カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
広島ヤクザの血の抗争をドキュメンタリータッチで描いた
日本映画史に永遠に輝く傑作シリーズ「仁義なき戦い」‥‥その最後の抗争‥‥ 昭和40年代初頭、広能組組長・広能(菅原文太)が三度目の服役のさなか、 広島ヤクザの中でも切れ者で冷静沈着、加えて先見の明のある武田(小林旭)は、 暴力団の看板をはずし、政治結社・天政会を旗揚げ、 年は若いが、リーダーシップがあり、頭も良い松村(北大路欣也)を理事長に立て、 合法的に広島で勢力を拡大しようとしていた。 しかし、昔気質のヤクザ者で、やたら血の気の多い副会長・大友(宍戸錠)は 若造の松村の台頭を忌々しく思っていた。 そんな時、天政会の大スポンサーの金融業者・杉田が、 天政会と敵対する市岡組の者に殺され、 これをきっかけに、またしても血で血を洗う壮絶な抗争が始まるのだった‥‥ 古今東西、シリーズ化された映画は数多くありますが、 その多くは回を重ねるごとにマンネリ化し、中身も薄くなりがち。 しかし、この「仁義なき戦い」は、深作欣二監督のオリジナル5部作のどれもが 非常に見応えがあり、観る人に強烈なストレート、フック、アッパー、ボディブロー、連打を与えています。 ヤクザの世界に生きることに疲れ始めた広能、 世の中の動きに敏感で、内部変革を望むも叶わず、苦悩する武田、 切れ者だけれど、若さゆえに先走り、あげくに死線をさまよう松村、 残忍な上になかなか利口で、駆け引きにもたけている、ヤクザに生まれついた男・市岡、 斬った張ったの昔の栄光が忘れられない、バカヤクザの典型のような大友、 大きな組織のリーダーの器でないことを重々承知し、大物におもねることでかろうじて自分の地位を保っている江田、 金が何より好きで、自己保身のためには、言動はもちろん、自分の立場さえもコロコロ変える山守‥‥ どの登場人物も「ああ、いるよねそういう人」と大きく頷ける、リアリティと人間味に満ち溢れた連中です。 登場人物それぞれの個性が、作品に深みを与えていることは、言うまでもないでしょう。 桜木健一扮するチンピラ役も、なかなか良かったですね。 牧原(田中邦衛)をとろうとするけど、いざとなると震え上がって、 拳銃の引き金がなかなか引けず、無様に失禁する有様‥‥ そりゃそうだ。生きている人間を冷たくすることなんて、 常人にできることじゃありませんからね。 広能は返り討ちでボロ布のように撃たれた桜木健一の遺体を見て、 ヤクザの世界から身を引くことを決心するのですが、 その哀しみと苦悩に満ちた横顔と、とぼとぼ立ち去ってゆく老いの兆しが出始めた後姿を見て、 マッカーサーの有名な言葉が頭をよぎりました。 「老兵は死なず。ただ消え去るのみ‥‥」 にほんブログ村 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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