名作落語大全集

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• 笑えるニュース

  「最近のニュースの主役はやっぱり都知事じゃな」「はい」「第三者の弁護士による調査結果が発表になり……」「ねえ、納得行きませんよねえ」「え……お前、納得しないの」「あれ、大家さんは納得しましたか」「もちろんじゃ。あの程度の結果になるのだろうと最初から思っていた」「あ……そういう意味じゃないでしょう」「ま、とにかくそういうことで、今年の流行語大賞を狙っているんじゃないかって噂も出た」「色々言いましたね」「先月２０日の『第三者の厳しい目で』というのが話題に」「７０回も出たって……イチローも使いましたね」「翌週２７日には『一日も早く』」「これも３０回」「やっぱり『第三者』が大賞候補かなと思ったが……」「何か問題でも」「実はオリジナリティに欠ける」「あら……誰か使ってましたっけ」「１月にアマリって人が同じことを言っている」「あれ……ちらちらといい部分を出して肝心の部分をはっきりさせない……アベの国会答弁と全く同じだと思うね」「なるほど」「やっぱり都知事も自民寄りなのじゃな」「そうなりますか」「もう一つ今年の話題は不倫」「ここからも色々流行語が出ましたね。『卒論』だとか『スプリングセンテンス』とか」「国会議員も不倫してたし、また今回ハンキーカトーってのが」「舌が回らないね。ファンキーです」「それ……」「これも会見やりましたね」「面白かったのはテレビのコメンティターが、全て認めて謝罪したのを、立派な態度だと絶賛していた」「へえ」「都知事の後だったからじゃないかな」「ははあ……」「ということで、色々起こっている今日この頃」「流行語大賞候補は」「今のところ『アモーレ』じゃな」「はいはい」

  2016.06.07

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• 上野広小路亭

  「さあ、久しぶりの寄席」「はい、昔は年４０回行っていたのにねえ」「上野広小路亭。前日テレビでさまーずってのが来たのが放映されたようじゃ」「へえ」「団体さんも入って大入り。土日より入ったって……喜んでいいのか、悪いのか……」「微妙ですね」「前座Ａは饅頭怖い。Ｂは雑俳」「前座さんは名前も出さない」「まあ、これからなので評価もできない」「桂竹千代」「真田小僧。子供が嫌らしくない。聞いていて気持ちのいい一席」「桂伸三」「雷太君が出世したぞ。岸柳島。侍の対象が実に見事「国分健二」「お馴染みのスタンダップ。マイトガイって知っているって言うから、もちろん、と答えたら、じゃあ小林旭は何ガイって聞かれた」「三笑亭小夢」「表札。昔のお年寄りではこの雰囲気は出ない」「桂歌蔵」「時蕎麦。二つの店の主人の雰囲気の違いがよかった」「やなぎ南玉」「曲独楽。いつもの手際でおみごと」「仲トリは三遊亭圓遊」「三方一両損。二人の職人、二人の大家、みんな喧嘩好きでおっちょこちょいの江戸ッ子。昔ながらの落ちまでちゃんと」「食いつきは春風亭柳太郎」「引導カレー。現代人の人のつながりや心意気が……ってほどでもないが」「宮田陽・昇」「見事な漫才。いつものネタではあるが、最近のニュースや話題を織り込んでいる。素晴らしいな」「三遊亭右左喜」「銀婚旅行。これも昔のお年寄りが演じるとまるで金婚式……これなら納得」「三遊亭圓輔」「夢の酒。息子と「ボンボンブラザース」「ジャグリングの名手。鼻に立てる紙をまたもらっちゃった」「トリは桂歌若」「井戸の茶碗。分かりやすい言葉遣いを工夫しているが、ちょっとこなれない部分も。面白いと思ったのは、仲トリが金を受け取れ、いらないと喧嘩になったのじゃな。これも同じだね……随分全体像が変わるのが実に面白い」「ということで……ううん、もう少し頑張ってねという人がいませんね」「うん。前座から始まってみんななかなかいいというのは珍しいな。いやあいい一日でした」

  2016.06.06

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• 額田王：１２「あかねさすの真実」

  「さあ、ではあかねさすの歌で袖を振ることがどんな意味か、解決しよう」　　額田王：１２「あかねさすの真実」　『源氏物語』では、青海波を舞うのを袖を振る動作につなげている。実際に舞うのを見ると、蝶のように袖を左右に優雅に振る動作が見える。　つまり、『万葉集』でも、遷都の後に天智天皇が即位し、弟の大海人皇子（後の天武天皇）がこの青海波を待ったのではないか……いや、こういう場合舞わない訳が無い。　『源氏物語』のこの場面も、『万葉集』の「あかねさす」の歌も、教科書でもよく取り上げられる名場面とされているのに、なぜこれまでの学者や教師は共通性を見い出せなかったのだろうか。その方が不思議だ。　これを歌に詠めと命じられたのか、自主的に詠んだのかは分からぬが、これもおそらく天皇の命によるものとするのが自然だ。宮廷歌人である額田王は、この舞いを詠んだ。「あかねさす」……こんな場所で私に袖を振るなんて、皆さんが見ていますよ……やんやの喝采が起こったに違いない。そして、舞を終えた皇子がすぐさま、「紫の」……あなたが美しいから、人妻であっても恋焦がれない人はいませんよ……またしても喝采……夫婦なんだから、こんな面白いやりとりはない。　それから年齢であるが、天武天皇は六八六年没で五六歳だというが、六五歳という説もある。「あかねさす」を詠み合ったのが六六八年であるから、三八歳か四七歳。額田王は、天皇とあまり変わらないという説もあるが、普通はずっと年下のはず。娘の十市皇女の子、葛野王（かどののおおきみ）が七〇五年に三七歳で亡くなったのから換算して、六三八年の生まれとするのが一番若い説。それなら歌を読んだのは三〇歳である。　額田王が『万葉集』で最初に登場するのは七番の歌。秋の野の　み草刈り葺き　宿れりし　宇治のみやこの　仮廬（かりいほ）し思ほゆ　（七）　であった。これは六四八年に詠まれたもので、額田王の歌ではなく天皇の歌だという注がついている。本人の歌だとすれば、詠んだのが一〇歳ではないか。そこで、一般には少なくとももう少し年上だということになっている。『続日本紀』に「初め大海人皇子の妻」の「初め」は「最初は」の意味でなく「もともと」の意味である。それが出仕したということであろう。それなら二十歳くらいになっていて当たり前。　さて、そうなると「あかねさす」の時は四十歳、二十歳までには結婚して子供もいる時代であるから、四十なら孫がいて当然のお婆ちゃんである。若く美しく見えたとしても「匂へる妹」なんて可愛らしいものではない。だから、これは賀の歌で、戯れだということになる。爺さんだった山上憶良が、「憶良らは」と詠んだのと同じだ。　こういうことで、昭和の終わりには教科書にも、額田王の三角関係について「といわれるが疑問」と付くようになった。それが二〇一〇年頃からまた消えてしまった。どうしたことかと教科書会社の人と話したところ、「三角関係がないというのでは、歌が面白くないし、どう教えたらいいか分からないから、注をつけないでくれ」という要望が殺到したそうである……ううん、何だか情けない。

  2016.06.05

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• 額田王：１１「あかねさすの謎」

  「さあ、あかねさすの歌の本当の意味を考えよう」　　　額田王：１１「あかねさすの謎」　　　天皇（すめらみこと）、蒲生野（かまふの）に遊猟（みかり）する時に、額田王の作る歌あかねさす　紫野行き　標野行き　野守は見ずや　君が袖振る　（二〇・雑歌）　　　皇太子（ひつぎのみこと）の答ふる御歌紫の　にほへる妹（いも）を　憎くあらば　人妻ゆゑに　我（あれ）恋ひめやも　（二一・雑歌）　私の疑惑はこれらの歌が「雑歌」とされているところから始まった。恋の歌であれば「相聞」とされるべきである。つまり、恋の歌ではないときっぱり言っているのである。では何だっただろうのか。　この歌の注に次のように記されている。紀に曰く、「天皇の七年丁卯（ていぼう）の夏五月五日、蒲生野に縦狩（みかり）す。時に、大皇弟（ひつぎのみこと）・諸王（おほきみたち）・内臣（うちのまへつきみ）また群臣（きへつきみたち）、皆悉（ことごとく）従ふ」といふ。　やはり公式行事だったのだ。天皇が即位した最初の薬草刈り、現代でも行われているが、重要な儀式である。その席で詠んだのであれば、公式の歌である。　つまり、元の夫婦が現在の夫に隠れて詠んだものと解釈していたが、それがなぜ公式に記録されているのか……そもそも隠れた恋というのが嘘だと分かる。　それでは公式の歌とした場合、天智天皇が弟から額田王を奪っていたらどうだろう。目の前で元の夫婦が愛のやり取りをするのが面白いだろうか。逆に額田王たちにはそうした気遣いがなかったのだろうか……つまり、こういう歌を天皇の前で堂々と読んだのだから、天智天皇が額田王を妻にしていたということ自体が嘘だということの証明になる。　それでは歌の本当の意味は何だったのか……そこに悩んだ訳だが、『源氏物語』を読んであっさりと解答が出て来てしまった。　「紅葉賀」の巻だ。天皇の紅葉狩りのために、源氏や頭中将らが青海波という舞を披露する。これは祝い事の時に欠かせないもので、天皇の身近な……『源氏物語』では息子が、天智天皇の場合は弟が舞うのである。『源氏物語』では、そのあとに源氏が思いを寄せている藤壺に歌を寄せる。　　もの思ふに　立ち舞ふべくも　あらぬ身の　袖うちふりし　心知りきや　　あなたへの思いが強いため、とても舞などしていられぬ私が、あなたのために袖を打ち振って舞った、その心をご存知でしょうか。

  2016.06.04

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• 額田王：１０「額田王の正体」

  「さあ、額田王が宮廷歌人だとすると、あらゆる謎が解けてくる」　　　額田王：１０「額田王の正体」　近江に下る歌は、長歌は三輪山と別れる悲しみ、つまりこれまで都だった奈良から離れる悲しみを歌っている。反歌の一首目はその繰り返しであることは誰でも分かるだろう。では二首目はどうだろう。突然世界が変わるように見えるが、目に付く我が背を歌っているだけである。やはり夫への愛情のように見える。　和歌の世界では、お仕えする主人を夫であるように歌うのは当たり前なのだ。天皇を夫であるように詠んで、何の効果があるのか……この歌の近江に下るのがどんな意味を持っているのかを考えれば分かる。　奈良から近江への遷都なのである。住み慣れた都を捨て、新しい都へ向かうという不安はある。それが最後の歌で見事に覆される。こんなに目に付く、立派な陛下がいらっしゃるのだから安心だ……という信頼の歌なのだ。　本題の「あかねさす」の前に、もう一つ紹介したものを解決しておこう。　　　額田王、近江天皇を思（しの）ひて作る歌君待つと　我（あ）が恋ひ居れば　我がやどの　簾（すだれ）動かし　秋の風吹く　（四八八）　これだけを読むと、確かに恋人を迎える女性の歌である。しかし、『万葉集』の中では事情が変わって来る。次に並んでいる歌を読んでみよう。　　　鏡王女の作る歌風をだに　恋ふるはともし　風をだに　来むとし待たば　何か嘆かむ　（四八九）　　　鏡王女の詠んだ歌風をでも恋しく思うとはうらやましい。風をでもと待ちうけているのであれば、何を嘆くことがあるのでしょうか。　どうです。額田王に対する反論になっているじゃないか。男を待っていてふられた女二人が慰め合う歌だというのだろうか。男が来ないと嘆くのにしてはちょっと暗すぎる。これは二度と来ないといっているようだ。　もしこの読み方が正しいとすれば、挽歌だったのではないか。天皇が亡くなると、お仕えしていた女性達が夫の死に見立てて追悼の歌を詠むのである。そういう歌なのか。しかし、それなら「挽歌」と明記されてしかるべきだ。　挽歌でないとすると、お仕えしている女性達が、慰めに歌でも詠み合ったものではないか。相手の男でなく、女同士でやり取りしているのが、どう考えても疑惑なのである。　さあ、いよいよ本題の「あかねさす」の歌がどういう歌なのかを解明しよう。

  2016.06.03

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• 額田王：９「額田王の歌の正体」

  「さあ、それではいよいよ、額田王が三角関係ではないということを説明して行こう」　　　額田王：９「額田王の歌の正体」　額田王三角関係の証拠となった「大和三山」の歌を見直そう。　　　中大兄（なかのおほえ）の三山の歌香具山は　畝傍ををしと　耳梨と　相争ひき　神代より　かくにあるらし　古（いにしへ）も　然（しか）にあれこそ　うつせみも　妻を争ふらしき　（一三）　　　反歌香久山と　耳梨山と　あひし時　立ちて見に来し　印南国原（いなみくにはら）　（一四）わたつみの　豊旗雲に　入日さし　今夜（こよひ）の月夜（つくよ）　さやけかりこそ　（一五）　最初に紹介した通り、最後の歌は反歌に見えないがそのまま載せておくという注がある。反歌は長歌の繰り返しや補充の意味があることは既に述べた。ここでは神々の争いを述べ、反歌の一首目でそれを他の神が見に来たとストーリーの続きを述べている。これで三角関係は解決する。最後の歌は、こういうことになる。「問題は全て無事に解決した。今夜の月は美しいことだろう」とういのだ。　この歌も、「熱田津に」の歌から続く、朝鮮出兵の安全の歌なのだ。　反歌には見えないというのは、最後の編集の頃にはこうした公式の長歌が作られることがなくなったのか、あるいは撰者達が作る機会がなかったのか、そういう仕組みが分からなくなっていたのである。　既に紹介した、近江に下る時の歌がその後にある。　　　額田王、近江国に下る時に作る歌味酒（うまさけ）　三輪の山　あをによし　奈良の山の　山の間に　い隠るまで　道の隅（くま）　い積もるまでに　つばらにも　見つつ行かむを　しばしばも　見放（みさ）けむ山を　心なく　雲の　隠さふべしや　（一七）　　　反歌三輪山を　然（しか）も隠すか　雲だにも　心あらなも　隠すさふべしや　（一八）綜麻（へそ）かたの　林の前（さき）の　さ野榛（のはり）の　衣（きぬ）に付くなす　目につく我が背　（一八）　ここで「我が背」と呼ぶのが天智天皇であることは疑いない。額田王が「背」と使っているということは、やはり夫婦関係にあったのではないのか……この謎も、長歌と反歌の関係、それに額田王が宮廷歌人だということで、全て謎は解けるのである。

  2016.06.02

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• 額田王：８「万葉集の歌・第二期までと第三期からの違い」

