馬鹿が辞めた
在任期間歴代最長を更新した直後に、安倍総理が辞任を表明した。確たる信念も強いリーダーシップもないまま、三本の矢のうちの最も重要な財政政策を緊縮し続けた総理大臣が、在任期間歴代最長を更新した途端、総理大臣の座を降りた。頑なに守ってきたのは、小泉・竹中路線。長期的な格差拡大と国力低下をもたらした第二次安倍政権は、2回の消費税増税で日本の力強いデフレ脱却をへし折り、相対的な国力低下を招いた。アベノミクスと呼ばれる異次元の金融緩和政策は、日銀黒田総裁主導により行われた。その間安倍政権が行ったのは、長期的な財政政策の縮小と、消費税を始めとする逆進性の強い税の増税と、法人税の大幅な減税。これらがセットで行われると、異次元の金融政策拡大は無力化する。出口戦略のないまま金融政策拡大し続け、失ったのは選択できる将来の政策の幅。新型コロナがなかったら、今頃日本は10%への消費税増税の影響による深刻な経済ダメージについて議論していた頃だろう。オリンピック特需が終わりこれから本格的な不況に戻るだろうと心配されてきただろう。新型コロナが全ての政策ミスを流し去ってしまった。安倍首相退陣を残念がっている個人投資家。彼らはきっと認識していないだろう。消費税が5%から8%になった時の最悪な流れを。あれがなければ「デフレ脱却」して健全な経済に戻っていた可能性が極めて高い。反論できる人は居ないだろう。8%への消費税増税までに安倍政権がやったことは何か。政権奪取後の見事な手のひら返し。耳障りの良い言葉だけで政策を伴わない経済成長路線。ガチガチの増税論者で固めた「有識者会議」。大学院生の古市くんまで「有識者」に含めて消費税増税を議論させて、一体何をしたかったのか。あれほど露骨なレールの敷き方があるだろうか。デフレ脱却しつつあった経済を腰折れさせてでも財政健全化、という強い強い意志を感じた。政治家は結果責任があるということであれば、国内経済を低迷させてまでプライマリーバランス黒字化の方針を堅守し続けた安倍総理は、少なくても経済の面から考えると、戦後日本の国力を最も低下させた総理大臣ということになるだろう。世界中を見回しても、とても経済政策を評価できる経済成長ではない。国民の豊かさを犠牲にしてまでやりたかったのは何だったのか。明確なビジョンと強いリーダーシップがあれば、この経済状況でも何かしらの評価ができたのかもしれない。気づいていないのは投資家だけか。今の日本は本当に労働者が貧しくなってしまった。中流階級が減少し、力強い格差拡大が長期的に続く社会になってしまった。次に誰が総理大臣になろうが、これを覆すのは至難の業だ。取れる選択肢が狭まってしまった。第二次安倍政権が始動した頃はあんなに選択肢は多かったのに、今は本当に取れる選択肢が少ない。本当に寂しい限りだ。この7年間、安倍総理が行った経済政策は最悪だった。結果的に、鳩山でも菅でも野田でも、経済の面では、安倍よりずっとマシだった。僕は良いよ。いわゆる民主から自民への政権交代からアベノミクスまで、殆どリスクらしいリスクを取らずに、資産を急増させた。僕みたいな投資家だらけだ。儲かりすぎだ。これからもそれが続くのか。リスクを中央銀行が肩代わりして、実体経済が低迷する中で株式市場はジリ高が続くのか。僕らは不当に儲かりすぎているんだ。それだけのリスクは取っていない。そのツケは誰が払うんだ。労働者だ。今まで割を喰っていた労働者が、今まさに困窮している。そんな中で、僕ら投資家は「我らが春」を謳歌しているのか。一体どうなってるんだ世の中は。