【粗筋】
石町2丁目の穀屋・美野口孫右衛門は、子供に恵まれないため、奉公人の忠兵衛を養子にする。忠兵衛は豊島町の大工・八右衛門の娘・おつるを見初めて女房にする。これを見届けて孫衛門は他界したが、忠兵衛は相場に手を出して身代をつぶしてしまう。忠兵衛は、臨月になった女房を八右衛門方に預けて、大阪に稼ぎに行ったがそのまま戻らない。おつるは生まれたお梅を連れ子に、大工・喜三郎と再婚する。
16年たったある夕暮れ、忠兵衛がひょっこり八右衛門宅に現れた。忠兵衛が喜三郎方を訪ねると、おつるは他界し、喜三郎がお梅を連れて父親の消息を知るために大阪へ立ったという。驚いた忠兵衛は自分の再び大阪へ行くことにした。
神奈川宿で娼婦を買うと、何とこれが娘のお梅であった。借金の50両を払って江戸へ戻ることにし、二人で手を取りあって、
「江戸へ戻ったら世帯を持って、楽しく暮らそう」
と言っているところへ、若い者が顔を出し、
「御初会から所帯を持とうなんて、おうらやましいことで……へへ、畜生め」
「おや、親子だと分かったらしい」
【成立】
東海道神奈川にあった親子塚、通称畜生塚の由来だという。親子が関係をするのは「畜生道」だということを踏まえた落ち。