あーちゃん頑張るよ…

火曜日、父方の祖母が死んだ。

父はその日の内に実家の有る九州へとんで行ったが、
母や兄弟は今日、父の実家へ向かった。
私は出産を控えているので欠席。
臨月なので、ちょっと遠出は出来ないと思った。

関東から九州。遠いよね…？

父の実家は、私達家族にとって、縁の薄い所だった。

祖母も、継母だった。
父は所謂セメント。
父の上には、母親の違う兄が居る。

前妻は、姑の虐めに耐え切れず、自殺したのだという。
そんな曰く付きの家に嫁がされた祖母は、大変な苦労をした…らしい。

祖母は人の悪口しか出て来ないような人だった。
いつも誰かの悪口。

両親が結婚した時も、母方の親戚とは初対面にも拘らず、
自分が如何に苦労したか、姑が酷い人だったか、延々と語っていたそうだ。

御目出度い席でそのような話しか出ない祖母に、母の親戚はドン引きだったらしい。

私が小学5年の夏休み、弟と2人で祖母の下へ遊びに行った。
祖母は滅多に会えない私達に良くしてくれたが、
私はその間、度々母の悪口を聞かされて辛かったのを覚えている。

九州から帰って、私は母に対して少し余所余所しくなった。
それまで私にとって、大人は、両親は、完璧な存在だった。
だが、10日程の九州旅行でその幻想は儚く壊され、
ただただ、母の至らない点を直視させられ続けたので、
どのように母と接したら良いのか、判らなくなったのだ。

私の変化に気付いた母は、事情を聞いてショックを受けたのだろう。
以後、二度と私を子供だけでの九州旅行へ行かせなかった。

祖母は、私の兄と弟には、悪口の類は口にしなかった。
私にだけ言ったのは、私が女だったから…？

母は、事情を聞いて、先程の結婚式のエピソードを口にした。
そして、熟考しながら、こう言った。
「お祖母ちゃんはね、お祖父ちゃんと結婚して、お姑さんに虐められて、
　色々辛い事があって…。心が壊れちゃったの。
　だから、人の悪口しか言えない人になっちゃった。
　それは、お祖母ちゃんが悪い訳じゃない。お祖母ちゃんは、可哀想な人なの」

祖母は、継子である伯父と仲が悪かった。
伯父は、曾祖母に甘やかされて育ち、仕事もろくにせずにいた。
父の家は自営だったのでクビにこそされてはいなかったが、
伯父のいい加減な仕事で何件ものお得意様を失くしたらしい。

実際、私が遊びに行っていた時にも伯父のせいでクレームが来ていて、
祖父母は取引先に頭を下げていた。

お見合いを何度かしたが、その度に先方から断られたという事で、伯父は独身だった。

子供を甘やかすと、碌な事は無い。
伯父は、その見本のようだった。

祖母は祖父のもとへ嫁いだ時、余りの伯父の3文安に呆れ、
何度も育て直そうとしたのだという。
しかし、姑はそれを許さなかった。
実の父親である祖父は、何も口を出さなかった。
祖父は幼い頃に養子として来ていた身で、養母である姑に何も言えなかったのだ。

祖母はついに伯父の再教育を諦めた。


父は、実家を毛嫌いしている。
私が物心付いてから、父が実家へ帰ったのは数える程。
それも、自分の親が入院した時位で、母に諭され、厭々行っている様な感じだった。
実家から電話が掛かってきても、なかなか電話に出ようとしない。
居留守をよく使っていたし、
祖父に頼まれ、私が電話を取り次いだ時など、後で口汚く罵られた。
弟にその話をしたら、弟にも又、同じ経験があったという。

今回の祖母の葬式も、父は私達兄弟に、
「別に来なくていいよ」
と素で言っている。
そう言うわけにもいかないでしょう…と、兄と弟は葬儀に出席する事にしたが。


余り好きではない祖母だったが、出来の悪い継子に一生パラサイトされ続け、
可愛い実子は自分の所に寄り付かず…。

悲惨だと思う。

少なくとも、私は嫌だ。

しかし、今のうちの家庭環境に似ていなくも無い。
嫁いびりは無いものの、3文安の継子の再教育はさせてもらえず、
旦那は育児に無関心。

ようが父のように、自分の実家を毛嫌いする前にやはり別居した方が良いのか…？
この際、別居の相手は義両親と、だろうが、旦那と継子諸共だろうが、構わないが。