カテゴリ:考古学・日本古代史
~八戸市「是川縄文館」に遊ぶ(1)~
是川遺跡空撮 世界文化遺産の申請では「是川石器時代遺跡」となっていますが、ここでは「是川(これかわ)遺跡」と呼ぶことにします。八戸市の郊外で新井田川沿いの標高10mから30mの台地上に広がる集落遺跡ですが、この地区には3つの遺跡が混在しています。 〇 一王寺遺跡 縄文前期から中期にかけての遺跡で、是川地区では一番古い古い遺跡です。 〇 堀田遺跡 縄文中期に属する遺跡です。上層からは弥生時代の「籾圧痕」が出て、この地区 で稲作が開始された時期が分かります。 〇 中居遺跡 縄文晩期に属する遺跡で、低湿地に位置しています。石棒、女性の土偶、漆器な どが発掘され、上層からは弥生前期の「遠賀式土器」(福岡県)が出土しています。 青森県 是川遺跡がある八戸市は青森県の東南部にあります。前回の「三内丸山遺跡」も載っています。 是川復元集落 是川縄文館 是川地区からは明治時代に土器や石器などが出土して、遺跡であることが分かっていました。大正9年(1920年)には土地所有者が複数で個人的に発掘を試み、出土品を大切に保管して来ました。戦後そのうち6千点以上が八戸市に寄贈されています。 国宝 合掌土偶 そのような考古学に理解がある住民がいたお陰で学術的な発掘調査が進み、昭和38年(1963年)に「是川考古館」が、昭和50年(1975年)に「八戸市歴史民俗資料館」が、平成23年(2011年)には「是川縄文館」が建設され、研究、展示、普及活動に励んでいます。このような歴史の中で昭和32年(1957年)に「国の史跡」に指定され、中居遺跡から発掘されたうち633点が重要文化財に指定され、是川縄文館に展示している「合掌土偶=上」が国宝に指定されています。 是川縄文館の広い吹き抜け 是川縄文館の優れた展示と、工夫された照明装置。 施設の立派さ、展示品の見事さ、そして照明や音声での案内など、これが県立の博物館ではなく、市立の博物館であることに正直驚きました。さらに熱心な啓蒙活動の展開などの努力が、「世界文化遺産」登録への引き金になったことは間違いないでしょう。私は八戸市に一泊した後ここを訪れ、その後秋田県の遺跡に向かったのですが、あまりに優れた縄文の芸術に心を奪われて、とても去り難い気分だったことを今も覚えています。明日は素晴らしい館内の展示品を紹介します。<つづく> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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