カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
廓が舞台の名作映画はたくさんありますが、
キャスティング、シナリオ、カメラワーク、 わけても映像美で際立っているのが、'63年東映の「五番町夕霧楼」でしょう。 五番町夕霧楼 [ 佐久間良子 ] 昭和20年代半ばのある夏、丹後の貧農の娘夕子(佐久間良子)は病気の母を助けるため、 廓で働かせてほしいと、京都五番町遊郭・夕霧楼の女将かつ枝(木暮実千代)に頭を下げた。 かつ枝は夕子の田舎臭く、何よりあまりにウブな様子に躊躇しつつも、 どんな辛抱をしても母を助けたいという夕子と彼女の父の言葉に頷き、夕霧楼で預かることにした。 かつ枝のはからいで、夕子には初老の西陣の織元・竹末に贔屓になってもらい、 水揚げの日が来るのだが‥‥ 貧しさゆえに廓に身を沈め、好きな男との仲をも裂かれ、あげくに肺病に冒される‥‥ こう書くと、日本人の大好きな大悲劇のヒロインそのもので、 (確かに夕子という娘の境遇は哀れすぎるほど哀れで、観る者の涙を誘いますが) この作品を、ただのメロドラマに仕立てていないのが、田坂具隆監督の巧みな演出ときめの細かいシナリオ、 そして飯村雅彦カメラマンが生み出した、目の覚めるような映像美です。 京都の四季の移り変わりを、遊郭に飾った舞扇の絵で表現しているのが素晴らしい。 春には桜、夏には波、秋には紅葉、冬には雪の絵といった具合です。 金閣寺や竜安寺といった京都の風景もさることながら、 丹後半島の緑まぶしき段々畑、断崖に打ち寄せる青々とした波、 そして、もっとも美しくて哀しいのが、丹後の村に赤々と咲く百日紅の花‥‥ 飯村カメラマンの職人芸、というよりは才能ですね。 夕霧楼で働く女たちの描写がまた秀逸でした。 ひと口に娼妓といっても色々いるんです。広島の原爆で身内をすべて失った女や、 短歌雑誌に自作の歌を投稿するのが心の支えとなっている女‥‥ 中でも印象的だったのが、かつては娼妓だった下働きの老女。 女買いをする男という男を心の底から憎んでいるのが、たった2秒ほどのシーンでわかります。 ‥‥って書き続けるとキリがないので、最後にひとこと。 佐久間良子は、かわいい顔してかなりエロい演技ができる女優です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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