カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
いわゆる認知症を扱った映画は、古今東西いろいろありますが、
完成度が高く、かなり泣かせるのが、'85年の「花いちもんめ」です。 老いた考古学者・冬吉(千秋実)は、松江の歴史資料館に勤めていたが、 近頃めっきり物忘れが激しくなっていた。 そんなある時、彼はめまいを覚え、うっかり手にした縄文式土器を落として割ってしまい‥‥ 冬吉は自分がアルツハイマー型認知症であることを知ってしまうのですが、 大変なショックを受けながらも、自らの病を受け入れ、 病院に付き添った長男の嫁・桂子(十朱幸代)に、 「若い君たちに迷惑をかけたくない。手に負えなくなったら病院に入れて下さい」と 頼むシーンには、泣けました。 自らもかつて脳溢血で倒れ、その後見事に回復した千秋実が、 認知症の老人役を演じているのも、見ものでした。 しかし、この冬吉というおじいちゃん、可愛いボケ方をするんですよね。 嫁の桂子をすっかり自分の妻だと思い込み、「母さん、母さん」と幼児のように慕ったり、 彼女にベンチでキスを迫ったり。 アルツハイマーにありがちな、「モノ(金)とられ妄想」や「被害妄想」がないのですから。 こんな可愛いボケ方だったら、世話をする方もある意味気が楽というものです。 おじいちゃんがボケて、その世話をすることで、 愛人問題で家庭内離婚状態だった長男の治雄(西郷輝彦)と桂子の絆が深まってゆくあたりは、 ちょっと出来すぎのような気もしましたが‥‥ モイラが一番感動したのは、 病が進行してすっかりボケてしまった冬吉が、一度は精神病院に入れられるのですが、 治雄と桂子のはからいで、郷里の松江に連れ帰られた時、 宍道湖に沈みゆく美しい夕陽を見て、感激のあまり、 「うおーーーっ!!」と大声で叫ぶシーンでした。 老いてボケてもなお、美しいものに感動する力が残っている‥‥ ここで涙した人は、多いと思いますよ。 それにしても、認知症の人の介護は「大変」の一言につきます。 モノ(金)盗られ妄想、被害妄想、徘徊、失禁‥‥ モイラも経験者なので(亡き母が晩年アルツハイマー病にかかりました)、それがよくわかります。 この映画、モイラはまだ病気にかかる前だった母とロードショーで観たのですが、 後年、まさか母が冬吉と同じアルツハイマーにおかされるとは、夢にも思いませんでした。 にほんブログ村 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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