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マックス爺のエッセイ風日記

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2021.08.27
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カテゴリ:歴史全般
~ドラマ「大地の子」を観て~

 

 NHKのドラマ「大地の子」をつい最近何度か見た。最初の放送は1995年で、これまでに何度か再放送されているようだ。ドラマは歴史そのものではないが、日本人残留孤児が戦後の中国で生き延びた過酷な半生を徹底した取材で、山崎豊子が小説にした。その壮絶なストーリーは、今シリーズのタイトルそのものと感じて、最終回に取り上げた次第。

           著者と著書

 原作者の山崎豊子(1924-2013)は大阪船場の生まれで現在の京都女子大学国文科卒。毎日新聞大阪本社学芸部勤務時代に副部長だった作家井上靖から記者としての手ほどきを受けた。1957年実家の昆布問屋をモデルにした小説「暖簾」が処女作。「花のれん」で直木賞を受賞したことを機に、作家生活に専念、以後「ぼんち」。「女の勲章」、「白い巨塔」、「華麗なる一族」、「不毛地帯」、「二つの祖国」、「沈まぬ太陽」と社会性を帯びた作品を世に送った。呼吸不全により89歳にて没す。

     胡耀邦書記と歓談する山崎豊子

 日本人の中国残留孤児問題を著すべく当時の中国共産党胡耀邦書記を何度も訪れ、取材許可を嘆願。当時は外国人に開放されてない農村地区を巡り、8年をかけて300人以上の日系戦争孤児の体験談を収集。まさに執念そのものだった。彼女には「盗作疑惑」が複数あるが、いずれも丁寧かつ慎重な脚本化を怠ったのが原因で、猪突猛進の性格が彼女へのあらぬ誤解を生んだのだろう。

     歓談する周恩来と田中角栄   

 山崎がこの小説を書き、さらに日中合同でのドラマ化が実現した背景には、「日中友好条約」締結に向けての両政府の歩み寄りがあった。「尖閣問題」を一時棚上げしての条約締結だが、元々尖閣に領土問題は存在しない。1970年に国連が海底探査し、東シナ海に大量の石油が埋蔵する可能性に言及して以降尖閣は中国領と先方が主張しただけで、それより100年も以前からわが国が実効支配していた。

    中国人の養父と陸一心役の上川隆也(右)

 それはさておき、日中共同によるドラマ化も難航を極めた。日本側はリアリティーを求めるため、当時の貧しい農村部を描こうとするが、中国側は日本側はわざと中国の貧しさを描くと誤解していた由。日本人残留孤児陸一心役の上川隆也は公募で選ばれた新人で、中国語は全く話せなかった。それが2か月ほどの特訓で、中国人俳優と変わらぬ流ちょうな中国語を話した由。誰が見ても素晴らしい熱演だった。

   

   往時の文化大革命(左)とスパイ容疑で地方に追放される一心。(右)

 だが中国政府のドラマ制作への規制は厳しく、中国の政治家の実名は出さないこと、農村部の貧困や、文化大革命の実像は使用しないことなど大変なものだったそうだ。ドラマ化の構想から完成までに4年もかかったのはその影響が大きいようだ。私はネットを検索し、画像を補足した。

   

 話は前後するが、一心の実父(仲代達矢)が製鉄会社の現地責任者として中国に赴任し、偶然わが子を探し当てる。業務打ち合わせのため日本に行った2人。一心はホテルを抜け出して実父の家を訪ね、祖父母、母、妹の位牌に手を合わせ線香をあげる。その留守中同僚が一心のカバンの中から「機密文書」を抜き取る。中国に帰国後、一心は機密文書を日本に渡した容疑で、地方へ左遷される。

       都会の中の貧民街   

 だが歴史の実態は全く正反対で、中国は賠償金代わりの日本からの膨大なODA(経済援助資金)を元にして工業化を推進し、中国に進出する外国企業に対しては中国企業との合弁会社設立と最新技術情報提供を義務付けた。いわば合法的な企業機密のパクリであった。日本への帰国を願う実父に一心は告げる。「私は日本の子ではありません。この中国の大地の子なのです」と。

      

     日本人孤児の実録(左)と大連の旧日本家屋と満開のアカシア(右)
   
 この作品によって、主演の上川隆也は第4回橋田賞新人賞を受賞し、「大地の子」は平成7年度文化庁芸術作品賞とモンテカルロ国際テレビ賞最優秀作品賞をダブル受賞した。私は昨年中国の大連と旅順を旅したが、「大地の子」が胸を過ったのは言うまでもない。大連は旧満州の玄関口であり、日本との連絡船や引き揚げ船が発着した港。大連の日本人街、ロシア人街、旅順博物館を懐かしく思い出す。<完>

ぽっ私なりの現代史論にお付き合いいただき、ありがとうございました。明日からは「通常営業」です。





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Last updated  2021.08.27 05:50:38
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