☆らびあんろーず☆

そのニュースは、デート中の車のラジオで聞いた。
それまではカセットテープでお気に入りの女性ヴォーカルの歌を聴いていたはずで、
どうしてこのときラジオになっていたのか、その辺のことはよく覚えてないが
『臨時ニュース』が入って、「飛行機が墜落したもよう」ということと、
搭乗者らしき人たちの名前がずっと読み上げられているのをぼんやり聴いていた。
ちょうど・・・聖蹟桜ヶ丘の駅前を走ってる頃だった。

その日、“彼”と半同棲していた部屋にアタシは帰らなかった。
車を運転していたのはアタシに好意を持ってくれていた別の人で、アタシも
その人のことはちょっと気にかかっていて、顔をあわせるたびに「今度デートしようよ♪」
と言われ、何となくそういう流れになった。
そして、その日が初めてのデートだった。
どこへ行くでもなしに、取りとめの無い話をしながらドライヴしてるうちに夜中になり、
何となく帰るタイミングを逃し。。。そうしたかったのかどうか、今となっては
当時の自分の気持ちすら思い出せない。
ノースリーブの白いフリルのブラウスに、お気に入りのピンクのフレアースカートという
その日の服装までハッキリ覚えているわりには、その人との記憶はそれっきり。
二度とデートもしてないし、どんなふうに逢わなくなったのかも定かではない。

だけど、その人のことを忘れたことはない。
顔も名前も声も、ちょっと困ったような照れた笑顔も、何もかもハッキリ覚えてる。
毎年、この日が近づくとメディアを通して引きずり出される記憶。
『御巣鷹の尾根に日航機墜落』のニュースを初めて聞いたときのシチュエーションが
くっきりと目の前に浮かび上がる。無関係なはずのふたつの出来事。
だけどきっと一生、このリンクは切れることはないのだろうな。。。