カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
こんばんは、映画狂のモイラでございます。 今宵お届けする名画は、溝口健二監督作品で、 清純派で売り出した田中絹代が、初めて汚れ役を演じた名作 その名も……「夜の女たち」でございます。 敗戦直後、空襲の爪痕が大きく残る大阪…… 大和田房子(田中絹代)は戦地からまだ還らぬ夫を待ちながら、 結核を患う幼子を抱え、生活に困窮し、自分の着物を売りながら何とか糊口を凌いでいた。 房子には両親や妹がいるが、3人とも行方知れずだった。 そんな中、夫が戦地の収容所で病死したことを知り、 その上、子どもまでも結核をこじらせて死んでしまった。 途方に暮れる房子は、夫の死を知らせた栗山商会の社長・栗山(永田光男)から、 自分の秘書になってほしいと言われ、生活のために快諾するが、 待ち受けていたのは、秘書とは名ばかりの妾生活だった。 そんな折、房子は心斎橋で偶然、行方不明だった妹の夏子(高杉早苗)と再会し、 夏子も生活のために、キャバレーのダンサーをしていること、 両親は朝鮮半島から引き揚げる前に、相次いで栄養失調で死んだことを知った。 そして好色な栗山は、房子と同居し始めた夏子にも手を出し、 大ショックを受け、自暴自棄になった房子は、夜の女へと転落するのであった…… 久板栄二郎の戯曲を 溝口監督と長年手を組んで数多くの名作を世に出した依田義賢が脚色した、社会派群像劇の傑作です。 夜の女たちが街角に立って男たちを誘うシーン、 彼女らが警察に捕まり、性感染症の検査を受けさせ、ミシンなどの職業訓練などを受けさせる婦人寮の描写、 彼女らの縄張りを荒らす新参者の街娼への凄まじいリンチ、 どれも、溝口監督が生涯追求し続けた自然主義的なリアリズムに溢れています。 男性本位の社会の犠牲となって淪落し、それでも強く逞しく生きる女を描かせたら 右に出る者はない溝口監督の力量が、全編に感じられますね。 淪落の女を演じた田中絹代のちょっとした所作にも、リアリズムが満ち溢れていました。 溝口監督は常々女房役のシナリオライター依田義賢氏に、 「人間の体臭が匂うようなシナリオを書かなければだめ」 「残酷にしてよこしまな人間を描いてほしい」 と言っていたそうですが、 この「夜の女たち」には、まさに夜の女たちの体臭がぷんぷん匂っていましたね。 では、今宵はこのあたりで筆を置きます。おやすみなさいませ…… にほんブログ村 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jan 13, 2024 11:24:45 PM
コメント(0) | コメントを書く
[独断と偏見に満ちた映画評] カテゴリの最新記事
|
|