わっていない。ひょっとしてこれは海岸に打ち上げられた流木を拾って来たのだろうか。 ロビーにはこんなカヌーが置かれていた。アミ族は山麓で主に農業に従事していたと聞く。それならこのカヌーに乗っていたのは、フィリピン海に浮かぶ島の部族かも知れない。へさきが尖り、大きく上に反っているのは、「波切」のためだろう。いかにも南洋の海洋民族らしい意匠だ。 これがカヌーの全容。長さは7mほどもあるだろうか。これで漁業をしていたとは感じられない。わたしには他の島との交流のための舟としか思えなかったのだが。 ホテルではこんな木像がわたしたちを出迎えてくれた。恐らくかつてのアミ族を模したのだろう。アミ族自身は農民なので、このようなものを彫る必要性はないはず。ほとんど裸に近いこの姿こそ、彼らの部族の偽らざる姿だったのではないか。 まさかこのホテルの経営者がアミ族なのではないだろう。それなら一層、ホテルのロビーに民族の象徴的な彫像を設置した勇気を褒め称えたい。あの舞踏ショウでは得られなかった彼らの実態を知った思いだ。 オーストラリアの美術館と博物館には、必ずアボリジニのコーナーがある。それはかつて政府が行った民族政策の失敗を反省してのこと。原住民から土地を奪い、自由を奪って都市に移住させたことで、彼らは生活のすべを失い、アルコール中毒者が増えたのだ。まさか台湾でも同じことが行われたわけではないだろうが。 日本も同じ過ちを犯した。明治新政府はアイヌから土地を収奪して、三菱などの財閥に廉価で明け渡した。そのせいでアイヌは本来の生活地から、不便な土地へと強制的に移住させられ、生活の糧を得るため木彫りを覚えたのだ。台湾の16ほどの部族は、どんな風に中国からの移民と同化して行ったのだろう。 それにしても力強い作品ばかりであることに驚いた。素材の生命力もちゃんと保たれているし。 恐らくこのようなものにカメラを向ける旅行者は少ないはず。でもわたしはその国の文化や歴史の跡を訪ねる旅人で、単なるツアーでさえフィールド調査になると思っているのだが。 このよう美術品が、たとえアミ族の手に拠るものでなくてもわたしは満足している。 また民族風の意匠だとしてもそれはまだ許せる。なぜならこれらの作品には、台湾の先住民族に対する深い敬意が読み取れるからだ。 たとえどんなささやかなことでも、台湾の先住民族の文化らしきものをブログを通じて紹介出来たことに、わたしはとても充実感を覚えている。台湾に感謝。現地ガイドの陳さんに感謝だ。<続く> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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