  「さあ、前期の歌を通して、万葉の歌はどういうものなのかを考えて行こう」　　　額田王：８「万葉集の歌・第二期までと第三期からの違い」　さあ、前回紹介した第二期と第三期の歌、比べてあまりに違うのに驚くだろう。それは長歌と短歌の違いではない。歌に詠む内容が全く違っているのである。　第二期の人麻呂は宮廷歌人として、天皇のために歌を詠んだのだ。それに対して第三期からは自分達の楽しみで歌を詠んだ。それほど時代が変化してもいないのに、撰者たちは前期の歌が宮廷歌人として公式のものであることを忘れ、感動を歌にしているのだと思い込んだ。この勘違いは近代、いや現代まで続いていると言えるだろう。　もう種明かしをするまでもないだろうが、第一期の額田王も宮廷歌人なのである。公式の場で詠まれた歌であって、私的なものではないのである。そういう観点から見直せば、額田王の歌が全く違うものとして浮かび上がって来る。　『万葉集』の中で額田王が最初に登場するのは次の歌である。　　　額田王の歌秋の野の　み草刈り葺き　宿れりし　宇治のみやこの　仮廬（かりいほ）し思ほゆ　（七）これに続いて、有名な歌が並ぶ。熟田津（にきたづ）に　舟（ふな）乗りせむと　月待てば　潮もかなひぬ　今は漕ぎ出でな　（八）熱田津で舟に乗ろうと月が出るのを待っていると、（その月も出て）潮の流れも思い通りになった。さあ、漕ぎ出そうじゃないか。　これには長々と注があり、斉明天皇が伊予の熱田宮へお出でになり、そこで昔、夫であった舒明天皇と共に来たことを思い出して詠んだ、つまり天皇のお歌であるとしている。　第４章でだらだらと歴史を書いたのを読み直していただきたい。年号が違っているのだが、朝鮮出兵のための旅なのだ。撰者は注を付けるにあたって、昔夫婦で来た思い出を歌った私的なものとして解釈しているが、歌の後半は明らかにこれから船の旅を続けるための安全を祈るものではないか。だから、公式の歌なのである。額田王が詠んだものとして何の問題もない。「さあ、漕ぎ出そう」と命令しているのが偉そうだから悩んだのだろうが、宮廷歌人でることを忘れるとおかしなことになるのだ。　『万葉集』ではこれに続いて、本当はこっちが額田王のものだと紹介されて別の歌が続く。更に紀の国の温泉で詠まれた歌が続き、その直後に中大兄皇子の「大和三山」の歌がある。額田王の歌は解読不明とされる。ご存知の通り、『万葉集』は漢字だけで書かれているが、漢字そのままの意味、音だけ取る、その他特殊な読みなどを駆使した万葉仮名という不思議な表記法を用いている。額田王の歌も色々読み方が出されて来たが、どれもピンと来ないので、未解決のものとなっているのである。

  2016.06.01

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• 額田王：７「万葉集の歌・第三期と第二期」

  「さあ、万葉の歌が持つ意味を考えてみよう」　　　額田王：７「万葉集の歌・第三期と第二期」　『万葉集』では、「憶良らは」に続いて大伴旅人が詠んだ「酒を讃むる歌」一三首が続く。おそらく酒の席で、「ここから帰るのに何と言って抜け出すね。ひとつ歌に詠んでみてはどうだろう」って楽しんだ歌だった。「母ちゃん待ってるから、失礼」という歌はやんやの喝采を浴びたのに違いない。　第四期と並べても、歌は本当のことを詠むのでなく、その場の雰囲気をいかに表現するか、それなら嘘でも構わないということが分かるだろう。それではその前はどうだったか。　第二期　　　軽皇子、安騎の野に宿る時に、柿本朝臣人麻呂の作る歌やすみしし　我が大君　高照らす　日の皇子　神ながら　神さびせすと　太しかす　京（みやこ）を置きて　こもりくの　泊瀬（はつせ）の山は　真木立つ　荒き山道を　岩が根　禁樹（さへき）押しなべ　坂鳥の　麻越えまして　玉かぎる　夕さり来れば　み雪降る　安騎の大野に　はたすすき　小竹（しの）を押しなべ　草枕　旅宿りせす　古（いにしへ）思ひて　（四五）　　　短歌安騎の野に　宿る旅人　うちなびき　いも寝（ぬ）らめやも　古思ふに　（四六）ま草刈る　荒野にはあれど　黄葉（もみぢば）の　過ぎにし君が　形見とそ来し　（四七）東（ひむがし）の　野にかぎろひの　立つ見えて　かへり見すれば　月かたぶきぬ　（四八）日並（ひなみし）の　皇子の尊の　馬並めて　み狩り立たしし　時は来向かふ　（四九）　口語訳は省略。長歌は五七調の重々しいリズムを味わって、音読してもらいたい。リズム感がいいと七五調になって軽くなるので注意。このリズム、枕詞、対句を用いて次第に盛り上げ、天皇を讃美するというのが長歌の特色である。柿本人麻呂が大歌人だというのは、この技術力の高さからである。後に続く短歌、普通は反歌と呼ばれるが、これは長歌の繰り返し、説明不足の補助、長歌で表現し切れなかった内容の補充などの役割を果たす。この長歌はもちろん持統天皇に仕えて来ているのだが、亡くなった草壁皇子とその後継となる軽皇子を念頭に入れなければならない。一首目で今旅寝をしている様子、二首目では昔草壁皇子の思い出、四首目は軽皇子への思いが綴られている。三首目は特に有名であるが、沈む月と昇る太陽で二人の皇子を象徴している。尚、この歌は古くから「東野に　けぶりの立てる　ところ見て」と読まれていたのを貝原益軒がこう読んで有名になった。蕪村の名句「菜の花や月は東に日は西に」と同じ頃で、どこからで通じているのに違いない。

  2016.05.31

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• 額田王：６「万葉集の歌・第四期から」

  「さあ、万葉の歌を第四期から逆走してみよう」　　　額田王：６「万葉集の歌・第四期から」　昭和末期の岩波の古典の教科書が素晴らしかった。それを思い起こして、そこに載っていた歌を並べている。額田王の歌の幾つかを除いて、ほぼ全部出ていたはずだ。素晴らしいっていうのは、要するに『万葉集』の時代変遷を見るのにピッタリということで、実は単なる偶然なのかも知れない。　「東歌」「防人歌」も面白いが、ここでは省略。撰者家持の歌をもう一首紹介しよう。　　　天平勝宝二年三月一日の暮（ゆふべ）に、春苑（しゅんゑん）の桃李の花を眺しょく（目に属）して作る春の園　紅（くれなゐ）にほふ　桃の花　下照る道に　出て立つ娘子（をとめ）　（四一三九）　　　天宝勝宝二年三月一日の夕暮れどきに、春の庭の桃の花を眺めて詠んだ歌春の園紅に美しく咲く桃の花。その花の下で照り映えて見える道に立っている少女よ。　美しい庭園、美しい桃の花、その下の道までが美しい。そこに立つ少女は当然美しくなければならないではないか。ところが、現実にはここに少女はいないのだ。詞書には桃の花を詠んだものとしている。空想的なもので、明らかに『万葉集』の世界を脱却している。時代の推移を思わせる名歌である。　第三期　　　山上憶良臣（おみ）、宴を罷（まかる）る歌憶良らは　今は罷らむ　子泣くらむ　それその母も　我を待つらむそ　（三三七）　　山上憶良臣が、宴席から退出する歌憶良はもう退出しましょう。子供が泣いているようです。その母を私も待っていることでしょうから。　有名な歌で、憶良さんは奥さん思いだったんだねなんていう人もいる。それがどうも怪しいのだ。憶良さんが筑前守となったのは七二六年だが、筑紫歌壇は旅人が記録したものと思われる。すると七二八から七三〇年の間に詠んだ歌ということになる。三年後に亡くなったが享年七四。つまり歌を読んだのは若くしても六九歳なのだ。ご存知の通り当時の男なら二十代で結婚し、子供がいるはず。七〇ならひ孫が生まれていてもおかしくない年齢だ。それが「母ちゃん待ってるから帰るね」なんて……奥さんだって若くったって六〇歳前後だろうし、泣くような子供がいるとは思えない。

  2016.05.30

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• 額田王：５「万葉集の時代・後半」

  「さあ、万葉集の歌を時代にそって見ていこう」　　額田王：５「万葉集の時代・後半」第三期「筑紫歌壇」『万葉集』前半が歴史に沿っていたのに対し、後半は様変わりする。太宰府に赴任した歌人たちによる筑紫歌壇の時代である。最終的に『万葉集』をまとめた大伴家持の父である旅人が記録したものを持ち帰り、息子が集に入れたのだろう。息子も一緒に九州へ行ったという説もあるが、歌の内容から疑問。代表的歌人の山上憶良は、七二六年に筑前守となっているが、あくまでも筑紫歌壇の中心は旅人であり、着任したのが七二八年で、七三〇年には大納言となって京にいるから、わずか二年ということになる。第四期「大伴家持の時代」　旅人の息子、家持が『万葉集』の最終的な編纂者ということは疑いがない。特に最後の四巻は彼の歌日記という内容である。防人を集める役人となったため、東国の民謡風な「東歌（あずまうた）」や「防人歌（さきもりのうた）」を収集したのが異色である。『万葉集』の中心が庶民となったとする学者もいるが、あくまでもその他の作者である。　さて、この四つの時代の代表的な歌を見ながら戻って行こう。　第四期　　　三年春正月一日に、因幡国の庁にして、饗（あへ）を国郡の司等に賜ふ宴の歌新（あらた）しき　年の初めの　初春の　今日降る雪の　いやしけ吉事（よごと）　（四五一六）　　　右の一歌、守大伴宿禰（すくね）家持作る。　　　天平宝字三（七五九）年の正月一日に、因幡国の庁で、国司や郡司らに饗応した宴の歌新しい年の初めの初春の今日降る雪のようにどんどん積もれ、良い事が。　　　右の一首は因幡守である大伴宿禰家持が詠んだ。『万葉集』の最後の歌である。こういう歌こそ、訳すよりもリズムで読みたい。集の最後とするにふさわしい、新年を祝う歌だ。『万葉集』は感動をそのまま詠んでいるという。「ますらをぶり」という男性的で直接的な歌である。一方約一五〇年後の『古今集』は「たをやめぶり」という女性的で理知的といわれる。技巧を駆使して組み立てるものである。さて、紹介した歌は「の」の繰り返しが新鮮で、古い歌とは思えないセンスを感じる。　ついでだから述べておくと、家持はこの後二六年生きているが、歌は一首も残っていない。歌を詠むのをやめてしまった原因を、政治的、人間関係に求める学者もいるが、とんでもない。歌を詠まない訳がなく、ただ記録されていない、あるいは記録したものが失われただけのことであろう。

  2016.05.29

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• 額田王：４「万葉集の時代・前半」

  「さて、額田王の三角関係が本当はどうかという問題。万葉集全体から考えて行こう」　　　額田王：４「万葉集の時代・前半」　額田王の歌から、元は大海人皇子（天武天皇）の妻ではあったが、兄の天武天皇に召され、三角関係が生じたのだと説明が付いた。それでは私はどこに疑問を持ったのか……　と、その前に、『万葉集』の時代を説明しよう。国語では、万葉集を四つの時期に分けて説明している。　第一期「額田王の時代」　『万葉集』ではほぼ歴史の流れに沿って歌が並べられている。天智天皇の母である斉明天皇は６６１年没。朝鮮半島の百済が唐と新羅によって滅ぼされるが、その百済救済のために朝鮮へ出兵しようとした矢先であった。天皇は一月一四日に熱田津の石湯温泉に泊まり、三月には福岡県に到着して五月に宮殿を造営するも、七月二四日、この地で没した。皇太子であった中大兄皇子（天智天皇）が即位せぬままに出兵し、六六三年に白村江の戦いで敗北した。唐が日本にも攻めて来るかも知れないということで、福岡の海岸に水城（みずき）を作り、防衛隊として防人（さきもり）を置くようになる。奈良から近江への遷都（六六七年）もその対策の一つだった。翌年の一月三日に即位する。この時、大海人皇子（後の天武天皇）を皇太子とするが、二年後大友皇子が生まれると、大海人王子は皇太子を辞退している。　六七一年十二月、天智天皇崩御。大海人皇子は後を託されそうになるが、出家して吉野に逃れ、翌年壬申の乱を起こして大友皇子を滅ぼし、六七三年に即位する。大友皇子は即位していない様子だが、明治になってから弘文天皇という名が贈られた。壬申の乱の原因として額田王を加えたのは江戸時代の伴信友（一七七三～一八四六）らしい。第二期「柿本人麻呂の時代」天武天皇の皇后は天智天皇の娘であるが、自分の子の草壁皇子を皇太子に立てた。六八六年に天皇が没すると、翌年息子のライバルと思われていた大津皇子を殺す。謀反を起こしたとして自害した。これは『万葉集』よりも漢詩集である『懐風藻』が面白い。大津皇子が素晴らしい才能を持っていたことが分かる。草壁皇子は天武天皇の後継者として二年三ヶ月にもわたる葬儀を仕切るが、即位せぬままに六八九年に死んでしまった。歴史書では天皇などの死に「病」の字があるが、彼の死についてはそれがない。その謎についてはいずれまた。さて、次の天皇になるべきは草壁の息子である軽皇子がまだ幼いため、成長までの間母親が政治を代行する。最初に紹介しておけばよかった。天智天皇の娘で、天武天皇の妻となった女性で、後に持統天皇という名を送られる。軽皇子は七歳であるから、即位してもよかったはずだ。それなのに、自らが天皇となった。彼女に仕えていたのが柿本人麻呂である。『万葉集』ではこの時代の歌人が歌を並べ、最後に必ず人麻呂で締めくくる。この時代の部分は彼が編纂していると見て間違いなさそうである。彼が歴史に登場しないとして謎になっているが、実はその答えも出ているので、それもまたいずれ解明しよう。

  2016.05.28

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• 額田王：３「君待つと」

  「さあ、額田王が三角関係だったという証拠を重ねよう」　　　額田王：３「君待つと」　三角関係の証拠にもう一つ、奈良から近江へ都を移す時に額田王が詠んだ歌がある。　　　額田王、近江国に下る時に作る歌味酒（うまさけ）　三輪の山　あをによし　奈良の山の　山の間に　い隠るまで　道の隅（くま）　い積もるまでに　つばらにも　見つつ行かむを　しばしばも　見放（みさ）けむ山を　心なく　雲の　隠さふべしや　（一七）　　　反歌三輪山を　然（しか）も隠すか　雲だにも　心あらなも　隠すさふべしや　（一八）綜麻（へそ）かたの　林の前（さき）の　さ野榛（のはり）の　衣（きぬ）に付くなす　目につく我が背　（一八）　　　額田王が近江の国に下る時に詠んだ歌（味酒）三輪の山が、（あをによし）奈良の山の、山の間に隠れてしまうまで、道がくねくねと幾重にも重なりつもって見えなくなるまで、十分に見ながら行きたいのを、幾度も眺めたい山なのを、心無く雲が隠してよいものか。　　　反歌三輪山をそのように隠すのか。雲だけでも情けがあってほしい。隠してよいものか。麻糸を巻く「へそかた」を取る三輪山の林の前の野に生えた榛の木が衣によくくっつくように、とても目に付く我が君であるよ。　最後の歌だけでよいのだが、一応全部紹介。これは近江への遷都であり、当然背と呼ばれるのが天皇でなければならない。実際には近江へ遷って即位するのであるが、天智天皇のことで、「近江天皇」とも呼ばれている。つまり、天智天皇を夫と呼んでいるのだ。　もう一つ紹介しよう。　　　額田王、近江天皇を思（しの）ひて作る歌君待つと　我（あ）が恋ひ居れば　我がやどの　簾（すだれ）動かし　秋の風吹く　（四八八）　　額田王が近江天皇（天智天皇）をお慕いして詠んだ歌あなたのおいでを待って私が恋しく思っていると、私の家の簾を動かして秋の風が吹くことよ。（あなたがお出でになったかと思ってはっとしました。）　ほうら、夫婦関係があることが証明されちゃったじゃない。

