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テーマ:「継母」奮闘記(289)
カテゴリ:今日の継子さん
暑い。今日も暑い。
と、言う訳で、今日のお昼はそうめんにした。 「ご飯だよ~」 の声に、皆やってくる。 ところで、きぬには、私から出した宿題があった。 時計の問題。 期限は、今日のお昼前。 「お昼ご飯の前に、問題用紙に答えを書いて持ってきてね」 前日の夜、きぬにそう言ってメモ紙に書いた問題を渡した。 今日の朝、ご飯を食べ終わったきぬに、 「宿題忘れないでね」 と念を押した。 しかし、問題用紙と時計は午前中二階に置きっ放し。 宿題をやった気配はない。 元々、その場で一々指示しなければ従えない子なので、仕方がない。 まぁ、二年生でそれでは御粗末過ぎるので、躾の一環としてあえて午前中は放置した。 自分で気付いてやれれば褒めてあげよう、って感じで。 そんな訳で。 「きぬ、宿題やった?」 私の言葉に、凍りつくきぬ。 旦那もそんなきぬに気付き、 「どうした?宿題やったのか?」 きぬ「…終わった」 私「そう?じゃあ、答え持ってきてよ。お昼前に確認するよって、昨日言ったよね?」 きぬ「…」 旦那「どうしたんだ?早くもっておいで」 きぬ「…」 私「ねぇ、宿題って、何やったの?時計やった?」 きぬ「…」 旦那「やったのか?」 きぬ「…終わった」 この後、長い時間を掛けて聞いた所によると、 公文の宿題は終わった。しかし、時計の宿題はやったけど終わっていない。 数々の矛盾を乗り越え、旦那はようやくその結論に達した。 時計の宿題に関しては、嘘だな。きぬはやっていない。 私はそう思ったけど、その話はお昼ご飯の後にゆっくりする事にした。 きぬの話とほぼ同時進行で、ひこもまた問題を起こしたからだ。 めんつゆの用意をしていたひこ。 つゆは水で薄めるタイプのものだが、ひこは水の用意をしていない。 …つゆの用意はいつもお前の担当でしょ。 しょっちゅうそうめんを食べてる訳じゃないけど、いい加減覚えてよ…。 「ひこ、水が無いよ」 私の言葉に、ひこは「あ、そうだった」と呟いて水を用意する。 「(いつも言ってる事だけど…)水は、皆の好みとかもあるから、用意するだけでいいからね」 ひこは口をもごもごさせながら自分の器に水を入れる。 次にきぬの器に…。 そして私の器に目を向け…水を… ???? 「ねぇ、今、お母さん、なんて言った?」 自然と大き目の声になった。 口を半開きにして、なんとも間の抜けた顔で、ひこが顔を上げる。 「水は、皆の好みとかもあるから、用意するだけでいいからね、って、言ったよね?」 ひこは、相変わらず間の抜けた顔で立ち尽くす。 「ひこもきぬも、いい加減にしてくれよ! 何で言われた事をやったり、答えたり、出来ないんだよ! お前らおかしいよ!」 旦那が絶叫。かつ、疲労困憊。 きぬとの訳の判らない会話の最中に、ひこまでこれでは、仕方ないかもしれない。 「何か言われて、判らなかったら、聞き返しなさい。判らないのを、そのままにしないの」 これまでに何度も繰り返した忠告を、私は今日も口にした。 昼食後、私は問題も、時計も持たずに一階へ下りようとするきぬに声を掛けた。 「きぬ、午前中、問題用紙も時計も、ずっと二階に有ったよね?時計の宿題なんて、してないんでしょ?」 きぬ「…」 旦那「なんだ、やってなかったのか?」 きぬ「…やった」 私「お母さんが出した問題は、きぬにはまだ時計がないと解けない問題だよ? 下にあるオモチャの時計じゃ駄目。 分の目盛りが付いたやつじゃないときぬには解けない。 でも、時計はずっと二階にあった。でしょ?」 きぬ「…」 旦那「ちゃんとやれよ、きぬ。判らなかったら、ちゃんと聞きに来いよ」 私「それと、嘘もついちゃ駄目だよ」 きぬは、何も言わないまま、時計と問題用紙を旦那に渡されて、下へ行った。 その後、旦那と私とようは、川の字になってお昼寝タイム。 