モーツァルト「音楽の冗談」
モーツァルトといえば、手紙でも冗談ばかり、ふざけた人間のように思われます。映画「アマデウス」のキャラはひどかった。ああいう人は案外値は真面目だったりするのでは? さて、曲もギャグが沢山ありますが、k.522の「音楽の冗談」、「たわむれ」と訳されているものもあります。弦楽合奏とホルンのための室内楽です。 第1楽章はアレグロ、単純な音あわせのような第1主題、それも、普通8小節になるはずなのに、1小節どこかへ消えて7小節。第2主題は旋律ではなく伴奏ではないの、という主題。弦が終止すると、ホルンが間抜けなエコーをつけます。 第2楽章はメヌエット。軽やかな楽曲なのに「マエストーソ(重々しく)」という速度記号。その通り、メヌエットらしからぬ重々しさが展開し、半ばではホルンがどんどん音を外して行く。トリオは軽やかな、というより、落ち着きのない走句。メヌエットとの関連が希薄で、右往左往した末、やっとメヌエットへ戻ります。イスゥロボリターナ指揮のパウル・カンチーダーの演奏は、この戻った部分を普通のメヌエットのテンポで演奏し、際だたせています。 第3楽章はアダージョ。ヴァイオリン協奏曲で、前の部分よりは実力を自負している作曲家(?)の作品なのでしょう。しかし、冒頭からファにシャープがついて、不安定な印象を与えます。中途半端な旋律が続き、やがて気合いのこもったカデンツァへ……これがまた音階練習程度のもの、最後にG線の開放弦でポツンとピチカートがなるのが大間抜け。 第4楽章はフィナーレ、ホルンのトリルが聞けます。最後はヴァイオリン2部とヴィオラ、チェロ(コンバス)、ホルンが全て違う調に転調して終わります。完全な不協和音になるのです。 モーツァルトといえばこの曲でしょうが、彼の作品で求められた笑いはまだまだあるのです。それはまた、いずれ紹介します。