マックス爺のエッセイ風日記
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~ランニングと俳句~ ランニング姿に着替えていざ出発しようとした時、裏でウグイスの声が聞こえた。直ぐ裏の家はご主人が10数年前に亡くなり、空き家になって無人。その庭の梅の木が満開で、ウグイスは梅の蜜につられてやって来たのだろう。そこで俳句を詠む気になった。 仕舞屋の庭にも初音猫の聲 *しもたや *はつね *声 「仕舞屋」(しもたや)は商売などを止めてしまった家のこと。「初音」はウグイスの初めの頃の鳴き声で春の季語。「猫の恋」や「猫の子」は春の季語で「季重なり」になるため猫の聲とした。誰も住んでいない家の庭にもウグイスや野良猫の鳴き声がすると言う春の風景。 この日も黄砂が降るとの予報。国道の辺りまで走って来ると、真上は青空だが地表に近い部分が霞んで汚れ、この時期なら見える雪を戴いた蔵王連峰の姿が全く見えなかった。ああ無情。 黄砂激しく蔵王連峰隠れけり *「黄砂」が春の季語 いざわれもランニングせむ弥生尽 *やよいじん 「弥生尽」(やよいじん)は本来旧暦三月の月末の意味で、春の季語。今は太陽暦だが、旧暦と変わりなく使っている。3月下旬が誕生日の私は、今年77歳になった。いわゆる「喜寿」だが、本来は「数え年」でのお祝いだが、これも拘らずに使っている。喜寿記念のランニングは先日も行った。 ツクシ(土筆) 通学路整列する子つくづくし 道端にタンポポ’(蒲公英)とツクシ(土筆)が並んでいた。どちらも春の季語だ通学路を小学生の一団が整列をしながら歩いて学校に向かう。「つくづくし」は「つくし」の異名。俳句や短歌の世界では音数を揃えるため、こんな風に音数の異なる異名を用いて、句の音数を整える技法がある。子供もツクシも真面目に整列しているおかしみ。 タンポポ 蒲公英やなぜか気怠き昼餉時 *タンポポ *けだるき *ひるげどき 漢字の蒲公英はなんだか人の名前みたいで、初めて「タンポポ」と読むと知って大層驚いたものだ。さて春の正午ともなれば腹も空く。まして暑い中で走ると余分にエネルギーを消費する。だから私はスポーツドリンクを薄めたペットボトルを持ちながら走るのが常。それで喉の渇きも癒せる。 アオキ(青木) 沼温み紅の実の転げ落つ :ぬるみ :くれない 農業用水の沼の畔に赤い実が見えた。これはアオキ(青木)でわが家にもあるが。冬は野鳥が実を食べに来る。それは良いのだが、落ちた種が土を被りやがて小さな苗になる。青木の名を詠みたいのはやまやまだが、生憎それだと冬の季語になるためやむなく「温み」(春の季語)を使った。最善ではないが次善のこともたまにある。 トサミズキ 瓔珞 瓔珞のごとく揺れをり土佐水木 *ようらく *トサミズキ 瓔珞(ようらくまたはえいらく)は仏具の一つで、仏像などの傍にある装飾品。トサミズキは春先に薄黄色の花を咲かせる植木で、春の季語。良く似た花に日向水木(ヒュウガミズキ)があるが、こちらは季語に選ばれてない。風に揺れる可憐な花を、仏具に見立てて詠んだ一句。 アカヤシオ 赤八汐子は故郷を去り行けり *アカヤシオ *ふるさと ピンクのヤシオツツジを赤ヤシオと呼ぶのが通例だが、ツツジが春の季語。白花のを白八汐と呼び、どちらも庭木として珍重されている。この花が咲くころ愛するわが子は故郷を出て、都会の大学へと向かった。 イチリンソウ 人夫らの見向きもせずに一輪草 道路工事の現場近くで白い花が咲いているのを見つけた。花の形からしたらイチリンソウかニリンソウのはず。そう思って柵を乗り越え確かめに行った。結果は一輪草だった。キンポウゲ科の山野草。この付近に群落があることは知っていたが、まさか道路の直ぐ傍に、こんな可憐な野草が残っていたとは。私の走るコースは自然が豊富。ありがたいことだ。一輪草が春の季語。黄砂の日の思わぬ出会いだった。 春の校庭球児はつらつノック受く *うく N高校の裏手まで来ると、硬式球の打球の音がした。この県立高校は10年以上も前に県の代表になって甲子園に行ったことがあった。結果はあえなく1回戦敗退だったが、それでも同校生徒の間では、いつまでも語り草になるのだろう。「受く」は「受ける」の文語体。 甲子園のセンバツ準決勝は東海大相模高校と大分の明豊高校が接戦をものにし、決勝に進出した。決勝戦は本日の12時30分開催。 辛夷(こぶし) 校門の辛夷去る者来る者 *きたる ぐるりと回って、N高の正門まで来た。ここには見事な辛夷の並木があり、満開の時は圧倒的な存在感となる。この校門を入って新入生となった者や、この校門から出て卒業して行った先輩たち。比較的新しいこの高校にも、それなりの歴史が刻まれて来たのだろう。この日もまあまあ快調で、帰宅後早速残り湯で体を洗った。黄砂で天気は今一だったが、走りながら俳句が詠めて幸いだった。
詩心の奪還へ 2022.04.17 コメント(4)
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