カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
こんばんは、映画狂のモイラでございます。
今宵は、「ウルトラマン」「ウルトラセブン」などの特撮テレビドラマの監督・実相寺昭雄の初の長篇映画 「無常」をご紹介いたします。 【中古】 無常 /実相寺昭雄(監督),田村亮,司美智子,佐々木功,田中三津子,花ノ本寿,石堂淑朗(脚本),冬木透(音楽) 【中古】afb 白壁の街並み残る近江の旧家・日野家の長男正夫(田村亮)は 家の商売を継ぐ気など全くなく、大学にも行かず、仏像の魅力に憑りつかれ、 近所の城跡や寺を回っては、スケッチブックに仏像を描いたり、石仏を彫ったりしていた。 正夫には百合(司美智子)という美しい姉がいて、 日野家の書生岩下(花ノ本寿)と、近所の寺の若い住職(岡村春彦)は、 百合に密かに恋心を抱いていた。 ある日、両親が家を留守にし、正夫と百合の二人だけになった時、 姉弟は互いに能面をつけてふざけ、笑いあっていたが、 そんな戯れの果てに、肉体関係を持ってしまった。 やがて百合が正夫の子を宿すと、 正夫は百合に因果を含め、胎児の父親を岩下にすべく、 岩下と結婚するように仕向けた。 そして百合は岩下と結婚し、正夫との間に出来た子を産んだ。 正夫は京都の仏師(岡田英次)に弟子入りし、 日々、観音菩薩像造りに励むのだが. 仏師の若い後妻が正夫に肉体関係を迫ってくるのであった…… まず、広角レンズを多用した独特のカメラアングルが、観る者の目を捕らえます。 変わった角度での長回しで、 旧家の白壁の屋敷、お寺の石段、ずらりと並ぶ石灯篭などの風景を それは美しく撮っています。 風景の美しさもさることながら、 姉と弟の絡みも美しく描かれています。 モノクロームの映像だから、光と影のコントラストが余計によくわかり、 モイラ、思わずスクリーンをじっと見入ってしまいました。 そして、ここかしこに流れるバッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータが とても効果的に使われていましたね。 さすが、クラシック音楽に造詣が深く、オペラの演出も手掛けた実相寺監督です。 シナリオは、石堂淑朗のオリジナル。 姉弟が禁断の果実を食べるという行為を通して 日本人の仏教感覚を追求し、仏法というものへの疑問を投げかけています。 終盤近く、正夫と寺の住職が「極楽地獄問答」を繰り広げますが、 その時の正夫の言葉が、モイラには忘れられません。 「地獄の絵があるからには、極楽の絵もあるに違いない。 地獄絵が阿鼻地獄、無間地獄と、ありとあらゆる地獄を克明に描きわけてあるのに、 極楽の絵は実に単調なんです。 阿弥陀と蓮の葉と、それだけです。 極楽の絵には迫力が全然見られない…… どう見ても、白々しい嘘っぱちしか見えないんですわ。 そこで私は考えました。そして、はたと思い当たりました。 こいつは当たり前のことや。極楽の絵に快楽のあるわけはない! なぜなら、快楽というのは、欲を満たした時に得られるもので、 欲を満たすということは、まさに悪に他ならないからです。 極楽に快楽のあるわけはない!」 この「無常」は、それまでのATG作品の興行収入ベスト3にランクインする大ヒット記録を打ち出し、 スイスのロカルノ国際映画祭では、グランプリに輝いています。 映像美・様式美をたっぷり堪能したい方には、ぜひおすすめの一作です! 【中古】 曼陀羅 /実相寺昭雄(監督),田村亮,清水紘治,桜井浩子,森秋子,岸田森,石堂淑朗(脚本),冬木透(音楽) 【中古】afb 【中古】実相寺昭雄コレクション [DVD] atg 実相寺昭雄ブルーレイBOX(初回生産限定) [Blu-ray] 【中古】最強のウルトラマン・ムービーシリーズ Vol.2 実相寺昭雄監督作品 ウルトラマン [DVD] にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Oct 7, 2020 12:29:53 AM
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