  2016.05.27

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• 額田王：２「大和三山」

  「さあ、額田王が三角関係だったという資料から見て行こう」　　　額田王：２「大和三山」　他の歌を挙げてみる。「あかねさす」の少し前にある、有名な歌。　　　中大兄（なかのおほえ）の三山の歌香具山は　畝傍ををしと　耳梨と　相争ひき　神代より　かくにあるらし　古（いにしへ）も　然（しか）にあれこそ　うつせみも　妻を争ふらしき　（一三）　　　反歌香久山と　耳梨山と　あひし時　立ちて見に来し　印南国原（いなみくにはら）　（一四）わたつみの　豊旗雲に　入日さし　今夜（こよひ）の月夜（つくよ）　さやけかりこそ　（一五）　中大兄皇子（後の天智天皇）が大和三山を詠んだ歌香具山は、畝傍山を愛しいと（注：男ふたりが女を争うというのでこう解釈される場合が多いが、原文では「雄男志」と書かれ「雄々しい」という意味にとれる。それなら女ふたりが男を争うことになる）耳梨山と争った。神代の時代でもそういうことであるらしいよ。昔もそうであったからこそ、現実の今の世でも妻をめぐって争うらしいよ（「つま」は結婚した相手のこと、夫にも使う）。　　　反歌香久山と耳梨山が争った時に、阿菩の神がわざわざ見に来たという、印南野であるよ、ここは。大海原のはためくような雲に夕日がさして、今夜の月は明るくあってほしいよ。　「後の歌は反歌としてはおかしいが、そのまま載せておく。」という注がある。　さて、この歌が額田王を弟と争うことになる三角関係を示した歌だとされている。だから「畝傍ををしと」の部分は「畝傍山が愛しい」という男目線で訳した。ところが、原文は漢字だけで表記されており、「雄男志」と書かれているのだ。この漢字なら、「雄々しい」という意味に取るのが正しそうだ。それなら女ふたりが男を争うということになる。香久山が女性的だと指摘する学者もいるようだ。そうなると、最後の部分では「妻を争ふ」というのも「夫を争う」と訳せる。「つま」は女性だけでなく、結婚相手を指すので、男でも女でもいいのだ。　この歌から天智天皇は弟の妻であった額田王を愛し、奪ってしまった。「あかねさす」の歌の時には額田王が、元の夫であった大海人皇子と愛を確かめ合ったのである。　証拠はまだあるが、長くなるので次回に出すことにするが、昔の教科書には、額田王について、「大海人皇子の妻であったが、後に兄の中大兄皇子に召された」と注がついていた。ご丁寧に「壬申の乱の原因となった」とまで書いた本もあったのだ。

  2016.05.26

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• 額田王：１「あかねさす」

  「『万葉集』の代表的歌人である額田王（ぬかだのおほきみ）。昔の教科書では天武天皇の妻だったのを天智天皇に奪われた……とか……宝塚の歌劇にも『あかねさす紫の君』とかいうのがあったな……まあ、そう言われていた。それが、昭和の末には「三角関係があったとされるが疑問」と書かれるようになっていた」「今はどうなんです」「また昔の三角関係があったと思われる記述に戻っている」「どういうことでしょう」「それを調べてみよう」　　額田王：１「あかねさす」　額田王、『万葉集』初期を代表する女流歌人。三角関係で有名なのだが、私は高校の授業で一つの疑問を持って先生に尋ねた。先生、「うん、いい質問だね。調べてごらん。」……先生も分からなかったのだ。大体、長年国語の教師をやっているのに私の質問事項に気付かないはいい加減な教師だと分かるのだが、ちょいと教科書で勉強し直してみよう。　　　天皇（すめらみこと）、蒲生野（かまふの）に遊猟（みかり）する時に、額田王の作る歌　　あかねさす　紫野行き　標野行き　野守は見ずや　君が袖振る　（二〇・雑歌）　　　皇太子（ひつぎのみこと）の答ふる御歌　　紫の　にほへる妹（いも）を　憎くあらば　人妻ゆゑに　我（あれ）恋ひめやも　（二一・雑歌）　この歌が有名である。　　　天皇（天智天皇）が、蒲生野に薬草刈りをなさった時に、額田王が詠んだ歌　　（あかねさす）紫野を行き、標野（天皇の領地）を行き、野守が見るではありませんか、あなたが袖を振るのを。　　　皇太子（大海人皇子（おほあまのみこ）・後の天武天皇）が答えた歌　　紫の花のように愛らしいあなたを憎く思うのなら、人妻であるあなたに私が恋をすることがあるのでしょうか。　国語的に言えば、「あかねさす」は「紫」にかかる枕詞（まくらことば）。「袖振る」というのは、着物に香を焚き込めて、その袖を振って匂いで女性の気を引く、求愛の動作。　「にほふ（匂ふ＝におう）」は女性の愛らしさをいう。だから、男性が女性に「お前、なんかにおうな」と言ったら「お前なんだか可愛いな」という意味になる。　「妹（いも）」は男性から女性の恋人や妻を呼ぶ言葉。女性から男性を呼ぶのは「背（せ）」。大阪に「妹背山」というのがあるが二つ重なった山だろう。必ず大きい方が女性で、女体山と男体山と呼ばれる。男性が女性に「いも」と言ったら「お前のことを恋人と思っている」という意味になる。　さて、この歌は何を詠んでいるのだろう。額田王については歴史では『続日本紀』に「額田王、初め大海人皇子の妻、十市皇女（といちのひめみこ）を生む」とあるだけである。　つまり、最初は大海人皇子の妻だったのが、この時は別人の妻になっているということになる。「野守」と呼ばれるのは、この野の持ち主である天智天皇であろう。つまり、額田王は、兄の天智天皇に奪われているのだ。

  2016.05.25

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• 沖縄に対する自民党

  「女性殺害事件が起こって、基地反対運動が起こっている」「はい」「それで沖縄の知事が総理に会ったが、総理が何を言ったのか一言も出てこないのはなぜじゃろう」「さあ」「もう一つ、その場にスガ官房長もいたのだが、何を言ったのか出てこない」「はい」「沖縄は日本では唯一、アメリカ軍が上陸して戦地になった。それからアメリカのものにされて復帰するまでに大変な苦労があったはず」「そうですねえ」「それで更に基地が残って苦労しているのじゃ」「はい」「スガは、これに対して、戦争で苦労したのは沖縄だけではないとキッパリ」「そうでしたねえ」「今回の女性殺害事件でも、犯人が悪い。それを基地があるから起こったのだと問題をすり替えるのは卑怯だと言っていた」「でも基地がなければという思いはします」「知事が総理に対してオバマ大統領が来日する時に会う機会を作ってほしいという要望を出しているが、テレビの解説者が、全く問題がずれていてなぜそんな要望が出るのか理解できないと説明していた。圧力があったのかな」「基地の問題と事件をとにかく別のものにしようという意図でしょうね」「神奈川の県議である、やはり自民党のコジマって奴、基地に反対する沖縄の人を、基地の外にいる人だから基地外（きちがい）と呼ぶのが正しいとして、その表現を繰り返している」「ひどいね」「たまたま狂った人と同じ仮名遣いになるが、発音が違う。差別的表現には気を使っているので、失言ではないと、謝罪も訂正もしないそうじゃ」「おごる自民という印象ですが」「先日の国会で、男女の賃金格差を追求されて、うやむやに答えたアベ総理。相手が男尊女卑になると指摘すると、その発言こそ差別だと笑った。自民党からはその民進の女性議員を懲罰委員会にかけると息巻いているが、今回の都議も、差別だと思う方が差別なのだとキッパリ」「え……」「アベと頭の中は全く同じ構造なのじゃな。アベ発言はそれよりも相手を不勉強だと罵って『私は立法府の長』と言った方が話題になった」「三度目だそうですね」「中学校で習う政治のレベル。ところが、報道では、単なる言い間違い、それを指摘できない野党がちゃんと聞いていないと批判していた」「あれえ……」「本当に圧力があるのかも知れないな」「まさかねえ」「沖縄の問題に、担当大臣も全く出てこないなあ。こういう時こそ表に出なければ、何のための大臣か分からない」「はあ」「前回の会合では冒頭の挨拶、自己紹介なのか、それぎり一言も口を開かなかったそうじゃし……」「いいんでしょうか」「どうも疑問ということで」

  2016.05.24

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• サラリーマン川柳

  「今年もサラリーマン川柳が発表になって……」「何か」「今見ていたテレビ局では、今年も最優秀作品は誰もが共感するものでしたって言っている」「へえ」「その作品は、　　定年を迎えた途端に妻ドローン」「ああ、ドローンとドロンをかけたのね」「陳腐な洒落じゃな。それがまあ、今の流行りを取り入れたというだけ」「で、何か問題でも」「ほら、最初に言った通り、これが誰もが共感するものって……」「え……ああ……共感するんですか」「どうも分からない。サラリーマン川柳も、２、３年でマンネリに陥っているなあ」「はい」「ところで、今回の最優秀賞もそうじゃが、妻の怖さ、強さを表現するのがひとつのパターンになっている」「そうですね」「つまり男の弱さ、頼りなさが描かれるのじゃが、これは差別じゃろう」「そうなんですか」「逆に女が情けないのを描くと、差別だと騒がれる」「確かにね」「それが女性差別を助長している様に思う」「例えば」「古いものを何でも買取りますってＣＭで、『うちの旦那はどう』って質問している。これが『うちの女房、買ってくれる』ってやると大問題になる。しかし、亭主を売るのは騒がれない」「確かに……これは差別ですね」「そういう片方だけが騒ぎになるのは、このような男がダメで笑いになるのは……」「何です」「要するに女性がまだ差別されているのじゃ」「ほう」「アベ総理が、女性議員の質問に対して、またしてものらりくらりといい加減な答弁をしていた。女性議員がそれは女性蔑視だという発言をした途端に、ニコニコして『そういう発言をするのが差別なんです』とキッパリ」「アベ総理のせこさを感じますね」「何でもそう。言葉遊びで、ちゃんと答えたものがない。先週も半分は『じゃあ、あんたがやんなさいよ』的な回答。残りは質問をそらせて言葉尻を取り上げて答える。アベノミクスも、どうなっているのか……最初は株が上がったのが成果だと行っていたのに、今は10年20年先を考えたものだから、もし今止めてしまったら大変なんだと言い出している」「はあ」「要するに死にかけた日本経済にカンフル剤を投入し始めたのだから、それを止めたら確実に死ぬ。それでいいのかと問いかけているのじゃ」「ううん」「とまあ、お金の問題、都知事が話題じゃが、アベ政権の桁違いの予算も考える必要があるな」「お金に関しては民主党政権はかなり節約しましたねえ」「アベになってから国の予算は１．５倍……どこから金が湧いて出るのか……まあ、それはまたいずれ」「ということで、本日はこれぎり」

  2016.05.24

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• 愛：その２

  「愛について考える、その続き」　馬鹿なガキ……いや、成長を忘れた可愛い女の子が言った。「ロミオとジュリエットこそ真実の愛よ。憧れちゃう。」「それなら、これを飲んだら即死ねるよ。」　って農薬をプレゼントしたらなぜか怒られた。ロミオとジュリエットはただのガキで、知り合って七日目にもう死んじゃう。他の異性も知らないので比べることが出来なかった。もし死ななかったらどうなるか……二人で逃げて貧しい生活をする。生活苦のために夫婦喧嘩が絶えない立派な家庭を作ったのだろうか。それとも他の異性と結婚して、本当の幸せを手にしたのだろうか……そもそも白雪姫や眠り姫のようなお姫様は世間知らずで、だから初めて会った男性と結婚してしまう。相手の性格や趣味が問題にならないのがおかしいのだ。未来の不幸が手にとるように見えるじゃないか。　初恋のほろ苦い思い出なんて安っぽい言葉があるが、実らないのが初恋だとしたら、人は生涯何度も恋をするはず……私の知っている男は二十三度目の初恋でやっと結婚した。愛した人が数人いるというのは当たり前である。ロミオとジュリエットに憧れるという女性は、初恋の人を見つけたら、すぐに死ぬのが良い。だから親切のつもりでプレゼントを選んだのに……女心は分からない。　私は教師だった時代があり……何でそんなに驚くの……校長がこんなことを言った。「生徒に愛情があるなら、悪い所を指摘して、叱ってやらなければなりません。」　欠点を指摘し、叱るのが愛情。しかし、我が家では妻に対して「ブスだ。」「デブだ。」と欠点を指摘しただけで、その少なくとも３倍、普通で７、８倍の叱責が返って来る。校長の論理が正しければ、妻は私の何倍も愛情を持っていることになるのだが、そうを感じないのはなぜだろう。「喧嘩をするほど仲が良い。」　というが、それだって本当だろうか。戦争をする国が、互いに牽制し合っている国同士が、実は一番仲がいいのだとは思えない。　我が家でも喧嘩はしないが、夜になると布団の中で取っ組み合って、ひいひい泣かせてやると……え、いや、その……　この論理で、体罰は必要だとする教師がいたが、手を出されて良くなる人間などほとんどいない。だから体罰をやっている教師は、自分もそれで良くなったという体験を持つ……つまり昔クズだった……ほんの一握りの教師ということになる。大半は、学生時代に体罰を受け、その効果のなかった学生時代を送った教師で、これからは殴る側になったぞーって喜んでいるのだ。体罰をやっている教師はこの二つのどちらかに分類されている。　え、話題がそれている……あれ……　もういい、結論を書こう。　そもそもこの企画自体がおかしいのだ。私が愛について書くなど、全てを超越した聖人に俗なことを書けと言っているようなものだ。悟りを開いて仙人になった久米ちゃんが、なぜ女性のふくらはぎに目がくらんで落ちたのか、仙人になっていないのだから分からないではないか。　ということで、この問題については、結論がないというのが結論である。

  2016.05.23

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• 愛：その１

  「愛とは何だろう」「いきなりどうしました」「ふと考えたので、まとめてみよう」　愛とは何だ。まず、回りにいる馬鹿……いえ、バカに愉快な連中の答から……「上の上だ……ほら、『あいうえ……』」「Ｈの後だ。ＨＩＪＫ……だから、愛をはぐくむにはＨが必要なのだ。」「アイとコイは違うものだ。アイは塩焼きが美味い。コイは洗いがいい。だからアイは熱くなるが、コイは冷めている。」「愛とはお金が掛かるもの。円よりドルの方がいい。これをアイドルという。」　なるほどと思う……ものは全くない。　「惜しみなく愛は奪う」と言ったのは有島武郎。女性記者と心中し、相手の女性の方が偉大な作家を殺した悪女として後生に残ってしまった。永畑道子だったか、『花を投げた女性たち』という本でこの人を紹介し、やっと世に認められたという感じ。真実の愛だったそうだが……しかし、真実の愛って何だろう。　これを受けて昭和の終わりには女性作家が「愛は惜しみなく与えるものだ」と書いていた。相手のためには自分の持っているもの全てを投げ出すものだというのだ。なるほどなあと……あまり思わなかったが、別の章を読んでいたら、「私は自分のものを投げ出すなんて出来ない」と断言していた。この人は、つまり自分で定義した愛は行使できない。生涯独身どころか、恋をすることもないのだ……体験したこともない人間が愛を語れるのだろうか。　これにはレオナルド・ダ・ヴィンチの手記に楽しい小咄が載っている。「君は絵は上手に描くのに、どうして子供はあんなのを作ったんだい。」「絵は明るいところで描くが、子供は暗いところで作ったんでね。」　……あ、これ違う……「絵を描いたこともない人が絵の審査員をやっているんですが、いいんでしょうか。」「さあ、僕は玉子を産んだことはないけれど、玉子の善し悪しは分かるよ。」　これだ……経験がないから分からないというのは偏見だ。しかし、中村光夫の講演で、「恋愛小説を書くには、恋愛体験がなければならないが、その恋愛から覚めていなければならない。」　と聞いたこともある。　これは田山花袋の『蒲団』について述べた話だったはずだが、興奮状態のままに書いてしまったためにああいう作品になったのだという。その論理からいえば、本当に愛を描けている作品は『蒲団』なのだろうか。他は愛から冷めた、白けた作品ということになる。「もう少し意見が出ているので、次回に続く」

