カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
今夜は哀しくも残酷な映画をとりあげます。
あの輝ける名作「シュリ」以来、久々にメガホンをとったカン・ジェギュ監督の 「ブラザーフッド」(原題:大極旗翻し)です。
1950年、成立したばかりの大韓民国の首都・ソウル‥‥ 靴職人の青年イ・ジンテ(チャン・ドンゴン)は、 秀才でソウル大学を目指す弟・ジンソク(ウォンビン)の学費を稼ぎ、 またフィアンセのヨンシン(イ・ウンジュ)との結婚費用を稼ぐため、 毎日靴墨まみれになって働いていた。 父は既に他界し、母は小さな食堂をヨンシンと切り盛りし、一家の暮らしは決して豊かではなかったが、 皆、仲良く、幸せそのものの日々を送っていた。 ところが6月25日、忌まわしき朝鮮戦争が始まり、 ジンテの一家は、迫りくる北朝鮮の人民軍から南へ逃げるために、 大勢の難民がひしめきあうソウル駅へと向かった。 そこでジンテ・ジンソク兄弟を待ち受けていたのは、韓国軍の徴兵だった‥‥ 戦闘シーンがとてもリアルです。否、リアルすぎて、思わず眼をそらしたくらい。 咆哮をあげる砲台、機関銃、飛び散る血、脳髄‥‥それはそれはもう残酷なシーンが、ちょっとしつこすぎるくらい続きます。 しかも、その残酷で陰惨、野卑な戦闘を繰り広げるのは、同胞同士ですよ。 こんな哀しい、無惨なことはありません!! モイラはさっきまで、このDVDを字幕オフ(韓国語能力試験に備えるためです)で観ていました。 この作品の台詞(韓国語で「テサ」)は、半分近く聞き取れました。 「シッバル!(ちくしょう!)」「セッキ!(こいつ!)」といった、 悪い言葉がいっぱい出てくるのが、ちょっと気になりましたが、 戦争、しかも同胞との戦争という人類最悪、最低、野卑この上ないことをやっている人たちのテサなのだから、まあしょうがないでしょう。 弟の早期除隊をお願いするために、上官に言われるまま、あえて危険な任務につき、 戦争で手柄をとって英雄(戦争での英雄は、一般社会では殺人鬼です。モイラ注)になろうとする兄貴。 だんだん残酷になってゆき、敵・人民軍のまだ15,6の少年兵まで無惨にも殺してしまう兄貴に反発する弟。 カン監督は、戦争、それも同胞との争いが、いかに理不尽なことかを、 この作品で強く訴えているのです。 一見どころか、百見の価値はありますよ。 朝鮮戦争(韓国では、「韓国戦争」と呼んでいます)というものの大筋を知るにも、良い勉強になる作品です。 心臓の弱い方にはおすすめできないけど。
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