カテゴリ:名作と言われているけど嫌いな映画
'66年、「男と女」で監督としての地位を不動のものとしたクロード・ルルーシュが、
'81年に発表した大作が「愛と哀しみのボレロ」。 ★廃盤 『愛と哀しみのボレロ』クロード・ルルーシュ&ジェームズ・カーン:楽オク中古品 時代&舞台設定がまず壮大なんですよね。 何せ1930年代から、激動の第二次世界大戦を経て、80年代までにわたり、 舞台は欧州の都・モスクワ、パリ、ベルリン、そして米ニューヨーク他。 その上、世界的な指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤン、薄倖のシャンソン歌手エディット・ピアフ、 ロシアの天才バレエダンサー・ルドルフ・ヌレエフ、今もその名が楽団の名前になっているジャズの帝王グレン・ミラーと そうそうたる芸術家たちがモデルなのですから。 「欧米芸術四天王をモデルに‥‥」というナレーションの予告篇を観た途端、 モイラはスクリーンに釘付けでしたもの。 「これは観なきゃいけない。観ずには死ねない‥‥」と。 しかし‥‥本篇を観て、正直がっかりしました。 スクリーンから目が離せなかったのは、最初の1時間ほど 敵ナチスの軍楽隊長(ダニエル・オルブリフスキ)と恋仲になった人気シャンソン歌手(エブリーヌ・ブイックス)が ナチスから解放された暁に、パリ市民達に「売国奴!」と罵られ、 丸坊主にされて市中を引き回される場面まで。 欧米が第二次世界大戦という、とてつもない化物に吸い込まれ、 罪もない人々が翻弄されるエピソードは、心に迫るものがありましたが、 第二次大戦後のエピソードは、ほとんどがもう、どうでもいいものばっかり。 唯一の例外は、戦後、指揮者として成功したオルブリフスキが 念願の米国公演にこぎつけるけど、 いざ幕が開いてみたら、観客席はもぬけの殻という場面。 彼が以前ヒットラーの保護下で演奏していたことを忘れていないユダヤ人達が、 チケット買占めという抗議行動に出たのです。 この映画、上映時間3時間4分ですが、 その長さをしても足りないくらい、エピソードを「これでもか」と織り込んでいます。 登場人物も多い上に、何人もの役者が二役(息子、娘役)を演じています。 中盤ぐらいになると、もうどの役者が誰を演じているのか、わからなくなるほどです。 こりゃ企画の段階でミスってるなと思いました。 一気に4人の主人公の数十年分のお話など上映せず、 第一部、第二部、第三部と区切って製作したほうが、良かったんじゃないかと思います。 そして、最大のミス(と、モイラが勝手に思っていること)は‥‥ 作り手がこの映画を通して観客に何を訴えたいのか、皆目わからないこと。 モイラはスクリーンで一度、DVDで二度ほど観ていますが、 全くわけがわかりません。 しかし、ラストのジョルジュ・ドンがボレロを力強く踊るシーンは、圧巻です。 全くすごい踊り手がいるものだと、感心しました。 このド迫力のラストダンス十数分のために、それまでの冗漫なエピソードの羅列があったのかと思えば、 あまり腹も立ちません。
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