カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
ロシアの文豪ドストエフスキーの大作を
巨匠・黒澤明監督が見事に翻案、映像化した傑作‥‥それが、'51年の「白痴」です。 戦犯として処刑される寸前で命拾いしたものの、心に深い傷を負い、 持病の癲癇が悪化した青年・亀田(森雅之)は、遠い親戚のいる札幌へ向かう途中、 資産家のドラ息子・赤間(三船敏郎)と乗り合わせた。 雪降りしきる厳寒の札幌の街へ降り立った亀田は、 写真館のウインドウに飾られた美女・那須妙子(原節子)の写真に釘付けになった。 妙子の顔に形容しがたい哀しみと苦悩を見出したからだ‥‥ 外国文学の翻案&映像化は、かなりむずかしいものらしく、 過去、多くの映画人が挑戦しては、失敗しています。 しかし、この「白痴」は数少ない成功例の代表格と言えるかもしれません。 主人公ムイシュキン公爵(亀田)も、囲われ者の薄倖の美女ナスターシャ(那須妙子)も、 高潔な令嬢アグラーヤ(綾子=久我美子)も、ぴったりハマっていました。 特に、子どものように純真無垢ゆえに、世間の人からはバカにされるけど、 限りなく美しい心を持つゆえに、妙子と綾子、二人の美女から愛される主人公・亀田を演じた森雅之の演技は、見事でした。 金持ちの二号・妙子を演じた原節子もすばらしかった。 あたら蕾の頃に父親くらいの年の男の慰み者にされ、 見かけは華やかに着飾り、御殿のような屋敷に住んでいても、 心はまるで終身刑の囚人のようで、荒れすさみ、 それでいて、気品を失わない不思議な妖婦‥‥お嬢様役がぴったりの原節子でなければ、演じられない役どころでしょう。 それにしても、この長い小説(文庫本で全4巻)を、よくここまで見事に映像化できたものです。 黒澤監督はドストエフスキーが大好きだったというけど、 よほど読み込んでいなければ、ここまでできなかったでしょうね。 「白痴」はモイラも大好きで、何度か読み返し、そのたびに涙しました。 主人公ムイシュキン公爵の台詞が長いけど(3,4ページにわたっている台詞もあります) とても深く、読み応えのある傑作中の傑作です。 ロシア文学 ドストエフスキー 白痴 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 18, 2008 11:18:42 PM
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