3時半頃に起きて、買い物に行く事にした。 出掛けにきぬの様子を旦那が伺うと、なにやらお絵描きの最中。 「勉強したのか?」 の旦那の問いに、無言のきぬ。 旦那も、特に意味のある問いではないので、「ま、いいか」と呟いて玄関へ…。 私は、少し引っ掛かるものを感じたが、お昼の後と今、二度言われれば、 さすがにやるだろう…。と思い、何も言わなかった。 買い物から帰ったのは、5時過ぎ。 早速きぬに声を掛ける。 「きぬ、時計の宿題終わらせた?」 「………出来た」 「じゃ、持ってきてよ」 二階に上がり、買い物の仕分けをしていると、きぬもやってきた。 手には問題用紙と時計。 そしてテーブルに座り、おもむろに時計を動かし始め…。 旦那「何やってんだ?」 きぬ「…時計がないと出来ない…」 私「…あのさ、問題の答えは、問題用紙に書いてねって、言ったよね?」 きぬ「…」 私「まぁ良いや。じゃ、ささっと答え、書いちゃって」 15分経過 台所にやってきた旦那。 旦那「何だ、きぬ、まだやってんのか?」 きぬ「…」 旦那「ねぇ、そんなに時間かかるって、おかしいよ?本当にやったの?」 きぬ「やったけど、答え忘れた…」 旦那「それじゃあ、やったとは言えないよ!やってないのと同じ!」 私「まぁ、本当にやったんなら、解き方は判ってるでしょ。すぐ終わるよ」 30分経過 口を半開きにして、ひこそっくりの間の抜けた顔は、最初からだが…。 少しでも物音がすると、すぐにそちらに注意が行く。 全く集中していない。 夕食の準備も一段落したので、私はきぬに話しかけた。 私「ねぇ。宿題やったって、終わったって、さっきから言ってるけど、嘘でしょ?」 きぬ「…」 私「どうなの?」 きぬ「…」 私「さっきからきぬの様子見てたけど、判ってる人の顔じゃないよ。 ぼんやりして、全然時計見てないじゃない」 きぬ「…」 私「嘘なんでしょう?宿題、やってないんでしょう?」 きぬはぼんやりと時計を見つめて黙っている。時折、指をいじったり…。 …こういう仕草が、発達障害チックなんだよなぁ…。 場の空気が全然読めてないって言うか…。 以前の私なら、ここでガツンと叱るのだが、今更そこまでしてやる気にもなれない。 きぬをこう育てたのは義母と旦那だし、責任は彼らにあるだろう。 私は静かに、きぬの態度は叱られている人間の態度ではない事を指摘した。 更にきぬが宿題をやらない、にも拘らず嘘ばかりつく、という事がこれで3回目であり、 昼のように、 「ちゃんとやらなきゃ駄目だよ。嘘ついちゃ駄目だよ」 で済ませられなくなってしまった事を告げた。 私「だから、自分のやった事でしょ? 責任もって、宿題をやらなかった理由と、嘘をついた理由、話しなさい」 きぬはずっと黙り続け、やがて旦那がやってきた。 私は旦那に事情を話した。 旦那、ガツンときぬを叱る。 強い口調で、私が聞き続けてきた問いの答えをきぬに求める。 きぬは硬直して、ただただ涙を流している。 ずっと黙っているきぬ。埒が明かない。 だんなはきぬを別室に引きずっていき、「答えろ!」と叱った。 数分後、旦那が微妙な顔で戻ってきた。 普段から叱られなれていないきぬは、 腰を抜かしたような感じで、立つ事もままならず、 四肢を硬直させて震えているのだという。 正直、旦那はガツンと叱ったが、別に常軌を逸していた訳でもなかったように思う。 私は、子供の頃、普通にそのぐらい怒られていた。 ひこにしても、旦那に同じように叱られた所で、せいぜい泣くだけだ。 「お義母さんは、きぬが何をしても叱ってこなかったんだね」 異常だよ、と心の中で吐き捨てながら、私は言った。 言葉の険を、旦那も感じ取ったのだろう。 うん…。と呟いた。 やっぱり、きぬは私の手に負えない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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