テーマ:☆詩を書きましょう☆(8515)
カテゴリ:詩
<夏の詩>
生きる すり減って薄っぺらになった石鹸 洗面台の扉を開けて探したが一個もない ああ 使い切ったんだなあ全部 あわてて生協へ買いに行った 三個一包みのを二セット 色が違うのを なぜって 今度はまだ それくらいは生きられるような気がしたのさ 寒かった七月は冬用の布団を被っていた とても体が冷えて仕方なかったからなあ それが一転して猛暑になった八月は 生きていることだけでも大変だった 気圧の変化 血圧の変動 それに幾つかの持病 買い物に行くのも必死だったあのころ 新しい鋸を買った 梅の枝があまりにも伸び過ぎていたからね これまでのは板を挽くための鋸 ギーコギーコと音がする錆びたやつだった 命の保証もない俺が鋸を買ったのは 庭をきれいにしたいと言う願いから 俺にもまだそんな気持ちが残っていたんだなあ トマトの苗を始末し ミニトマトの苗を始末し 今日はゴーヤの苗を引っこ抜き ネットを畳んだ 今年買ったゴーヤの苗は三本 うち一本はまだ若いうちに勢いを失って枯れた 残った二本の苗になったゴーヤは約四十本 そのほとんどが俺の胃に納まった チャンプルー 佃煮 ピクルス ジュース そしてサラダになり ラーメンにも入れて食った IH調理器のグリルを掃除した あまりにも汚れて臭いがしていたからねえ アルミホイルを取り換え 受け皿の脂をふき取り 新しいホイルで受け皿を覆った ついでにシンクの掃除 ぬめりのヌラヌラが消えて嬉しい俺は 主夫 トイレットペーパーの在庫を確認 続いてティッシュペーパーの在庫も確認 おお まだ大丈夫 前妻が家を出てからまだ一度も買っていないそれら 調味料も米も 無くなる直前に買えば良いさ それも一番安い店の一番安い銘柄で十分だ テッポウユリが咲き ギボシが咲き ヤブランが咲き 今年落ちずに残った柿の実は二個 それでも去年の二倍 昨年は初めての実を結んだ若い柿の木 そんなことでも無性に嬉しい俺は 倒れかけたテッポウユリに支柱をした ああ ぼんやりと霞む俺の目よ ああ 耳鳴りが混じる俺の耳よ 時おり眩暈に苦しみ 必死に記憶を呼び起こす俺だよ 生きている価値があるのか こんな俺が 生きている意義があるのか こんな俺にも 何とでも言うが良いさ あまり良く見えない目の あまり良く聞こえない耳の俺を 笑うなら笑えば良いさ だが俺は俺なりに世の中を見 俺の詩を書き 俺のブログを綴る 命ある限り 生きて在る限り ああ 九月の庭は少しだけ涼しくなったよ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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