左幸子の名演技が光る★「飢餓海峡」
水上勉原作の「飢餓海峡」('64年東映)‥‥お若い方はタイトルすら耳にしたことがないかもしれませんが、この作品もまた、日本映画史に残る大傑作です。飢餓海峡(期間限定) ※再発売 [DVD]昭和22年9月、函館港を出港した青函連絡船が、大嵐に見舞われて沈没し、多数の死者が出るが、うち二体の遺体だけ、どういうわけか、いつまでたっても引取人が現われない。一方、連絡線沈没の少し前、道南の町の質屋に強盗が入り、一家を皆殺しにして火を放った凶悪事件が、起こっていた。刑事・弓坂(判淳三郎)は、連絡船の身元不明の二体の遺体が、質屋強盗殺人放火事件の犯人ではないかと睨む。そしてもうひとりの犯人は生きていて、その男・犬飼多吉(三国連太郎)が、青森・大湊の娼妓・八重(左幸子)に、3万円以上もの大金を渡していたことを、つきとめる。その後、八重は東京へ出て、亀戸で娼妓をしていたが、たった一度愛の交歓をしただけの犬飼が忘れられない。そして十年がたち‥‥ある日、八重は新聞記事で、犬飼が樽見京一郎という名で、舞鶴で手広く事業をやり、また篤志家として活躍していることを知り、矢も盾もたまらず、舞鶴へ行くが‥‥とてつもなく素晴らしい役者陣でしたね。伴淳三郎、三国連太郎、左幸子、高倉健、そして、左幸子の父親役を演じた加藤嘉‥‥中でも左幸子が光ってましたね!青森の貧農の娘で、家のために身売りし、たった一度、夜を過ごしただけの男に惹かれ、その男が残した爪を大事にとっておく‥‥女のモイラが見ても、可愛い女だなあと思いました。左幸子という女優は、台詞を覚えたり、与えられた役になりきるまで、ものすごく時間のかかって、監督をイライラさせたのですが、一旦、役になりきったら、監督の期待をはるかに上回る演技をする人だったそうです。彼女もやはり、「名女優」の名にふさわしい人でしょうね。「大菩薩峠」「宮本武蔵」の名匠・内田吐夢監督の演出も、お見事!映像にストーリーの重量感と、まだ煤けていた戦後の日本の「粗さ」を出すためか、わざと16ミリカメラで撮影し、それを35ミリに引き伸ばしているのですから、凝っているというか何というか‥‥鈴木尚之のシナリオも、すばらしい!水上センセには悪いけど、原作の小説より面白いですよ!ごらんになっていない方は、もう「必見!」ですね。★もっと内田吐夢!★【中古】 浪花の恋の物語 /中村錦之助[初代],有馬稲子,片岡千恵蔵,内田吐夢(監督),近松門左衛門(原作),富永三郎(音楽) 【中古】afb【中古】 大菩薩峠 /内田吐夢(監督),中里介山(原作),片岡千恵蔵,中村錦之助,長谷川裕見子,丘さとみ 【中古】afb【中古】 宮本武蔵 巌流島の決斗 /中村錦之助,入江若葉,木村功,内田吐夢(監督、脚本),吉川英治(原作),小杉太一郎(音楽) 【中古】afb