  2016.05.22

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  柳家喜多八師匠

  「１７日（火）、柳家喜多八師匠が亡くなりました。享年６６歳。ご冥福をお祈りします」「黙祷」「高座では育ちがいいから性格が暗いというのを売りにしていた」「はい……写真は随分雰囲気が違いますね」「サービス精神も満点、お酒が好きで……ちょっと多すぎたようじゃが」「はい」「写真は２００３年８月１０日の円朝祭。ビヤガーデンをやっていた」「お店ですか……本人が飲んでませんか」「そう。酔っ払ってグダグダ。噺家さんが焼いた素焼きのジョッキがあって、それを持って行くと、半額になる」「ケチな大家さん好みだね」「それで持って行ったら、師匠、『あいよ』って、用意してあるプラスチックのグラスに……」「あれ……」「『師匠、こっちだよ』って言うと、『あ、そうか』ってんで、そちらにも一杯」「二杯ですか」「それで『で、いくら出せばいいの』と尋ねたら、『いいよいいよ』ってんで……」「本当にいい加減ですね」「ということで、この記念写真」「ほう」「これは２０１０年８月２８日。蜃気楼龍玉君の襲名披露宴で」「何やってるんですか」「愛を確かめ合っている」「はいはい」「ということで、身近な師匠がこのところ立て続けに亡くなって、寂しい限りじゃ」「すぐ大家さんも参りますので」「そうじゃな」「あれ……」「さて、これからは弟子のろべえ君を応援しよう」「はい」「弟子は一人だけ……面倒くさいっていうので、弟子にも自分でやれって、ほとんど指導してくれなかった」「それであんなのが出来上がったんですね」「弥次さん喜多さんの洒落で、喜多八の弟子だから弥次郎兵衛……」「やじろべえですか」「半人前なのでろべえだけになった」「なるほど、噺家さんらしい洒落ですね」「雑誌『東京かわら版』で、落語界一のイケメンに選ばれた」「あれで」「まあ、それで間もなく真打という時期にこれはショックじゃな」「応援して行きましょう」

  2016.05.21

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• 赤と黒：その２

  「さて、赤と白の場合は赤がオンで、黒と白の場合は白がオンになる。その理由は何か」「分かりませんね」「正解……分からないのじゃ」「それで二回目をやるんですか」「友人の一人が言った。『そもそも理系の連中は、科学というものを信頼しているようだが、人の心は分からない。お化けは科学で説明できないから存在しないなどと言うような偏見に満ちた人間ばかりだ』と……」「何です、これ」「こいつ、怪談のマニアなのじゃ。続きがある。『だから理系の連中は芸術も理解できないのだ。チャイコフスキーの『悲愴』の第２楽章の五拍子が２＋３で不安な雰囲気を醸し出すのに対して、ホルストの『惑星』の『木星』では３＋２で爽快感を生み出している。そうしたいかにも理系らしい分析をして、その数字に何の意味があるのを解明した……そういう理系の人間がいるか』　わしは、『ううん……ピタゴラスだけだろう』と答えた。すると、『だから彼らには芸術は分からないのだ。美術についても、『最後の晩餐』に線を引いて、遠近法は数学だなどと……レオナルドの絵は数学的だから芸術的に優れているという結論を出すような輩ではないか。所詮理系はクズの集まりよ』　という結論」「訳分からないけれど、何となく大家さんの友達だなって分かりました」「わしは温厚で人との争いを好まない。だから彼のように平気で人を批判したりクズ呼ばわりするような人間と争わずに済んだのじゃろう。わしは人の悪口や批判なんて頭にも浮かばない。もし彼と同じような人間であったら、とうの昔に喧嘩になっている。だから、こいつは勝手な理論を並べ立てているだけで、本物の馬鹿に違いないと確信しても、決して口にしないのだ」「温厚な大家さんらしいです、はい」「要するに彼の結論、理系は馬鹿だから美術的な基準は分からない。理屈はなく、適当に……つまり非科学的に……スイッチに色を付けただけだというのだ」「正解かもしれませんね」「結局納得の行く結論は出ないまま、今日に至るのじゃが、最近新しい説を知った」「え、何かあるんですか」「ＡとＢ、つまり色暖かさと明るさのどちらを基準とするか、メーカーがライバル社に対抗して、わざと違う基準で作っているというのじゃ」「へえ、そうなんだ」「この場合も、ではどちらが元か、つまり先に決めたのがどちらかという本家争いがあるのじゃろう」「いらないと思う……で、それが正解なんですか」「この説が正しいかどうか……手元のスイッチでは資料が不足していて分からない。全国でアンケートをとってスイッチがＡかＢか、またそのメーカーはどこかという大量の資料を集めて分析するしかない」「それで読者に呼びかけようというんですね」「いや、私は暇人ではないので、とてもそんな調査をやる気はない。おそらく私が死ぬまで結論は出ないじゃろう。後生の研究者に託すことにしよう」「結局適当なんですねえ」「さて、実はここまで書いて、とんでもないことに気付いてしまった」「え、何がありました」「我が家の洗面所の照明じゃ……実は入口のスイッチで点灯するようにしていたので気付かなかったじゃが、本体にスイッチがあって、白いのがオフ、黒いのがオンなのじゃ」「あれ……前回結論にしたのと逆じゃないですか」「いったいどうなっているのじゃろう。ま、誰かちゃんと調査して調べてね」「誰がやるか」

  2016.05.20

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• 赤と黒：その１

  「赤と黒って、スタンダードの作品ですか」「それはスタンダール」「あれ」「あの作品は赤と黒が対立関係にあるはずじゃが、ここでは赤に対して何色、黒に対して何色って問題」「色の関係ですか」「二つの相手の色は同じ」「へ……何でしょう」「正解は白」「赤と白……運動会だね……黒と白ならカラーになる前の写真やテレビ」「家電製品のスイッチなのじゃ」「え……ああ、赤と白、黒と白になってますね」「さて、これが電源のスイッチと推察されるのであれば、片方がオンで他方がオフであることも容易に推理できる」「推理するほどの問題でもありませんね」「では、どちらがオンじゃ」「え……」「はい、問題Ａ、赤と白の場合」「赤がオンで白がオフでしょう」「なぜじゃ」「え……赤い方が暖かく感じるから」「９割以上がそう答えるのじゃが、それなら冷蔵庫やクーラー、扇風機の場合は逆になるのか」「あれ……確かにそうですね」「いや、お前は素直でいい。わしの友達にこの質問をぶつけると、十中八九『お前は馬鹿か』ととんちんかんな質問をして来る」「分かります」「しかし、照明などの暖かさに関係のない場合も同じなのか」「ううん……明るいから赤でしょう」「中学校の美術で習ったが、白の方が明るい色じゃぞ。古典においては『明かし』と『赤し』で同じ。わしは『枕草子』の冒頭の『やうやう白くなりゆく山ぎは少しあかりて』は色の関係で『赤りて』の方が面白いと思っておる」「すぐ脱線するだね。スイッチの問題でしょう」「まあ、要するに友達の説では、冷蔵庫でも後ろから熱を出さないと冷たくならない。クーラーだって室外機から熱をはしている。照明でも熱を持つのだから、暖かい色の赤がオンになったのだということになる」「まあ、それでいいじゃないですか」「では、問題Ｂ、黒と白の場合はどうなる」「これは白がオンで黒がオフでしょう」「なぜじゃ」「またですか……黒いのは暗いからオフ」「ライト以外はどうなる」「あ……まあ、白いほうが明るいんですから、全部統一してオンになるんでしょう」「まあいい。大体の意見も同じで、色々な曲折はあるものの、明るい色の白がオンであるという結論に至った」「ああ、めでたしめでたし」「さて、そこで問題が生じる」「え……なんです」「ＡとＢとの関わりじゃ」「何です」「二つの論を見ると、それぞれに納得のいく論理がなされているように見えるが、二つを並べるとおかしなことになる。つまり、Ａは色の暖かさが基準となり、Ｂでは明るさが基準となっているのじゃ」「はあ……そうなりますね」「Ａの暖かさが基準として考えると、赤と白の場合は赤がオンで問題ない。しかし、黒と白の場合、どちらも暖かさには関係のない色じゃないか」「それは例外になるから、明るい方をオンにする」「筋が通っているように見えるが、そこから基本の赤と白に戻ってみよう、赤と白では白の方が明るい色なのじゃ。つまり、後から加わった基準は、そもそも第一の基準に矛盾しているではないか」「あれ……じゃあＢの方が基準でＡが例外になるんですか」「今言ったのと同じじゃないか。黒白では明るい白がオンなのに、赤と白では暗い赤の方がオンになる。だから例外ととする前に白がオンで赤がオフになっていないのがおかしい」「ううん……理屈はそうなりますか……こんなことばっかり考えている大家さんの頭ってどうなっているんでしょうね」「このスイッチの謎は解けるのだろうか、次回をお楽しみ」「推理ドラマだね」

  2016.05.19

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• 春日局：７「大奥」

  「春日局の最終回」　　　春日局　　７：大奥　春日局は、家光となる竹千代を養育していたわけだが、そのお側に仕える者まで教育した。松平信綱、水野光綱、稲葉正勝以下そうそうたるメンバーが一緒に育ち、礼儀作法を仕込まれ、お福に頭が上がらなくなってしまうのである。　江戸城には「大奥」と呼ばれる区域があった。政治を行う「表」に対して、私的な場としての「奥」は昔からあるのだが、２代将軍の秀忠がこの区別をはっきりとさせ、家光が「表」は幕府の省庁、将軍が政治を行うのが「奥（中奥）」で、私的な「大奥」という形で３つに分けた。春日局はこの大奥に大改革を行ったのである。　大きな目的は女性の躾であった。江戸の女性は柄が悪く品がない。そこで宮中を手本として立ち居振る舞いを改めさせようとして、京都、北小路家の娘玉を入内させた。これが桂昌院である。京都堀川の貧しい八百屋の娘を春日局が教育し、優雅な京女に作り上げて江戸城に入れたという説もある。出生については色々あるので省略。江戸城内に福寿稲荷を創建したが、他を抜いて五代将軍綱吉を生んだというので、大奥の女共が信仰し、「他抜き」の洒落で「狸」を祀った。後に城外に移され、明治になってから柳森神社に合祀された。今でも秋葉原駅で降りて神田川を渡った先にあるが、稲荷の使いの狐でなく、狸があるのが楽しい。入内は１６３９年、綱吉を生んだのは１６４６年である。　これは、女に興味を持たず、男色だった家光が女性に興味を持つようにという春日局の作戦が図に当たったのだという説もある。また、男色だったのは五代綱吉で、子供が生まれないため桂昌院が僧侶を紹介したのが生類憐みの令につながったという説もある。正室の孝子には子が出来なかったので、女の園を作ろうとしたのだという説もある。尚、五代綱吉の正室となった信子は、弟松平信直（本姓は鷹司）の孫である。　四代将軍となる綱吉は、宝樹院（楽）の子で、初の男の子ということで家光が喜び、自分と同じ竹千代という幼名を付けた。１６４１年生まれ。　桂昌院は、京都の礼儀作法をわきまえた女性であったため、他の家光の妻たちとは不仲であったという話があり、大奥をドラマにする時にはこれが使われる。しかし、礼儀作法で他のお手本になっていたという点は間違いないようである。それで小説では、綱吉の正室鷹司信子と不仲であったとしているものも見られる。大奥には身分ある侍や町人の娘も出仕して雑用を行ったが、彼女らは一切の口外をしないよう命じられており、物語や絵にしようとする者がどんなに口説いても応じなかった。義理堅いもので、明治維新の後やはり大奥についてインタビューしようと試みた記者がいたが、相手にされなかったという。絵や物語に書かれたのは全てそれ以前の平安時代の宮中や想像によって生み出されたものである。だから、女だけの世界でどろどろとした人間関係が好まれたのであろう。　完全に脱線してしまったが、寛永２０（１６４３）年９月１４日、春日局死去。辞世、　　西に入る月を誘（いざな）ひ法を経て今日ぞ火宅を逃れけるかな

  2016.05.18

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• 春日局：６「直訴」

  「春日局、いよいよ実母のお江さんと乳母の対立が表面化するぞ」　　　春日局　　６：直訴　さて、江の方が国松を可愛がるに従って、愚鈍な竹千代よりも知的で活動力もある国松を次期将軍にという姿勢が出て来る。表立って口には出来ないが、周辺でそういう姿勢が見えるようになる。さあ、これではいけないというので春日局が動き出す。１６８６年の『春日局略譜』では、両親がそろってそういうことを考え、竹千代が自害しようとしたと書かれているが、これは行き過ぎだろう。春日局が大御所の家康に直訴したというのも嘘かも知れないが、このくらいはいいだろう。入鉄砲に出女というくらいで、自分の考えだけで行くのは不可能に近い。将軍家乳母の地位を利用して伊勢参りなどとこじつけたのかも知れないが、かなり無理がある。その線引きは微妙なのだが、春日局は駿府の家康に行ったということにしよう。　書物にもあるが、神田一門の女流講談が一番のお勧め。　鷹狩と称して城を出ると、もう少し先まで行こうとだんだん足を延ばして江戸まで行ってしまうのがおかしい。これも嘘だろうが……　家康が竹千代と国松と対面すると竹千代に「こちらへおいで」と呼んで膝に抱いた、あるいは隣に座らせた。国松も前に出ようとすると、「世継ぎである身の兄に対して同列に並ぼうとは何事じゃ」と一喝、これで三代将軍が決まった。　元和２（１６１６）年に家康は没しているので、それより前のことになる。竹千代はその頃元服するはずだったが、祖父の死で延期され、元和６（１６２０）年に元服、家光と改めた。将軍となったのは寛永３（１９２６）年である。江はこの年に亡くなっている。後年は病で寝たきりだったという話もあり、悪女説では思い通りにならなかった悔しさから悶々としたということになるのだろう。　寛永６（１６２９）年、お福は竹千代の疱瘡治癒を祈って伊勢へ行く。彼女は竹千代が無事に治るならば、自分がどうなってもいいと言って、生涯薬は飲まないことを誓った。これを守って、薬を与えられても飲んだふりをして捨てていたという逸話がある。　さて、福は伊勢からそのまま御所へ行く。実は家光の命を受けて、後水尾天皇の退位を迫る使者になったのだともいわれる。交渉がうまくいったので、天皇はこの年末に退位することになるが、向こうもこれを察知して、武家では昇殿の資格がないため宮中には入れないと追い出した。福は母方の親類である三条西家の養女になろうとしたが、福の知っている主人は既に亡くなっていた。それでも堂々と掛け合って、実条と兄妹の縁組をして昇殿。後水尾天皇に拝謁したのである。天皇の妻は江の娘和子（まさこ）である。　天皇退位のために行ったという説が疑問なのは、この時、福は天皇から位と名を授けられているからである。それが春日局という名である。彼女の出身地からつけたとか、宮中にある名だとか、前の天皇の乳母の名だとか……色々説はある。体位しろと迫る使者に位や名前を授けるのがおかしい。政敵であっても、その素晴らしさを認めたという意見もあるが……　いずれにせよ、春日局という名が付くと、将軍の実母が亡き今、母親代わりとして大きな力を持つようになるのである。

