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May 22, 2023

実体験をもとにした傑作★「陸軍残虐物語」（1963年　東映）

カテゴリ：独断と偏見に満ちた映画評

こんばんは、映画狂のモイラでございます。

今夜ご紹介するのは、軍隊の残虐性を徹底的に暴いた名作にして、
巨匠・佐藤純彌監督のデビュー作・「陸軍残虐物語」です！

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犬丸弥七（三國連太郎）は、親の反対を押し切ってまで結婚した愛妻ウメ（岩崎加根子）に見送られ、
品田大尉（中山昭二）率いる陸軍・品田中隊の二等兵として配属されるが、
そこで待ち受けていたのは、上官からの日毎の容赦ない鉄拳制裁と、嘲弄だった。
ことに万事、要領は悪いが、良き妻を持つ犬丸は、妻に不倫された挙句、不倫相手の子まで生まれてしまった亀岡軍曹（西村晃）から目の敵にされ、
何かにつけては、いじめ抜かれ、ボコボコにされる有様だった。
一方、大学卒の矢崎二等兵（江原真二郎）は幹部候補生になろうとして
鬼軍曹の亀岡におべっかを使い、同僚たちの反感を買っていた。
そんな時、犬丸の戦友である鈴木一等兵（中村賀津雄）は、
矢崎が犬丸の特配品の饅頭を盗むのを偶然見かけ、彼を厳しく追及した。
犬丸の寝台のそばに落ちていたハンカチという証拠をつきつけられ、言い逃れができなくなった矢崎は、
盗みの事実を認め、幹部候補生への道を断たれ、鈴木と犬丸を逆恨みした。
そして鈴木の三八式歩兵銃の部品を便所に捨て、自分の小指を切断して、除隊しようとした。
兵隊にとって、銃は畏れ多くも天皇陛下から賜ったもの。
その部品を紛失することは、天皇陛下への侮辱だとばかりに、
上官たちは鈴木と犬丸を怒鳴りつけ、兵舎は無論のこと、汲み取り式便所の中まで探すように命じるのだった……！

シナリオを担当した棚田吾郎氏も、三國さんも、西村晃大先輩（モイラの大学の先輩なので、そう勝手に呼ばせていただいてます）も、中山昭二さんも、当時の岡田茂撮影所長も、
みんな軍隊経験があり、そこで壮絶ないじめに遭い、その実体験がこの映画で十二分に生かされています。
三國さんと賀津雄さんが、汲み取り式便所の汚物の中に、銃の部品を探すため、褌ひとつで入るシーンには、ゲッとなりましたね。
映画がモノクロだから、かろうじて正視できましたが、カラーだったら、ねえ……
もうほんとに、徹頭徹尾、残虐な作品でした。
三國さんは上官からボコボコにされた挙句に、面会に来た愛妻の岩崎加根子さんを、西村鬼軍曹に犯されるんですよ。
これを「残虐物語」と言わずに何と言いますか⁈

岡田所長がこの映画に、「残虐物語」というタイトルをつけたら、
若い右翼どもが反撥して東映本社に押し寄せ、
「畏れ多くも皇軍を『残虐』呼ばわりするとは何事だ⁈」と、猛烈な抗議をしたそうです。
すると岡田所長が軍隊経験のある社員を何人か引き連れて、こう応対したそうな……
「何事とは何ですか？　あなた方、軍隊の経験があるんですか？　我々は皆、軍隊経験者で、その実体験をもとに作った写真（注：映画のこと）なんですよ。全部、実話なんですよ」

……で、言い合いの果てに、今後、この手の映画は作らないという条件で、
右翼どもにお引き取りいただいたそうです。
（モイラとしては、こういう映画、どんどん作ってもらいたかったけどね……）

モイラも決して要領の良い方ではないので、もし軍隊に配属されたら、
日毎、上官に殴られ通しで、しまいには打ちどころが悪くて、死んでしまうかもしれませんね。
軍隊みたいな所、1分1秒たりとも居たくはありません！

余談ですが、モイラはまだ種子島にいたころ、
農業だけでは食べていけず、島のとある老人ホームでヘルパーとして働いたことがあるのですが、
男性の先輩は皆優しかったけど、女の先輩たちからは、「東京から来たよそ者」といじめられ、
へまをやらかすたびに、腕をつねられ、髪を引っ張られ、ひどい時には頬を叩かれました。
「これが、お年寄りを介護する人間のやることか⁈」と、怒るよりも愕然としましたが、
何より悔しかったのは、「あんたの死んだお父さん、東京で何しとったの？」と訊かれて、
モイラが、「はい、映画会社五社と契約していた映画人でした」と、正直に答えたら、
一番意地悪な一人の女の先輩に、
「嘘つけえ！　こんな田舎にやってきた女が、映画人のお嬢様のわけがない！　大学の映画学科を出てるからって、うちらを田舎者だと思って、でたらめ言うな！」
と、言われたことです。
モイラ、その場ではじっと我慢してたけど、車で家に帰ってから、わーっと泣きましたよ。
自分ばかりか、亡き父まで侮辱されたように思えてね……
で、翌日、施設長に今まで受けたいじめの事実をすべて打ち明け、退職しました。
（施設長は厳しいけど良い方で、モイラに同情的でした）

……話はそれてしまいましたが、「陸軍残虐物語」は、
一見、二見、いやそれ以上の価値がありますよ！！

★佐藤純彌監督作品あれこれ★