カテゴリ:シェパード 1
情報を得て、とりあえず見学に行くだけならと、気乗りのしない私も同行し千葉県のとある ブリーダーを訪ねることになった。 片道4時間の道のりは期待と不安の交差するなんともいえない時間だった。 ウォン!ウォン!!けたたましいその犬とは思えない野獣のような声の大合唱に迎えられ、 私達一家はブリーダー宅にようやく辿り着いた。 目をらんらんと輝かせる夫と対照的に私の腰は完全に退けていた。 野良犬に噛まれた小学生の頃の光景がフラッシュバックしてきて、私は身震いをした。 「やっぱダメだ・・・!」目の前にいるシェパードの大群は、私にはトラの大群に見える。 寒さもあってか鳥肌が立った。 実際シェパードの成犬をこんな真近で見たのは産まれてこのかた初めてだ。 恐ろしさのあまり顔のひきつった私を、人の良さそうなそのブリーダーのおじちゃんは、 「子犬はこっちだよ。」と犬舎に招き入れてくれたが、私の足はなかなか前に進まない。 そこにはオスの子犬が2頭、ちょこちょこと動き回っていた。「うわぁ~!可愛い~~!!」 声をひっくり返しはしゃいでいる夫を尻目に、私は冷ややかにその黒い物体を見つめていた。 当の娘はといえば、あんなに欲しがっていた子犬が目の前にいるというのに、今にも泣き出し そうな顔をしている。そりゃそうだ。今はこんなちっちゃくて可愛いけれど、いずれあんな 野獣になっちまうんだ。 娘も同感の様子だ。そうそう絶対無理。私は吠え盛る成犬の大群をちらりと見た。 ところがナント!そのおじちゃんときたらバナナの叩き売りでもするかのように、「通常は 20万円はいただくところだけどせっかく遠いところ来てくれたし、10万円でいいからどっち でも好きなほうを連れて帰りな。」などと言うのだ。] 「なんだと~!冗談はよしこちゃん!!」そう思う間もなく、夫のヤツめ「いいんですか~!?」 なんて今にも土下座でもしそうな勢いでその気満々になっている。 ヤバイ!!またコイツの悪い癖が出た。 思えば今まで幾度となく夫の衝動買いには泣かされてきた。 しかし今度ばかりは品物ではない。命ある生き物だ。この先10何年もずっと責任を負わなければ ならない。今回ばかりはそんなに簡単に決められちゃあ困るのだ。 私はおじちゃんに「いえ、今日はとりあえず見学ということで来ましたので、よく考えてみます。」 と言うと、間髪入れずに夫は「え~!なんで~~!!!」などとほざいている。 おじちゃんは勝ち誇ったかのように、いつのまにか夫と結託し私を口説きにかかった・・・。 かくして見学だけのはずがその帰り道、車中にはスヤスヤ眠る子犬がいた。 -つづく- お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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