  2016.05.17

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• 春日局：５「お福」

  「さあ、子供への愛情がゆがんだお江の方と乳母であるお福の対立はどうなりますやら」　　　春日局　　５：お福　テレビの大河ドラマというのがあるが、仕事の都合で飛び飛びにしか見られないので見ないようにしていた。ドラマの趣旨は何となく分かる。例えば徳川慶喜を無血で江戸城を明け渡し、明治維新を推進させた決断の男として描くのである。真実の人物が、家来まで見捨てて自分の保身だけを求めた人間であろうとも。問題はそれを見て「なるほど、そういう人だったんだ」とまるごと信じることである。歴史は勉強が必要なのだ。　浅井三姉妹の江（ごう：「お江」、「江与（えよ）」とも）という人物も取り上げられた。これも、江が立派な考えを持って二代将軍の妻として夫を動かしていくという形を作るのだろう。姉の淀君が子への溺愛だけで豊臣家を滅ぼしたのと対比すると面白いドラマになる。見ていないから何とも言えないが、そういう形式が面白いと思うだけのことだ。ドラマや小説の面白さは嘘（虚構）の面白さである。しかし、江という人物、現実にはどうだったのだろうか。　まず嫉妬深さでは桁違いで、側室が一人もいないというのは将軍家はもちろん、御三家、大名でも類がない。秀忠が江を残して家康の所へ行った時、妻のいない隙に他の女を抱くことを提案されると断った。万一江の耳に入ることを恐れたのだという。　そんな女性に政治の力などあるはずもない。あるのは子供への妄信的な愛情だけである。これは姉の淀君と同じである。それが、将軍の跡継になるはずの竹千代ではなく、その弟の国松に向けられたのである。国松は甘やかされて育ち、結局自害することになるが、その原因は母親の溺愛にあった。結局淀君と同じ運命になるのである。　第１話だけ大河ドラマを見たら、主演の女優が、いかにもそういう感じの、ちょっと足りないんじゃないかって雰囲気を出していたのが面白かった。バカ女かなと思わせておいて、次第に立派な女性に成長していくのだろう……まあ、見ていないので……　美貌を鼻にかけた嫉妬深い女というイメージで語り継がれていたが、永井路子は度重なる運命を乗り越えて行く中で魅力を増していく女性であると新しいイメージを作った。これも捨てがたい。しかし、やはり国松の悲劇は母親に原因があるとしか思えない。ドラマで素晴らしい女性と思った人には申し訳ないが……尚、お福の方も大河ドラマになっているので、念のため。　話を前回の部分へ戻そう。お江の方にとっては、その跡継になるはずの竹千代の乳母として、仇と言ってもいい一族のお福が付いたのは不満である。それで後で生まれた国松を溺愛するという構図は既に説明した。もっとも、これも福への対抗心ではなく、後で生まれた子の方が可愛いだけだという説もある。　そもそも竹千代は少し吃音があり、病弱であった。それに対して国松は賢く健康であるというので手元で可愛がって育てた。乳母を付けないという例も意外なことではない。　元和４（１６１８）年１０月、国松は鉄砲を習って、自ら鴨を撃ち取った。江はこの吸い物を秀忠に出して自慢したが、それが竹千代のいる西の丸に向けて撃たれたと知るや、ここに鉄砲を撃ちこむとは反逆に等しいと怒り、秀忠は箸を捨てて退出した。この内容は、新井白石が武士の心掛けについて書いたものだが、別説では箸を投げ捨てたのは江で、それから数日は夫が声を掛けても挨拶すらしなかったという。

  2016.05.16

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• 春日局：４「江」

  「さあ、浅井（あざい）三姉妹の末っ子、お江さんについて見て行こう」　　　春日局　　４：江　浅井三姉妹の末子は江（ごう）、お江、お江与（えよ）の方などとも呼ばれる。　天正１１（１５８３）年、柴田勝家が滅んだ後救われ、豊臣秀吉の意向で、信長の次男信雄の家臣佐治一成に嫁いだというが、それでは数えで１１歳である。この時代の政略結婚ならないとはいえない。　翌年、織田家の跡継になる織田信雄と徳川家康が組んで秀吉と対立、この時に信雄方に協力していた一成と離縁させられた。　その後秀吉の甥である豊臣秀勝と結婚するが、はっきりした記録はなく、１５８６年から９２年までの間といわれる。　秀勝は文禄元（１５９２）年に朝鮮出兵に従軍して病死、江の元には完子という娘があった。子の娘は茶々に引き取られて九条家に嫁いだ。　家康の子である秀忠と再婚したのは文禄４（１５９５）年である。５人の女の子を産んでいる。　千姫（１５９７～。豊臣秀頼に嫁ぎ、大阪落城の折に救われ、姫路の本田忠刻と再婚する。　珠姫（１５９９～。加賀、前田利常と結婚。　勝姫（１６０１～。松平忠直に嫁ぐ。　初姫（１６０２～。松江の京極忠高に嫁ぐ。　和子（１６０７～。１０８代後水尾帝の女御として入内。皇后となり１０９代明正天皇を生む。　男の子は３人である。　長男の長丸は１６０１年に生まれたがすぐ亡くなっている。　慶長９（１６０４）年に生まれた子は、祖父である家康と同じ竹千代という幼名を与えられた。この子の乳母として家康は斎藤利三の娘の福を選んだ。　このお福は、小早川家の家臣稲葉正成の妻であったが、夫の浮気に激怒、離縁して乳母に応募してきたという逸話がある。　挨拶に来た福に、江は声も掛けなかった。　斎藤利三といえば明智光秀の家臣である。光秀といえば、伯父に当たる織田信長を討った仇ではないか。江にとって、このお福は最初から毛嫌いするような相手であった。更に腹が立つのは、竹千代が大変に懐いてしまったことである。　まあ、そうなる前、慶長１０（１６０５）年、家康が隠居し夫の秀忠が二代将軍となったが心は晴れ晴れとしていなかったであろう。　翌慶長１１（１６０６）年に国松が産まれると、これを溺愛するようになる。

  2016.05.15

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• 春日局：３「浅井三姉妹」

  「さあ、お市の方はどうなったのか。続きを申し上げます」　　　春日局　　３：浅井三姉妹　信長の妹お市の方は浅井家に嫁いだが、信長に攻められて夫は自害、本人は三人の娘と共に助けられた。清州城で生活するが、この時にも秀吉がその美貌を狙った形跡がある。将を射んと欲すれば……というので娘らにも厚遇した。信長が本能寺の変で亡くなり、明智光秀が討たれた後、秀吉のライバルである柴田勝家と再婚した。翌年、勝家が賤ヶ岳で秀吉に破れると、前回同様女性は救われるはずであったのに、これを拒否、勝家と共に自害した。　あれほど愛し合い５人の子をなした浅井長政が死んだ時は生き残り、１０年後の柴田勝家とはわずか１年の夫婦生活なのに死を共にした……不思議に感じるかも知れない。一つは子供の将来のために生き残ったというのが正解であろう。浅井が滅んだ時、三姉妹は一番上の茶々でも数え年で５歳、初が３歳、江は生まれたばかりである。　それから十年、三姉妹はもう自分で生きて行けると判断したのだろうか。それにしてもわずか一年目で勝家と死を共にするのはうなずけない。一説では秀吉の存在があったという。　前回書いた通り、秀吉は高貴な美女に目がない。人質や滅ぼした相手の女は犯さずにおかない。今回勝家を滅ぼした秀吉は、信長という抑えもなく、お市が救われたら抱いたはずである。お市はそれが嫌だったのではないか。娘の三姉妹を脱出させると夫と共に自害したのである。　さて、そうなると秀吉は残された娘に手を出すしかなくなるのである。　浅井三姉妹、長女は茶茶。母の死後五年、天正１６（１５８８）年に秀吉の側室となった。翌年男の子が生まれ「捨」と名付けられたが、その喜びから秀吉が山城の淀城を贈ったことから淀の方、淀君と呼ばれるようになる。捨は鶴松となって３歳で死ぬが、文禄２（１５９３）年には「拾」を生んだ。これが後の秀頼である。　秀頼可愛さから、政治に口を出すようになり、息子を破滅に追い詰めて行くとすれば、一つのドラマが書ける。女性はこの時代ほとんど政略結婚の道具で、自らの意志で政治や交渉を行い成功した例は少ない。淀殿はそうした駄目親の典型ともされるのである。　二度の落城を経験したためか、大阪城での家康との戦いでも命だけは救われると思ったのであろうか……夏の陣でも城から出て戦おうという家臣を抑え、秀頼を戦場に出すのかと籠城を選択、この瞬間負けが決まった……小説のネタになるね。　次女の初は、天正１５（１５８７）年に京極高次と結婚、大阪冬の陣（１６０９年）を前に夫が死んで出家、常高院となった。豊臣方の使者として徳川との和平をまとめようと尽力し、冬の陣は収めたが、翌年の夏の陣では失敗した。これで徳川家との関係が冷めたのだが、死を前にした妹の江と対面したという記録がある。　慶長２０（１６１５）年に６４歳で亡くなっている。

  2016.05.14

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• 春日局：２「三雄の女」

  「さあ、戦国三雄の性格の違いから、今回は女の好みについて」　　　春日局　　２：三雄の女　戦国の三人の英雄を並べたが、その妻たちを比べても面白い。　信長の正室は濃姫ということになっている。斎藤道三の娘で、二人の父親が戦って、その和平のための政略結婚である。名前が分からないので美濃の娘で濃姫と呼ばれた。本名は帰蝶だったというが江戸時代の書物で確証はない。子供はなかったようだが、信長は誰に生ませたか分からない子供もあるのではっきりしない。長男の信忠を養子にしたという説もある。結婚後どうなったかは分からない。信長に殺された。道三の元に返された。病気で死んだ。信長と共に本能寺で死んだ。本能寺の乱の折に信忠と一緒に死んだ。その後も生き残った。全部の説がある。　秀吉の正室は浅野長勝の養女で、俗に「ねね」と呼ばれる。これもただ「ね」「ねい」「おね」などとする説もある……全部同じだが……。秀吉の死後は淀君と共に秀頼の世話などをしたが、千姫と結婚させると出家した。大阪夏の陣（１６１５）の後まで生きて１６２４年に亡くなってる。　正室の身分が低かったからか、高貴な女性に目がなく、敵を滅ぼして人質とした女性にはすぐに手を出した。すごいのは婆さん、嫁、娘の三代を抱いて、娘以外は自害している。　淀君についてはまた後で。　家康の正室は築山殿と呼ばれるが、今川義元の養女である。今川家の人質になっていた時代に結婚し、信康と亀姫の二子を産んでいる。桶狭間の戦いで今川と決別して別れ別れとなったが、家康が信長と同盟を結んだことで、実の父である今川親永は自害している。その後人質交換で家康に引き取られるが、岡崎城には入れず、寺で幽閉生活をしている。家康との間に生まれた信康は信長の長女徳姫と結婚して３年目にようやく岡崎城に入るが、家康は浜松に移った。これから１０年、徳姫は女の子ばかり産んだので、色々口出しをして武田家所縁の女性を側室に迎える。この人間関係から、武田と内通したとされ、息子の信康は自害、築山殿も殺された。　悪質で嫉妬深きとするのは江戸期の記録で、今川との関係を断ち切りたい徳川家の意向で、悪女にされたのかも知れない。　家康はこの女性が高貴であったのに対する反発か、側室になるのは身分の低い女。そこらの百姓娘と関係を持つなどした。　こういう女性関係もそれぞれ個性的である。　さて、戦国の美女といえば信長の妹お市の方がナンバーワンであろう。ただ出生ははっきりせず、初めて歴史に登場するのは信長の「娘分」として浅井長政に嫁いで同盟が出来た時である。政略結婚であったが人がうらやむほど仲が良かった。しかし、信長が朝倉を攻め、浅井は朝倉に協力、姉川の戦いで敗れると、居城であった小谷城も落ち、長政は父の久政と共に自害する。天正１１（１５８３）年、結婚から６年目である。長男は殺され、次男は出家、お市と３人の娘は救われて残る。これが浅井三姉妹である。

  2016.05.13

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• 春日局：その１「鳴かぬなら」

  「さて、今回からは大奥を作った春日局の正体に迫ってみよう」「正体ってあるんですか」「別に」「何だ、そりゃ」　　　春日局　　１：鳴かぬなら　　鳴かぬなら殺してしまえほととぎす　　　織田信長　　鳴かぬなら鳴かせてみしょうほととぎす　豊臣秀吉　　鳴かぬなら鳴くまで待とうほととぎす　　徳川家康　お馴染みの句であるが、もちろん本人が詠んだものではない。講釈師が作ったものか、、実にお見事と言うほかない。それはこの句が、それぞれの人物をよく表しているからである。　信長は兄との確執を越え、元々の家臣がおらず、これらを統率するのに恐怖政治が必要だった。家来の失敗には厳しいが、優しく見せずに許された敵や家来がいるのが面白い。　秀吉は成り上がりの代表で、強い政治を行えば反発をくらう。逆に家臣の者にもへりくだる姿勢を見せて心をつかもうとしたのである。人懐こいふりをして、敵対する者には厳しいというのも二面性を感じさせる。　家康は子供の頃からの人質生活で、信長が名を売った桶狭間では今川義元の軍にいる。今川家が敗れたので三河の城を取り戻すことになるのである。彼は元々の家臣が多いが、そういう生い立ちから信頼を育てなければならぬ。だから慎重な人間になり、負けないように手を打ってから戦いに挑む。負けることが許されないのだ。三方が原で武田信玄軍に負けて逃げた例で反論する人があるが、これはまた事情が違う。負けると分かっていても挑戦しなければならない場面なのである。自分の領地を黙って通したという汚名を恐れたのである。そういうことで、この三人の個性というよりは、そういう人間を作っていたと思われるのが面白い。家来たちとの関係もこれで説明されているかも知れないが、徳川の天下が３００年も続くのは、彼の家来が元々の松平家の家来であり、自分が天下を取るよりは、徳川家を守って甘い汁を吸おうという……そこが織田・豊臣とは違うのではないか。これを描けばまあ面白い小説になると思うのだが、これだけのネタで作品にする力量がないから諦めている。　ところで、この関係が、何となく古代ローマとつながるように感じている。　信長はジュリアス＝シーザーである。制覇の基礎を作りながらブルータスに殺される。そういえばシーザーの回りも、みんな他から来た家来で、人間関係まで似ている。　秀吉はアントニーになる。アントニーはクレオパトラと恋をするいい男らしいので、猿面の秀吉では失礼かも知れないが……とんでもない助平と考えればつながらなくもない。　家康は秀吉亡き後豊臣家を滅ぼして天下統一を達成するが、これがオーグスティヌスである。オーグスティヌスはローマの初代皇帝となる。　英語の月の名で、シーザーが７月（ジュライアス）、オーグスティヌスが８月に入っている。それで月がずれたと言う英語教師がいたが、ローマの暦は３月から始まったのである。※「鳴かぬなら」の句は他に次のものが有名。　　鳴かぬなら私が鳴きましょホトトギス　江戸家猫八（二代）　　なかぬなら新宿からは中央線　（そりゃ中野だよ）　林家木久翁（木久蔵時代）

