「しなやかに散れ」 / 古株のプライドと新米の意地?
「柴田君、シラタキばっかり食べてない?」 箸を口元で止めた朋子の首の傾げ具合や,まっさらな瞳、澄んだ声に僕は弱い。 きっと裕介も・・・僕は唇の端にタバコを咥えた裕介にふと目を向けた。「肉、喰えよなあ。 すきやきだぜ! おっ! 朋子、卵使わないのか? 」「うん。 温めてヒヨコに孵す」「朋子が言うと、マジに卵が孵りそうだ」「いい? 御呪いよ。 せーの!ほらっ!」 朋子が小鉢の上で両手を開くと、裕介が身を乗り出した。「・・・んなわけねえな! 」 辺りを見渡し、気まずそうにタバコをしまった裕介は、塗り壁に寄りかかり、大きな溜め息を付いている。 どんな格好をして絵になってしまう祐介が朋子の視界にいる。僕は残りのビールを一気に飲んだ。「ああ・・・喰った!」 掘りごたつの下で時々触れる朋子の足を避けながら、僕はテーブルの隅に寄っていた。「んで施設の誕生日会ってどんなことすんの? 」「ホールに集まってケーキを食べて、歌を歌って、プレゼントを渡すのよ」「ケーキ食べさせてくれるんだろ? 何が何だかわからねえ俺の祖母ちゃんのも参加か? 」「わ、わかるんじゃないかな? 楽しい事は・・・」「でもないの。 現実、笑顔の人は一握り。 施設内ではちょっとしたいじめもあってね」「高齢者虐待?」「ね? わかるでしょ、柴田君・・・」 朋子は遠い昔を思うような美しい目をして僕に問いかけた。 僕は彼女の視線を避け、入れ替わり立かわり人声のする店の入口をぼんやり見つめていた。 もう古くなった机の引き出しに、介護実習に行った施設で撮った写真がある。僕も朋子もエプロンをして、孤独で自由であらねばならない老人と肩を寄せて微笑んでいる。社会生活不適合、吃音によるハンデー、高齢者とコミニケーション不可能・・・そんな現実を目の当たりにした日、写真はポトスタンドから外された。 隅においやられた数枚の写真に、僕は暫く触れていない。「ね、裕介君の夢は何?」「肉、喰う事」 祐介が疎外感を隠すようにおちゃらけ、不自然に俯いた。「私はね・・・」 僕等は同時に朋子を見た。「母がやってるジョブコーチの勉強してみようと思う」「知的障害者やいろんな事情で仕事につけない人を応援するって、アレか? すげえなあ、親子で。 俺は基本的に自分のことで精一杯だっ」「ううん、裕介君そのものが夢の中にいるようよ。 ふふっ! 羨ましい」 「マジかよ、俺って夢か? がははっ! 」「そう、夢の輪郭。トラックもね」「僕は! 」「・・・ん? 」「日本中の、さ、さ、桜巡りをしたい。 だ、だけど・・・」「おう! 柴田、出たか桜! いいぜいいぜ! 」「ふふっ、らしいらしい!」「小岩井農場の一本桜は最高だぜえ、今年でも叶うぜ」「だ、だけど・・・」「だけど?」「金、貯めないと・・・家にも迷惑かけてるし」「柴田君は生真面目。 誰も迷惑って思ってないんじゃないかな。 家族ってそうでしょ? 」「そうかな・・・」「俺、俺さあ! 」 裕介の突飛な声に、きれいに繋がった僕と朋子の視線がプツンと切れた。「靴職人っていいなって思うんだ・・・」「靴? ピンと来ないな、私」「デ、デザインの方? 作る方じゃないよね? 」 僕は真っ直ぐ祐介を見て訊ねた。 「わかんねぇ」 偶然とは言え、僕はちょっと驚いた。朋子と祐介の出会いといい、今、三人で鍋を囲んでいることも、ヤンチャな祐介が語った夢も・・・胸の奥の深い部分で、白髪交じりの父の体臭と「小屋」に立ち込める革靴の臭いが広がった。 白い霧の中で、何かが僕らを動かしている。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ダンスのリハが明後日夕方からあるので、今日のレッスンは21時半までビッシリ!衣装やポジションを決め、いよいよ緊迫した空気が流れ・・・毎度のこと。これがピリ辛らっきょうのように、刺激と甘さを私にくれる(笑) 他にないし 話は変わって職場で月一、勉強会とミーティングがある。 先日のミーティングで、ベテランナース&ベテラン事務と、新米の私(物療)と受付&看護助士の同期仲良し4人組の意見(ちょっとした言い合い)が飛び交った。 院長、副院長は真剣。 今の若い子ははっきりものを言う。 裏でうだうだ言うより遥かにいい。私もそっちのタイプなので、日頃感じていることを言った。 物理療法にみえる患者さんは20分以上治療時間があり、同じ顔ぶれになりやすい。だから親しくなっていろいろ喋る。 頷けること、多々あり・・・ま、本音っていうか・・・ 私達が改善していったら、患者さんはもっと○○なのかな~診察から薬会計までの長い待ち時間、患者さんは結構見ているんですね、院内事情。 キャリアのある職員はもちろん仕事ができる大先輩。皆、若葉マークから出発しただろうに、仕事ができてドクターが期待する(私以外)若者を「育てよう!」って思ってくれたらいいなあ~ と、お母さん(私)は思うのです。 患者さんの笑顔は、働く私達の「連携」だと思うこの頃。 この職場が好きだから! これからも前向きな意見は真正面から言っていこう。 娘達に交じって(笑) こんな時間までここにいるのは珍しい ★おやすみなさい★