【粗筋】
自分がいる所も認識できない野郎に、説明する。
「世界地図を開くと、アジアの東の方に、唐辛子みたいな赤いのがあらあ。これが日本よ」「ほう、アジアって日本にあったのか」
「あべこべだ。アジアの中に日本があるんだ」
「じゃあ、アジアってどのくらい広いんだ」
「それやお前ぇ……日本の5倍はあらあ」
「へえ……じゃあ東京の何倍だ」
「計算すりゃあ分かるだろう……その……アジアは東京の6倍にならあ」
「すげえ、広いんだなあ」
「それから日本がここにあると、地球の裏側はブラジルで、日本が朝飯を食っているとブラジルは晩飯……日本で晩飯を食っているとブラジルでは朝飯ということになる」
「へえ……地球のこっちか……じゃあ、地下鉄で行くのか」
「地球の中は通れねえ。引力ってのがあって、真ん中で止まっちまう……だから回りをぐるっと回って行く」
「へえ、日本とブラジルがつながっているのか」
「間には海もあって、他の国も沢山あるんだ」
「そりゃ大変だ」
「何が」
「間の国は一日中昼飯を食っていなきゃならねえ」
【成立】
鈴木凸太が昭和18(1943)年、戦時中に書いたもので、桂小文枝が演ったそうだ。戦後は桂枝太郎が取り上げたが、枝太郎は、かなり変えたので自分が85%、原作が15%くらいで、落ち以外はすっかり変わってしまったと語っている。だから粗筋は多分枝太郎のもの。