  2016.05.12

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• 大統領がヒロシマへ

  「話題になっているのが現職大統領がヒロシマへ行くかも知れないということ」「なぜ話題なんですか」「教育の問題だとわしも分かった」「へ」「わしは学校で原爆の悲惨さ、非人道的だということを教わった」「はい」「広島や長崎へ行ってもそういう資料を見せられている」「そうですね」「わしゃ社会科の教師に被爆者がいたから、余計にそういうことになったのかも知れない」「はあ」「それで、ニューヨークで原爆展をやった時、アメリカ人の反応は批判的だった」「どうだったんです」「原爆の被害という、被害者的な部分ばかりを強調した、偏りの強い展覧会だったと」「ほう」「続いて、戦後50年だったか、原爆を落とした人が飛行機からおもちゃの原爆を落とすショーをやるのに、日本は批判、反対した」「はい」「アメリカでは、正しいことをした英雄のショーだからと決行」「いろいろあるんですね」「それが教育の差かな。戦後すぐに広島に入った米軍兵士だった人は、悲惨な状況を見ているが、これで世界を救ったのだという確信をしたと言っている」「ほう」「アメリカはそのまま戦争を続けることの様々な問題を回避した。日本は徹底抗戦で滅びるのを、降伏するよう促すということで、日米両方を救ったのだ」「そういう教育をしているんですねえ」「そこから考えると、大統領がヒロシマへ行くのは何が目的なんだ、ということになる」「だから今まで来なかったんですねえ」「それで、今回も絶対反対というのはアメリカ人の４分の１。謝罪しなければいいというのが４分の１」「残りは」「核廃絶ということのための訪問だと理解を示すのが４分の１．残りは、これをきっかけに謝罪を促せるのではという……」「え……謝罪するなというのと同数ですか」「違う。謝罪するのは日本じゃ」「へえ」「卑怯な真珠湾攻撃に対して、日本の首相が正式に謝罪するチャンスになるという声。一方、その大半は、過激な首相だからないだろうと半ば諦めている」「ほう」「真珠湾がアメリカにとっては、一番ひどいこと」「ですね」「まあ、実際にはアメリカが暗号を解読して、全滅させられてもいい船を残し、これを犠牲にして反日精神を高めたという話もある」「ほう」「それから、その前に日本の船は沈められているが、それはなかったことにして、日本が非道な先制攻撃をしたという話もある」「いろいろね」「ついでに、３発目の原爆は京都を狙っていた。この実験目的は、空襲を一切せずに取っておいた町を１発の爆弾でどれだけ被害を出せるか」「すごいね」「２０００年にアメリカで発表されて、騒ぎになった。戦後の日本は京都が古い町だから、アメリカは残してくれたと勝手に思いお礼を言った。アメリカがこれを利用していた。今でも空爆しないでくれてありがとうという碑が残っているな」「はい」「まあ、そういうこと。ヒロシマでは大久野島で日本がやっていた毒ガス実験も見学してほしいね。ウサギを実験に使い、働いている人も何をしているのか分からなかったので、病気になった人も多い。アメリカは、自分たちも実験して実用化を目指していたので、この施設はなかったことにした」「へえ」「中国などで実際に使っているから、確かに原爆で被害者のような顔をするのは間違っている」「でも……」「それを認め合って、そういう兵器をなくすようにしていくのがこれからの我々の使命なのじゃろうな」「大家さんに似合わないまともなセリフでおしまい」

  2016.05.11

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• またオリンピックの無駄遣い

  「オリンピック招致について２億円も払っていたという」「すごいですね」「それは招致委員の弟の関連会社らしい」「へえ」「日本では誘致のためのコンサルタント会社への正当な支払いだという」「そもそもコンサルタントに２億円もかかるって……」「そんなにかかるんなら誰が五輪に賛成するじゃろうなあ」「本当ですね」「そもそも最初から国民の１７％しか自国開催を望んでいなかった」「はあ」「次のオリンピックでそこそこのメダルを取って盛り上がったところで日本で開催しようとしたので、今度は賛成を増やすことに成功」「それで誘致に成功したんですね」「それが、実は別にコンサルタントがいて、それだけの報酬を出していた」「ううん、必要なんでしょうか」「イギリスの報道では、コンサルタントと称して、１万ドル、２万ドルも取るような輩がいるということじゃ」「へえ……え……」「１万ドル、２万ドル、つまり百万円単位じゃな」「じゃあ、億って単位は」「どう考えてもおかしな数字」「はい」「それに対して、調査しますという言葉がどこからも出ないのは不思議」「はい」「国も都も五輪の委員からも、調べもしないで適切なもので、不正とは関係ないと言い切る」「おかしいですね」「そもそも、問題の委員の弟は、誘致詐欺などで指名手配中。その関連会社がコンサルタントで、日本と相談していること自体がどうかしていると思うが、国も都も委員も問題ないときっぱり言えるのはなぜか」「おかしいですね」「都知事の問題はその逆」「は」「ホテルで１月２日に１８０人の会議をやったという領収書について、家族旅行だったのではないかと指摘された」「はい」「それを調べさせている。徹夜で作業させているので見守ってほしい、と言うのじゃ」「同情してくれってことですか」「本人が行ったかどうかの問題じゃろう。何を調べさせるのか」「何でしょうね」「誰を犯人にするかということじゃろう」「また秘書のせいですか」「そうなるのじゃろうな」「ということで、問題はまだまだ」

  2016.05.10

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• 連休終わって

  「大家さん、暇そうだね」「連休少しサボったから勉強じゃ」「いつもサボっているようなもんじゃないですか」「まあ、そう言うな。お前は連休はどうだった」「ええ、アパートの二階の小母さんがバーベキューに誘ってくれましてね」「ほう、そりゃ良かったな。わしにも声を掛けてくれればよかったのに」「でも、酒癖悪くてみんな嫌ってますからねえ」「しょうがないなあ」「自分で言うな」「何でバーベキューになったんだ」「それがねえ、いい天気で、こういう時はどっか出かけたいですねえって冗談を言ったら、本気にされて」「お前は運がいいなあ」「ちょうど連休で金を使って無くなったところでして」「計画性がないからなあ」「へえ。それにお嬢さんが可愛くって」「ほう。母親の小母さんに似ているのか」「いいえ、小母さんは……ねえ、その……バケベソって奴で」「じゃあ隔世遺伝か」「お婆さんも皴くちゃで汚い」「そりゃ年をとったからじゃろう……じゃあ、父親似なのか」「いえ……ここだけの話、亭主の浮気相手が産んだんじゃないかって」「へえ……相手は分かっているのか」「あの公園にいる三毛猫じゃないかって」「わけの分からない話だな」「そのお嬢さんが肉を切って焼いてくれると、もううれしくて」「しょうがないね」「ああ、大家さん本の方に向いちゃった。何の本です」「諺辞典」「へえ……せっかくだから私にも勉強させてください」「うるさい奴だ。じゃあ諺の前半を言うから、続きを答えろ」「分かりました。こう見えても諺は沢山知ってますから」「本当か……第一問じゃ。二階から……」「バーベキュー」「何じゃそりゃ」「さっき話したでしょう。二階の小母さんに誘われて……」「あ……じゃあ、第二問。冗談から……」「バーベキュー」「何じゃ」「言ったでしょう。冗談を言ったらバーベキューになったって」「あ……金の切れ目が」「バーベキュー」「なぜそうなる」「だから連休でお金を使いすぎたところへちょうど……」「女三人寄れば……」「バーベキュー……婆さんと小母さんとお嬢さんで」「肉を切らせて……」「バーベキュー……お嬢さんに肉を切らせて」「可愛い子には……」「バーベキュー……お嬢さんが本当に可愛くって」「肩の荷が……」「バーベキュー……私が荷物を持って行きました」「雨降って……」「バーベキュー……途中で降り出して中止になりました」「嵐の前の……」「バーベキュー……翌日すごかったですね」「もうお帰り」

  2016.05.09

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• 決闘！巌流島：６「小次郎の年齢」

  「巌流島の決闘について見てきたが、今回で最終回と致します」　　　決闘！巌流島　　６：小次郎の年齢　以上見て来たように、宮本武蔵は巌流島の決闘の時には２９歳であったとする。佐々木小次郎の年齢が書かれているのは『二天記』だけで１８歳となっている。それなら１５９５年の生まれということになる。　ところが、既に記した通り、小次郎の師匠である富田勢源は永禄３（１５６０）年に死んでいるのである。小次郎が勢源について美濃へ行っており、師の名代として登城しているのであるから、まさか子供ではあるまい。また、その時の名代についても後で作られたフィクションかも知れない。しかし、勢源がこの年に死んだのは間違いのないことである。その時に弟子だったというのだ。１７、８歳としてもそれから５２年が経っている。つまり、巌流島の佐々木小次郎が、勢源の門人であるとすれば、６０歳くらい、還暦前後の年齢だったということである。　この戦い、武蔵が遅れて来たという。前回示した通り、先回りして待ち伏せしたという記述もある。遅刻して相手をじらすのであれば姑息な手段であり、老成していた小次郎なら問題にしなかったであろう。逆に、小次郎が門人を引き連れており、師匠が討たれた時に敵を討とうというのを恐れて潮の満ち干の時間を調性したというのは、いかにも後で作った言い訳で、作家の創作である。　「小次郎破れたり」の台詞もあまりにも臭い。鞘を捨てるのは刀を納める気がないからだととがめるのは、いかにも子供で、若い武蔵が老練の相手に何とか動揺させたいという意識の働きだとすると、やはり姑息である。これで動揺させるには、小次郎を若くするしかないのだ。老練の小次郎が動揺する訳もないし、そもそも長い鞘を背負ったまま戦う方がおかしい。邪魔にならぬよう捨てておくのだ。足を取られぬよう海面に投げたのだろう。　一つ意味があるとすれば、余計な問答を仕掛けて、木剣が長いことを悟らせないで戦いに入る目的だったかも知れない。物干し竿に対抗して舟の魯を削って長い木剣を作ったが、その瞬間まで先を海に浸して隠していたのである。　戦いの様子はどれが本当だか分からないが、小次郎は武蔵の額を斬っている。もう一つ、膝の上を斬ったという記述が見られるのだ。『武公記』では、後で一太刀浴びせて着物だけを斬ったように記されているが、武蔵は足にも傷を受けたというものもある。つまり、小次郎は額と足に２度斬り付けたがわずかに浅く、祖の間に武蔵の長い木剣が小次郎を倒したということ。　剣術はヤッと斬り込んで一太刀で勝負が決まるということはまずあり得ない。互いに血みどろになって勝負が付くのが普通である。一太刀目を同時に打ち込んで、二太刀目の早いのが勝負を決するとしたら……師の小太刀は、臨機応変という点では有利に働くだろう。それなのになぜ小次郎は長剣を使うのか。二太刀目の速さだったのであろう。これがつまり「燕返し」という技ではないか。その応用を試したのではあるまいか。柳生の剣に「虎返し」というのがあり、「燕返し」はその応用だという説もあるが、これはよく分からない。

  2016.05.08

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• 決闘！巌流島：５「巌流島の決闘」

  「さあ、いよいよ巌流島の決闘。さて、どのような戦いだったのか」　　　決闘！巌流島　　５：巌流島の決闘　巌流島の決闘であるが、慶長１７（１６１２）年４月１３日という説をとって決闘の日という記念日になっている。一番早いのは慶長６年で、宮本武蔵は最も若い説で１８歳である。これはいくら何でも……ということで遅い方の説を取るのである。宮本武蔵は２９歳、一番脂ののった時期である。　『小倉碑文』では、岩流という者が武蔵に勝負を挑み、武蔵は相手は真剣でよいが自分は木剣を使うと言って、舟嶋で勝負、一撃で相手を倒し、島が岩流嶋と呼ばれるようになったとする。　『沼田家記』では、小次郎が豊前の師範であったが、武蔵が二刀流の師範になって、門人たちが喧嘩をして二人の決闘になった。武蔵が勝ったのだが、二人きりで勝負する約束なのに、武蔵は門人を隠しておき、息を吹き返した小次郎をみんなで打ち殺した。　『西遊雑記』では、岩龍が舟島へ行こうとすると、浦の者が、武蔵が大勢の家来を連れて渡ったので一人ではかなわないと止めたが、岩龍は聞かず、武蔵は弟子４人と共に岩龍を倒した。浦の者が心意気に感じ入り、岩龍島と呼ぶようになった。　『武公記』では、厳流小次郎は、富田勢源の家人で、１８歳で厳流と号し、細川忠興に気に入られる。慶長１７年に武蔵が勝負を願い出、わざと遅刻して「小次郎破れたり。鞘を捨てるとは」という名文句を言って勝負。武蔵の鉢巻が切れ、武蔵は木刀で討たれる相討ちだった。倒れていた小次郎が武蔵の膝上を切ったが着物だけで、武蔵の木刀が小次郎の脇を打って骨を折る。気絶した小次郎の口や鼻を覆って殺した。　これが様々な書物に引用され、書き換えられていったが、相手の年齢について書かれているのは武蔵の二天一流師範という豊田景英の『二天記』で、ここには富田勢源の弟子で、独立して厳流を創始し、細川忠興が登用して豊前の師範となった「厳流小次郎」、俗に「佐々木小次郎」、１８歳としてある。武蔵は２９歳としているから、最初にとった説と一致する。　ここでは武蔵は１対１で戦ったということで、遅刻も先の台詞も登場する。　これが唯一相手の年齢を記したもので、これまでここで説明した経歴とも一致している。明治時代、熊本で宮本武蔵遺蹟顕彰会が編纂した『宮本武蔵』という本が出て、そこでは『二天記』がそのまま使われている。これが現在の全ての基本テキストである。　さて、これも歌舞伎からの影響があって、歌舞伎では「敵討巌流島」として月本武蔵之助と佐々木厳流という名になっている。佐々木厳流は『西遊雑記』の岩龍があるが、佐々木という姓は『二天記』とこれだけ。そうなると、門人共５人掛かりよりも、１対１がよく、より古い資料ということで『二天記』が採用されたと思われる。　そういうことで、前回説明したものも含め、江戸時代には様々な伝説が生まれるほど宮本武蔵の人気は高まっていたということであろう。そうなった理由はやはり『五輪書』であろう。門人のみに伝える心構えなど、きちんとした書物で剣術のことを記したことで、後の武士たちの手本となったのである。

  2016.05.07

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• 決闘！巌流島：４「宮本武蔵」

  「さあ、今日は宮本武蔵について」　　　決闘！巌流島　　４：宮本武蔵　宮本武蔵は晩年に『五輪書』を記している。これは寛永２０（１６４３）年から正保２（１６４５）年にかけて書かれたものである。兵法書とされるが、生い立ちから流儀を二天一流と名付けたことなども記している。冒頭に「歳つもりて六十」とあるので、単純計算して天正１２（１５８４）年の生まれとする説で説明していく。養子となった伊織の子孫がまとめた系図では１０年の生まれとなっている。　ここには「生国播磨（兵庫県南西部）」とあるが、江戸後期の『東作誌』に美作国（岡山県北東部）宮本村とあるのが面白いというので、小説などで使われて有名になった。　『五輪書』では２１歳の頃に京都で様々な兵法者と戦い、６０戦以上全て勝利したとある。慶長９（１６０４）年になる。有名な吉岡一門との戦いはこの頃であろう。　養子の庵が記した『小倉碑文』によれば、武蔵の養父の新免無二が足利義昭の招きで吉岡家と対決し、勝利を得たため、その恨みから吉岡家が武蔵を狙った。まず吉岡清十郎を木刀で打ち破り、清十郎はその後出家する。継いで伝七郎と戦い、五尺の木刀を奪って倒し、伝七郎は死亡した。門弟らがその敵討ちと亦七郎との対決を申し出るが、数百人で待ち伏せした。武蔵は事前にそれを知るが、弟子たちに待っているように命じて一人で全部打ち破った……どうも物語めいて作り話どころか、講釈である。　福住道祐の『吉岡伝』では、松平忠直の家臣で武蔵が現れ、一戦目は吉岡直綱と立ち合い、武蔵が出血したので直綱の勝利か引き分けかと議論が分かれ、直綱が再試合を望むが武蔵が拒否、続く直実との試合は武蔵が逃げちゃった。二刀流で名高い武者と紹介され、二刀流で試合に臨むところから信用できないが、アンチ武蔵には人気の文献。　武蔵人気から、この戦いは武蔵の負けではなく引き分けとされるようになった。　まあその他色々あるが、『小倉碑文』のアレンジが主流で、それに巷説を加えたものが多い。武蔵は立ち合いに遅刻するのが常であるが、清十郎、伝七郎戦にも遅刻したという。それではすまないと、最後の集団戦では先に待ち受けて相手が来たところで倒したという。卑怯なことに、武士のたしなみである試合前の挨拶もしなかった。　これは相手が数百人を用意したからだという弁護が一般化するが、武蔵も弟子を十数人（数十人）連れていたという。武蔵をかばって負傷した者もいたとするものもある。　二刀流になったのも色々伝説がある。　祭り太鼓のばちから思い付いた、攻撃と防御に用いた。多くの敵と戦うのに二刀を使う効果を発見した……１本の刀でも振り回すのは大変である。戦国時代の兵士は刀を肩に担いで走っている。重いからである。二本を使うのはよほどの力であり、それで次々人を斬るのは無理であろう。一対一でもどれだけの効果があるのか分からない。武蔵がもともと片手で振り回す力量があったという説も後付であろう。　武士が二本差すのは、この武蔵を真似たのが始まり。巌流島の戦いから木剣を工夫し、これが木刀として世間に広まった……楽しい伝説が幾つもある。

