カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
無実の罪で裁かれ、獄舎につながれる‥‥これほど人間にとって理不尽なことはありません。
しかし、昭和20~30年代、戦前の自白偏重の体質をひきずっていた司法の現場では、 無実の人に有罪判決(死刑判決含む)を下し、 あとになって、それがまったくの冤罪だったことが判明したという例が 数多くあるのです。 そのひとつが、昭和28年11月に起こった、徳島ラジオ商殺人事件。 その忌まわしい冤罪事件の映画化作品が、'65年大映の「証人の椅子」です。 徳島市のラジオ店店主が刺殺され、内部の人間の仕業と睨んだ検察が逮捕したのは 被害者の内妻・洋子(奈良岡朋子)だった。 全く身に覚えのない洋子は、当初は頑強に否認するも、 警察の過酷な取り調べに屈してしまい、犯行を認めてしまった。 裁判で洋子は無罪を主張したが、一審判決は懲役13年。 直ちに高裁に控訴したが、控訴は棄却された。 真実に耳を傾けようとしない司法のあり方に絶望し、 また、裁判が長引けば金がかかると知った洋子は、自ら上告をとり下げてしまった。 しかし、洋子の甥・浜田(福田豊土)は、彼女の無実を固く信じ、 証人探しに奔走した。 ところが、浜田と彼が探し当てた証人たちに、検察の魔の手がじわじわと伸びて‥‥ 検察庁という所は、いったんクロとした人間がシロと証明されることを、 ノアの大洪水や地球の滅亡よりも恐れているんですね。 証人たちの裁判での証言を翻させまいと、あの手この手をしかけて‥‥ 本当に怖いです。 こんな恐ろしいことが実際に起こったというのだから‥‥ 真実がすべて明らかにならなければならぬ裁判で、 事実が捻じ曲げられ、真実の声が封じ込められるという これ以上はない不公正と理不尽を 社会派の名匠・山本薩夫監督と 一般庶民の弱さや小狡さを描くことで定評のあるシナリオライター・井手雅人氏のコンビが、 全体的に小地味で落ち着いたトーンながらも、鋭く告発しております。 若き福田豊土が、実に良い味を出していましたね。 あのどこにでもいるような風貌が、まさにリアリティ満点で、 こうした実録ものに、もうぴったりすぎるほどぴったりしていました。 許しがたいことに、冤罪事件は時が平成に変わってからも続出しています。 取り調べで容疑者に「踏み字」を強要した志布志事件。 無実の人を17年(!)も刑務所に拘留した足利事件。 国民が司法に直接参加する裁判員制度が発足しましたが、 それで「推定有罪」の体質がなかなか抜けない司法の現場が変わるかどうか、 モイラは正直疑問です。 真昼の暗黒 / 草薙幸二郎 【決算セール】日本の黒い夏 冤罪(DVD) ◆25%OFF! それでもボクはやってない スタンダード・エディション / 加瀬亮 片隅の迷路(映画「証人の椅子」原作) 足利事件 えん罪志布志事件つくられる自白 狭山事件 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Mar 3, 2010 11:50:27 PM
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