ランダムウォーク理論否定7
もちろん、株価変動に関わる全ての情報が瞬時に共有されることはありません。事前にその情報を持っている人に優位性が生まれる訳です。これはランダムウォーク理論の大家であるマルキールも述べています。(※実際にはマルキールは効率的市場論者の異端児ですが)ただし、『この点については与えられた情報に対する本質的価値の算出についての困難さが問題点として挙げられる』とマルキールは主張しています。『長期の予想成長率と他社よりも成長するかどうかについて推し量るのは非常に困難であるが故、他人より優れたパフォーマンスを得ることは難しい』、と。つまり、【それが優れた情報であるかどうか】と、【その情報をもとに優れたパフォーマンスを得られるかどうか】は全く別問題であり、【それら2つに因果関係がある可能性はあるが実際には殆ど,或いは全く関連性がみられない】、という主張です。これは概ね同意します。株価変動を全く気にすることなく優れた情報で優れたパフォーマンスを上げ続ける事ができる投資家は極めて稀でしょう。そのような投資家が存在するのかどうかすら分かりません。株価上昇を決める要素は何でしょうか。大きな要因は、将来の利益成長であることは間違いありません。(将来利益成長しない企業が株価上昇するためには注目を集めるサプライスが必要になます)将来の利益成長を推し量る事の困難さについては、どのような分析を行うファンダメンタル投資家であっても理解しているでしょう。市場のコンセンサスと大きく食い違う時に株価が大きく変動するのであれば、その変動に大いに関係のある情報を収集できるかどうかがカギになります。しかしその株価変動に大いに関係のある情報を持っていたとしても、その情報を活かせるような投資行動を取れるかどうかは別問題であるため、ただ情報を持っていただけでは他人より優れたパフォーマンスを得続ける事が困難です。何よりも、その情報が株価に与えるインパクトは市況に大きく影響を受けてしまいます。結局、その情報がどれだけ優れた情報で、今後の株価にどこまでの影響があるかどうかは誰にも分からないのです。分かっていればもちろん誰にでも有効活用できるでしょうが。そして何より、その情報により既に株価は変動しているかもしれない。株価に織り込んでいるかどうか、またどの程度織り込んでいるかどうかは誰にも分からないので、その情報をもとにした投資はどうしても疑心暗鬼になってしまう。結局のところ、株価変動に影響を与えると思われるような情報によって長期的に市場平均より高いパフォーマンスを得続ける事は極めて困難だと僕は思います。