天国のあなたへ　　　柳原タケ

　　娘を背に日の丸の小旗をふって、
　　
　　あなたを見送ってから、もう半世紀がすぎてしまいました。

　　たくましいあなたの腕に抱かれたのは、ほんのつかの間でした。

　　三二歳で英霊となって天国に行ってしまったあなたは、今どうしていますか。

　　私も宇宙船に乗ってあなたのおそばに行きたい。

　　あなたは三二歳の青年、私は傘寿を迎える年です。

　　おそばに行った時、おまえはどこの人だ、なんて言わないでね。

　　よく来たと言って、あの頃のように寄り添って座らせて下さいね。

　　お逢いしたら娘夫婦のこと、孫のこと、

　　また、すぎし日のあれこれを話し、思いっきり甘えてみたい。

　　あなたは優しく、そうかそうかとうなづきながら、

　　慰め、よくがんばったねとほめて下さいね。

　　そして、そちらの「きみまち坂」につれて行ってもらいたい。

　　春、あでやかな桜花

　　夏、なまめかしい新緑

　　秋、ようえんなもみじ

　　冬、清らかな雪模様

　　など四季のうつろいの中を二人手をつないで歩いてみたい。

　　私はお別れしてからずっとあなたを思いつづけ、

　　愛情を支えにして生きて参りました。

　　もう一度あなたの腕に抱かれ、ねむりたいものです。

　　力いっぱい抱きしめて絶対にはなさないで下さいね。




電車の広告でこの恋文を読みました。

結婚生活もつかの間に、戦死した夫への思いを綴った恋文。

秋田県にある「恋文の町・ふたつい」で行われていた

恋文コンテストの第１回の最優秀作品だそうです。

今は市町村合併のために、コンテストは廃止されたそうですが、

この恋文について調べていたら、

文中にでてくる娘さんのHPを見つけた。

そこにはタケさんとの旅行記も。

また胸を打たれました。。。


パートナーがいることが、どんなに幸せなことか。

四季を感じられることが、どんなに幸せなことか。

この恋文を読んで、恋文なんて書かなくなったなぁと

なかなかいつもそばにいると、感謝の気持ちも改めて伝えられる

機会ってないですよね。

命は有限であることに、気づかされた手紙でした。


こちらの恋文が掲載されているのはこの本

日本一心のこもった恋文（6）


日本一心のこもった恋文（8）


日本一心のこもった恋文（10）


日本一心のこもった恋文（9）


日本一心のこもった恋文（7）