  2016.05.06

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• 決闘！巌流島：３「細川家指南役」

  「さあ、いよいよ巌流島での戦いに入ろうぞ」　　　決闘！巌流島　　３：細川家指南役　佐々木小次郎が宮本武蔵と巌流島で戦ったのは慶長１７（１６１２）年４月１３日である。これは記念日になっているもので、早いものは１１年も前、日付も１２日であったり２１日であったり、色々である。対戦相手も、ただ厳流とか佐々木厳流とか、全く別人だったりする。まあ、ここでは武蔵と小次郎が戦ったということでまとめておく。巌流島は関門海峡にある島で、下関市彦島江の浦の沖２５０メートル、正式名は今も昔も船島である。面積は１万７千平方メートル、明治以降に埋め立てられ１０万平方メートルを超えている。決闘の時代には九州に属していた。小次郎は物干し竿と呼ばれる長剣を使ったが、師の中条流が小太刀であるため、厳流を名乗った。その名が島に残ったのである。小次郎は当時小倉３９万９千石の城主、細川家の指南役であった。巌流島もその領地である。細川家は後に熊本に移り５４万石となった。先に細川家の話をしておくと、細川忠利が武芸に熱心で……これは戦国大名は誰でもそうなのだが……小次郎を優遇し、城下に道場も開かせている。それどころか、小次郎の死後、小次郎の弟子が若い者を指南し、新たな人物を召し抱えていないのである。それほど小次郎を愛していたということであろうか。寛永６（１６２９）年頃に二階堂流の松山主水を召し抱える。小次郎亡き後１７年、早い説でも１１年目である。二階堂流というのは中条流から分かれたもので、佐々木小次郎の師の富田勢源が中条流であった。それで興味を持ったのかも知れない。この主水は６年目の寛永１２（１６３５）年、忠利の父である忠興によって暗殺されてしまう。こ暗殺者は庄林十兵衛で、主水のそばにいた小姓に討たれている。暗殺は主水に傍若無人な振る舞いがあって中興を辱めたのが原因ともいわれるが、元々親子の確執が原因ともいわれる。　『撃剣叢談』によれば、主水の剣を最も受け継いだのが忠利と家臣の村上吉之丞の二人だったという。山にとてつもない動きをする浪人者が現れたと話題になり、興味を持った吉之丞が試合を申し込むと、相手は返事を保留しておいて吉之丞の素性を調べ、これはかなわないと逃げてしまった。これが宮本武蔵だったという。　忠利がこの武蔵を熊本に招いたのは寛永１７（１６４０）年、翌年忠利が亡くなると、跡を継いだ光尚にも仕えた。正保２（１６４５）年に亡くなるまで熊本にいるが、正規の藩士となったのではなく客分である。それでも３００石が贈られ、多くの弟子が集まったとされるので、事実上の師範代であった。　小次郎の後釜に入ったのが面白い。もっとも、村上吉之丞との逸話は、注目され、召し抱えてもらうきっかけのためのデモンストレーションである。　尚、この吉之丞、これだけの腕がありながら、やはり細川家の親子の確執から熊本を離れている。主水を暗殺した庄林十兵衛の一族である庄林隼人は加藤清正に仕えたが、加藤家改易後に細川家に召し抱えられた。この隼人と最も親しかったのが村上家だというのも面白い。

  2016.05.05

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• 決闘！巌流島：２「物干し竿の誕生」

  「さあ、佐々木小次郎が登場して、いよいよ物干し竿の誕生じゃ」「はい」　　　決闘！巌流島　　２：物干し竿の誕生富田勢源の名代として美濃城主斎藤義龍の元に出た佐々木小次郎、義龍はその若さに驚き、酒肴でもてなした。師の勢源は小太刀の名人であるが、小次郎は普通の刀を差している。勢源に殺された梅津六兵衛の弟子たちは敵討ちを考えなかったのであろうか。下城した小次郎に立ち向かったのは安川田村丸という男であった。手裏剣の名手で、義龍が道三を討った頃からその腕前は評判である。ただ、梅津が刀で正当な武士であるとすれば、手裏剣は飛び道具で卑怯な技とされていた。そういうライバル心があったのかも知れないし、勢源の弟子という小次郎の腕を見たいと思っただけのことかも知れない。　田村丸の腕どころか、その武器も知らぬ小次郎が不利だったが、手裏剣は一撃必殺の技である。その最初の手裏剣が外れたら、自分が斬られる。かわしたのか、外れたのか、小次郎を倒すことは出来なかった。しかし、小次郎も田村丸を斬ることもしなかった。これは偶然の作用によって手裏剣が外れたのであろう。後の講釈などでは、燕が間に入って犠牲になり、小次郎の燕返しのきっかけとなったというが、敏感な鳥が人間が対峙している間に飛び込むこともあるまい。　まあ、そういうことで、田村丸は手裏剣が外れれば自分の負け、一方の小次郎はそういう偶然がなければ命を落としていた……ということで、これから無二の親友になった。　そうなれば、何度もご機嫌伺いに行く斎藤義龍の放っておかない。ぜひ自分の家来になってくれと申し出る。田村丸も喜んで後押しする。しかし、小次郎は独断で返事をする訳には行かない。師の勢源に相談するが、師匠の方は同意しない。ここまで鍛えて来た弟子が、美濃程度の家来では得心が行かぬのも当然である。勢源は、未練の残らぬよう、美濃を離れる決意をした。　小次郎を連れ戻そうと、二人を追って来たのが田村丸である。不意打ちで勢源を倒したが、小次郎が立ち向かった。田村丸の気持ちは分かっても、師を倒されてそのままには出来ないのである。勢源に手裏剣を使った田村丸は、もう必殺技を持っていない。小次郎は一太刀でこれを倒したのである。　さて、小太刀の名手であった勢源の弟子の小次郎がなぜ小太刀ではなく、物干し竿と呼ばれるような長剣を使ったのであろうか。　常識的には長い方が有利である。師の勢源は自らの小太刀の腕を上げるために、小次郎に長剣を取らせた。その応対をマスターすると、更に長い刀を使わせた。勢源に打ち込めば、見事とほめた。そして、それに対応する技を磨くのである。美濃の寺にいた時に、小次郎が長剣を使うのがすでに評判になっていた。　長い剣は腰に差していても抜くのが大変である。小次郎は背中に背負うようになった。左肩から右の尻の方へ背負い、体をひねって抜くのである。右肩に柄があっては刀は抜けない。時代劇を見ると、チャンバラごっこの経験がないのか、右肩に刀を差している忍者などが登場する。腰の剣でさえ、体のひねりがなければ抜けない。

  2016.05.04

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• 決闘！巌流島：その１「富田勢源」

  「昔から何でも疑問に思うと調べるのが趣味で」「変な人ですからねえ」「お前の考え方の方が不思議だ。疑問を解明するために、脳波を取らせてくれ」「いいですが……脳波ってどうやって取るんです」「頭を二つに割って」「お断りします」「さて、その調べた一つについて、今日からシリーズで」　　　決闘！巌流島　　１：富田勢源　富田五郎右衛門は、越前の国朝倉家の家臣で中条流小太刀の名手であった。目を患って弟に家督を譲り、出家して勢源と名乗った。永禄２（１５５９）年のことである。　翌年の６月、美濃の国主、斎藤義龍は、勢源が美濃へ来ていることを知った。　この義龍については説明を要すまい。美濃の蝮と呼ばれた斎藤道三の息子である。が、母は土岐頼芸の妾であった女性で、小説『国盗り物語』では美芳野と呼んでいる。道三は美濃の国盗りに当たって、後を継ぐのはこの女性が生んだ子であるから頼芸の子であり、自分が乗っ取るのではないという形を取った。成長した義龍は、自分が道三の実子ではないことを知ってこれを滅ぼす。弘治２（１５５６）年のことである。隣国尾張の国主は織田信長で、これは道三の娘である濃姫（これも美濃の姫というニックネーム）を嫁にしていて、道三の弔い合戦という大義名分で攻撃を仕掛けてくる。義龍は足利幕府に取り入って正式の大名となり、近江の六角と同盟を結んだ。それで信長は攻めあぐねるのである。　永禄２年といえば、とりあえず信長の侵攻も進まず、少し落ち着いた時期である。義龍は翌年５月３４歳という若さで亡くなり、龍興が継ぐ。これを期にまたしても信長が攻め込むが撃破され、信長は周辺から押さえて行く作戦に切り替え、永禄１０（１５６７）年、ようやく稲葉山城を落として美濃を乗っ取る。龍興はわずか２０歳で国を失い、結局二度と大名に返り咲くことなく、２６歳で死ぬ。　戦国時代の歴史からいえば、富田勢源が美濃へ来た直前、５月に今川義元を桶狭間で破って力を見せた信長が、この美濃を奪うことで地元を安定させ、天下統一の足掛かりとすることになる。道三の死から１１年掛かりでの侵略成功ということである。　さて、話を戻そう。武芸愛好家であった斎藤義龍の師は梅津六兵衛という神道流の達人である。この六兵衛が勢源が来ているという噂を聞きつけ、ぜひ手合わせをしてみたいと思い、寺にいることを知って使いの者を出した。ところが、勢源は承知しない。何度か願い、遂には卑怯者呼ばわりしても駄目である。これを耳にした義龍が、ぜひ腕前を見たいということで使いを出すと、とうとう勢源も承知した。　試合は７月２３日である。当時のしきたりで、御前試合というものはない。義龍が見に来れば、六兵衛が発奮するか、逆に余計な力が入るか、実力のままの試合とはならないのである。そこで、立ち合い人だけが試合を見守った。　六兵衛は三尺四寸というから１１０センチ余り、勢源は一尺余り、４０センチ足らずの木剣を手にした。勝負は一瞬であった。六兵衛は額を割られて息絶えた。　話を聞いた義龍がぜひ会いたいと申し出るが、遺恨を持つ者がいるかも知れないというので勢源は登城しない。そこで旧主である朝倉家を間に入れて申し入れ、もう断り切れない。勢源は弟子を名代として城に送った。この者を勢源本人と考えて良いという紹介付である。だから、六兵衛の敵を狙おうとする者からは、この弟子を斬れば敵を討ったも同然ということになる。この弟子の名を佐々木小次郎という。

  2016.05.03

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• トランプ氏の要求

  「トランプ氏が米軍基地を置いた国が全ての予算を持つべきだとほざいている」「言ってますねえ」「日本から米軍が撤退したら、日本で防衛しなければならないから、憲法９条を書き換えるチャンスと歓迎する大臣の発言はおいといて……」「は」「アメリカ軍にとっては日本の基地が中国や北朝鮮への拠点になるから重要なポイントとなっている」「だから撤退はないでしょうね」「さて、全額日本が負担しろということだが、花札氏は……」「花札じゃない」「３０年近く前からその主張をしているから、大統領になっても言い続けるかも」「大変ですね」「でも、全額負担するのもいいかもなあ」「いいんですか」「その代わり、休暇の手当、緊急の病院その他、その他全部やっている思いやり予算を無くすのじゃ」「ほう……どうなります」「駐留米軍のために日本が出している割合は世界一」「韓国その他よりずっと割合が高いって言ってましたね」「実際には６３５０億円のうち日本が４７００億円を負担」「全額となると、後１６５０億円追加ですか」「さっき行った思いやり予算が１９２２億円」「あれ……」「ということは、思いやり予算を無くせば、全額負担しても問題ない」「変なの」「変なことでした」

  2016.05.02

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• 北朝鮮

  「北朝鮮が党大会を行ったニュースの不思議」「何かおかしいですか」「核実験の成功と、世界平和への抑止力になるという発表があった」「はい」「それに対して韓国やアメリカがとても受け入れられないとコメント」「ありました」「日本はどうなっているのじゃ」「え……ああ……」「いつも後からじゃろう。何かあるのかなあ」「ありますかねえ」「ミサイル発射も、韓国が発表、アメリカが発表。日本は知らん顔」「知らん顔でもないでしょう」「そのくせ、実は発射されているのは分かっていたという」「ああ、ありましたね」「見ていれば分かるが、日本は他国を監視していないので韓国などの発表を待ってから気付いたということにしている」「はい」「それで後から、ミサイルを攻撃できる準備をしていたと発表」「ずっと黙っていればいいのに……」「実はちゃんと見ていたというのを、機密漏洩に当たるのではないかと野党が追求」「そうですね」「機密漏洩でなければ、北朝鮮監視が行えるということで、今度は日本の立場に問題が」「戦争をやりたい党が今主導権を握っているということですか」「ところが、ミサイル発射は世界が知っているので、機密漏洩には当たらないという答弁だった」「あれ」「そう。問題のすり替え。どうも平和を装っているように思えてならない」「さて、日本が何を発表するか待ってましょう」

  2016.05.01

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• おしどりの答え

  「ということで、正解は次の通り。問題１　　○○○●●●　　　　○●●●○○　　　　○●●　　○●○　　　　　　●○●○●○問題２の４個　　○○○○●●●●　　○　　○●●●●○○　　○●●○　　●●○○　　○●●○●○●　　○　　　　●○●○●○●○　　５個　　○○○○○●●●●●　　○　　○○●●●●●○○　　○●●○○●●　　●○○　　○●●○　　●○●●○○　　○●●○●○●○●　　○　　　　●○●○●○●○●○　６個、７個……にもぜひ挑戦してみてね。実は交互に並んでいるものからやった方が解答が見つけやすい。問題３：２個ずつのものは普通なら出来ないので、発想を変える必要がある。どうですか、この答え。　　○○●●　→　○○　　　→　○　　　　　　　　　●●　　　　　●　　　　　　　　　　　　　　　　○　　　　　　　　　　　　　　　　●

  2016.04.30

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• おしどり

  「パズル研究のまとめじゃ」　中根彦循の著書『勘者御伽双紙』(1743年)にあって「おしどり遊び」と呼ばれている問題。その後、アメリカの大パズル作家、サム・ロイド（1841～1911）が４個のものを出題しています。問題１：白黒の碁石が三つずつならんでいまず。これを隣り合った２個を同時に動かして、交互に並ぶようにして下さい。動かした場所は空白となります。隣り合った２個を放して止めたり、途中で回転させてはいけません。（白黒は完成図が逆でもかまいません）　　○○○●●●　　→　　○●○●○●　例としてやってみよう。　　○○○●●●　　○○　　●●○●　　○○●●　　○●　　○　　●○●○●　これで交互に並んだが、間に空白が残ったので失敗です。問題２：実はこの問題、３個ずつなら３手で、４個ずつなら４手で出来ます。４個、５個もやってみて下さい。そこまで出来ると、動かし方のパターンが出来ると思います。問題３：同じ理屈で、１個ずつなら１手……って、０手で出来ていますがね。２個ずつなら２手で出来るはず……挑戦して下さい。「答えは明日付」

  2016.04.29

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• ついでにもう一つ

  「昨年は巨人の試合は３つしか見ていない」「年間２００試合は見ていますがねえ」「その中での好プレー」「はあ」「平凡なフライを外国人選手が落球。ランナーが進塁してホームインしたが……腹監督が抗議した。何を抗議したのじゃろう」「何でしょう」「まず、インフィールドフライになったから、打者はアウト。抗議ではなく、それを確認していると解説者が言っていたが、それなら一言二言ですむはず」「違いますね」「インフィールドフライだからランナーが進んではいけないと抗議した」「それじゃあルールを知らないんですね」「後何がある」「さあね」「ルールがどうなっているかという以前に、フライを普通に取っておけば終わりなのに、それを問題にしないのがおかしい」「チームの問題ですね」「とにかく守備は下手じゃなあ。パ・リーグで下手の代表だった選手が巨人に入ったら名手と呼ばれていた」「ははは」「もう一試合は外野へのフライ、何でもないのをポロリ。ナイターで太陽が目に入ったそうじゃ」「はあ」「もう一試合はファールをポロリしていたが、記録に残るエラーがない。何のために巨人戦を見るのか分からないなあ」「ははああ」「今年は相手が見事なプレーでアウトにした後、何でもないフライを落として１点。同じ選手がまたポロリして２点目。わしが見たのはこれだけ」「ひどいプレーでした」「まず判断力がない。ボールが落ちる位置まで移動するのが極めて遅いから、他のチームなら取れるかも知れないというボールが普通のヒットになる。パ・リーグなら敵のヒットは３本は減るぞ」「はい」「ま、そんなことで、野球については一旦おやすみ」

  2016.04.28

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• 巨人の歴史的プレー

  「巨人戦はほとんど見ないのに、忘れられないプレーが幾つかある」「はい」１：巨人の攻撃、一塁にランナーがいて、打者が打った。一塁ランナーはヒットか取られるかとハーフウェイで待っていたが、打者は全力疾走で、ランナーを追い越してアウト。２：巨人の守備、内野手がトンネル、外野手がグラブではじいて、これを３塁に投げたら冒頭で、打者がホームイン。３：巨人の守備。無死満塁でスクイズに来た。高く上がった打球は投手の頭を超える。ランナーはもちろん投げた瞬間に走っているから、次の塁まで行っている。投手は見事にダイビングキャッチ。セカンドに投げて、ベースを踏んでツーアウト、一塁からの走者にタッチしてスリーアウト。４：巨人の守備。無死満塁でサイドゴロに打ち取った。三塁手はボールを取ってベースを踏んでワンアウト。バックホームしてキャッチャーがホームベースを踏んでツーアウト、一塁に投げると打者走者はまだ届いていないのでスリーアウト。「３番４番が見事なプレーと思った人は残念でした」「え……トリプルプレー成立じゃないんですか」「まず３。打って高く上がったらインフィールドフライだろうが、バントの場合はインプレー。従って見事にキャッチした投手はファインプレーじゃな」「ああ、じゃあ、セカンドだ。分かった、ベースを踏んでアウトにしたから進塁権が残って、一塁からのランナーはセーフですか」「よく思いついたな。残念。フライはタッチアップでなければならないんだから、ベースを踏んで二塁の走者はアウト、一塁の走者は戻らなければならないから、タッチされてアウト。トリプルプレー成立じゃ」「ああ、見事な守備ってんで印象に残ったんですか」「違う。さっき言っただろう、見事なプレーと思った人は残念でしたって」「あれ……じゃあ、どういうことです」「ランナーは全員次の塁に進んだから、セカンドの選手が二人アウトにした」「はい」「もう一人ランナーがいるじゃろう」「え……ああ、三塁にもいますね」「彼はどうなる」「ああ……なるほど。もうホームに入っているから１点入るんだ」「正解」「いや、ちょっと待って下さい。タッチアップでなければならないんだから三塁に投げればアウトですね」「そう。それを忘れて一二塁の走者でアウトにしたのがミスじゃ」「でもセカンドで二人アウトにしたんだから……これから三塁に投げるのはおかしいでしょう」「大丈夫。アピールプレーってのがあって、三塁走者をアウトにって審判に申し出れば点は入らない。それを怠ってベンチに戻ったから、その後抗議をしても手遅れ」「へえ」「４はどうじゃ」「これは分かりました。三塁を踏んでアウトにしたから、三塁走者は戻ることも出来るんですね」「そう。だからホームでは走ってきた三塁走者にタッチしなければならないのに、ホームベースを踏んで一塁へ送球してしまった。一塁はアウトになったが、ホームはノーカウント。奏者が駆け込んでホームイン」「へえ」「この中で、巨人が二回もやったプレーがある」「へえ」「正解はこの４番。一回目は選手がトリプルプレーだって喜んでいたら、二塁の奏者が三塁を蹴ってホームへ向かう。捕手はベンチに向かっていたので、投手が慌ててホームに入ってタッチアウトにできたからまだいい」「安心してみんな帰ったら２点目でした」「もう一回は一塁手が気付いていたらしく、あわててバックホームしたな。二塁ランナーは自重した」「へえ」「わしのような素人でも『ア、バカ』って言ったのに、アナウンサーが『すごい、トリプルプレーです』って言ったのが笑えた」「プロとしてはルールをしっかり叩き込んでおきたいですよね」「叩き込まなくってもパッと気づくのにねえ」

  2016.04.27

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• セ・リーグも面白いぞ

  「野球はパ・リーグばっかり見ていましたね」「球場に行ってのファン・サービス、プレーの面白さ、やっぱりパの方が面白い」「はい、でもタイトルが……」「そう。最近ちょっと入れてみると、広島だけは面白い」「そうですか」「守備がうまいね。いい動きをしているし、いい位置にいてファインプレーに見えないファインプレーが多い」「首位に立ちましたね」「テレビでは巨人の強さの秘密って……トイレがいまだに和式で、足腰を鍛えることが出来るのが素晴らしいって……」「トイレだけで決まるんですか」「わしゃ大の方は１日１回じゃから……和式でも鍛えられるかどうか……」「変な話に行っちゃいそう」「それなのに、ほとんど巨人を見ないわしが見ただけで３つのエラー。ファールを落とすとか、目に見えないエラーも幾つか」「守備は昔から下手ですよね」「監督がいいと言っているテレビ局もあったな……選手から見るとやっぱり一つ抜きん出た監督じゃから」「あれ……去年まで同僚だったでしょう」「しかし、ほかの選手から見るとやはり監督になるだけの風格を持った選手だった」「へえ……どうして分かります」「ほら、一軍で試合の勝敗を掛けていた……あれも処分がないのはおかしいが、負けても高額配当があるのは巨人だけじゃな」「蒸し返さないの」「その中で、今の監督は参加していなかったという」「はあ」「一軍の多い時は２２人が参加していたとか。ほとんどの試合で行われていたのに、監督になった人だけは全く知らなかったのじゃぞ。なぜじゃ」「え……分かりません」「答えは二つ。他の選手から相手にされないから声もかけられないか、近寄りがたいという印象で博打に巻き込むのをためらったかじゃないか」「ああ……じゃあ、後者ですね」「そうじゃろう。そういう選手からも一目おかれた選手が監督になったので、その支配力がすばらしいのじゃな」「へえ」「次回は巨人の面白プレーについて」

  2016.04.26

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• 17日付・帽子のパズルの答え

  「簡単なので答えは省略のつもりだったが、質問が来たので」「はい。　赤い帽子が２つと白い帽子が３つある。３人が一つずつかぶるが、自分の帽子の色は分からない。ほかの二人の帽子を見て、自分の帽子の色は分かるか。　という問題でした」「これはどんな場合でも分かる。　まず赤い帽子が二つ見えたら、自分は白い帽子だと分かる。その人が分かったと答えた場合、他の二人は自分も赤い帽子だと分かる」「はあ」「赤と白が見えたら、白い帽子の人に注目する。自分も赤ならその人がすぐに分かったと答えるはず。そうでなければ自分が白い帽子だと分かる。さっきと同じ理屈で、３人とも答えが出る」「ひい」「白二つが見えたら、さっきの理屈で誰かが答えを出す。出ないということは自分も白と分かる」「ふう」「もう一問。　同じように赤い帽子が２つと白い帽子が３つある。３人が一つずつかぶるが、自分の帽子は分からない。一列に並んで、後ろの人は前の二人が見え、中の人は前の人が見えるが、前の人は何も分からない。後ろの人から順に自分の帽子が分かるかと尋ねるが、正解できるのは……」「そうでした」「一番前の人はどんな場合でも正解できる。　後ろの人が赤二つ見えたら、自分は白しかない。だから、後ろの人が分かったら、二人とも白」「へえ」「後ろの人が分からない場合、真ん中の人が見て、前の人が赤だったら、赤二つ見えたら後ろの人が分かるはず。分からないのだから自分のは白だと分かる。もし前の人が白なら、自分は赤と白の両方の場合があるので分からない。「ほう」「ということで、一番前の人は、一番後ろの人が分かった場合は白。　後ろの人が分からないで、真ん中の人が分かった場合も白。　二人とも分からないというのは、どんな場合でも赤」「パズルって不思議ですね」「現実の場合、頭の悪い人がいるから、この通りにならないのもおかしい」「ほかの人も賢くないと成り立たないんですね」

  2016.04.25

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• 日本の経済は

  「追加支援をやるだろうといわれていて株が少し上がった」「やりませんでしたね」「途端にとてつもない下落」「どうするんでしょう」「まだやることはあると政府も日銀も言っている。言えば株が上がったのに、今回はダメ」「どうしてでしょう」「総理や副総理が言ってるじゃないか。ヨーロッパ各国の首脳や経済のトップと会談して、ヨーロッパがしっかりしないと日本にまで影響が出るって」「日本はしっかりやってますものねえ」「今日、都内で自民党のポスターを見た」「何でした」「８月半ばに総理が来て公演をやるそうじゃ」「え……いつのです」「去年のをそのままにしているのかなあ」「まさかねえ」「地方創生は東京からってのが笑えたな」「え……」「都会が元気にならないと地方は元気にならない。だから、まず東京を正解一の町にするそうじゃ」「何が世界一です」「さあ……物価かな……」「治安の悪さじゃないでしょうねえ」「とまあ、不思議なポスターでした」

  2016.04.24

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• 熊本震災対応の遅れ

  「東日本大震災は原発の問題が出て対応が遅れ、いまだに解決していない」「原発は危ないって報道されたのは１０日以上経ってからでした」「電力会社が隠していたからな」「一方今回は」「そういう問題がないにも関わらず、どうも対応が遅れているような気がする」「はい」「まず激甚災害に指定したのが１０日も経ってから」「これは前にも話しました」「北海道の補欠選挙があって、そこでアピールするために前日にやりますよって大々的に宣伝した」「はい」「反論はされている」「どうですって」「民主党は東日本で訳も分からずに指定した。自民党はきちんと現地を見てから指定している」「いいんですか」「原発の現場へ行けってことじゃろう。いまだに自民党は原発は絶対に安心安全と言い切っている」「死んだ人は一人もいないんですね」「チェルノブイリでも死んだ人は一人もいないって言っていたな」「福島から非難した子供が他よりも甲状腺の異常が６割も多いというのもありました」「逃げているという不安や緊張から、多くなるので、普通の数字だそうじゃな」「いいんでしょうか」「話がどっか行っちゃったね」「熊本では、まだ余震が続いているから様子を見ているらしいね」「はあ」「東日本でも、一番大きな余震はちょうどひと月後にあったからなあ」「まだ続きますね」「だから政府は様子を見ているそうじゃ」「いいんでしょうか」

  2016.04.23

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• よくわからない

  「テレビＣＭでひどい歌のランキングを作った」「どうでもいいことやってますねえ」「そこで一昨年一位になっていたのが、行くぜ東北という歌」「ありましたねえ」「歌ですらない……すごいなあって思っていたら、昨年はメロディらしきものがついた」「あら、ランキング落ちますね」「昨年のダントツ一位が、パナソニックの歌」「はあ」「女が歌っているが、声は出ないし、もそもそ歌っていて聞いていて不快になる。これも見事じゃ」「そうですか」「そう言ったら、ある方が、あれは声帯を失った人が歌っているので、一生懸命やっているのを買ってほしいというのじゃ」「本当ですか」「よくわからない。まあ、それでもいいが、わしは好きになれない」「はい」「ポトラポイントのアンケートがある」「あれ、話題が変わりますか」「クイズに答えるアンケートがあるが、全問正解すると『あたなはクイズ王』って出る」「あたな、ですか」「打ち間違いが昨年から直されていないからどういうことだと思っていたら、ある方が、あれは若者言葉でそういうんだって」「本当ですか」「よくわからない」「変なことばかり気にしていますね」「まあ、本日はこれぎり」

  2016.04.22

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• 

  茨城の交通ルール（５月2日書き込み）

  「全国に色々なご当地ルールがあるな」「はい」「さて、一般的に次のうち違反はどれ」　１：急ぐ時は右折ラインに入って直進の最初の車を抜いてトップに立つ。　２：右折する車は、対向車の邪魔にならぬよう、青信号になる直前に発進する。　３：左折する車は、右からの直進車がいなければ赤信号でも進んで良い。　４：右折信号の最後に、信号が黄色になった瞬間は、直進も左折も進んで良い。「さあ、どうじゃ」「ううん、全部ダメなような気がしますね」「おお……正解」「普通ですよ」「では、茨城では許されるのはどれ」「え……分かりません」「正解は全部。町で見ていると、当然のこととしてやっているな」「ほう」「さて、写真は今日出会った暴走車」「いいんですか」「あんまりひどかったので……多分親が死にかけているとか、そういう事情があったのだろうが、それでもルールは守るべきじゃ」「どうしました」「利根川を渡る橋の手前でちょっと渋滞。右折して橋を渡るのでなかなか曲がれないのじゃ」「はい」「それで信号二回待ったが、その二回目から、後ろでクラクションをパーパー鳴らす」「しょうがないですよねえ」「それで、やっとうちの車が進もうとしたら、またすごいクラクション。はっとしたら、対向車線からすごいスピードで曲がって行った」「すごい」「それで見えなくなったが、橋の向こう側も混雑していて、またすごいクラクションを鳴らしていたが、進めずに泊まったところで撮影」「まあ、家族が死ぬんだからしょうがないでしょう」「でもルールは守らないとねえ……クラクション鳴らしたって進む訳ないし、こんな無茶をしても次の信号で並んじゃったんだから」

  2016.04.21

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• 国際関係

  「日本と中国が国際会議で顔を合わせて話をしたらしい」「はい」「何を話したのかという問いに、国際関係の問題で言えないという返事」「まあ、そうでしょうね」「それで側近が、この点は伝えたようだってひとつだけが報道された」「はい」「一方中国では、次の５点を日本に対して強く申し入れたと報道している」「あれ……」「日本の政府は配慮なのか、大したことができないので言うに言えないのか……」「分かりませんね」「ロシアも、今度の会議で日本と友好関係を示して、ヨーロッパなどの避難を牽制すると公開している」「日本では」「領土問題は大きな問題としないというだけで、何をしに行くのかは国際関係の問題で言えないそうじゃ」「あれれ」「TPOの交渉も一切発表できないと言って真っ黒に塗りつぶした資料を国会に提出したが、本人の本には全部暴露されているとか」「ありましたね」「秘密保護法も、これについてはどうかと資料公開を求めれば確認出来るそうじゃが、一つ一つの項目について申し出なければならない」「面倒ですねえ」「政府の不思議な対応色々」

  2016.04.20

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