犬バカ日誌 シェパード編

　かくして心の準備はおろか、子犬を迎え入れる準備など何一つしていないという
のにおじちゃんと夫の陰謀でまんまと連れ帰るはめになり、あわててペットショップ
に駆け込み、ケージやらトイレやら餌用の器　等諸々を購入し、バタバタと初日の
夜は更けていった。

　翌日から早速トイレトレーニングを開始した。しかしさすがに頭の良い犬だ。
たった1日でトイレを覚えてしまったのには驚いた。

　しかし子犬というのは良く眠る。眠っては食べ、食べてはまたすぐ眠る。
ここらへんは人間の赤ちゃんと同じだ。これでも一児の母、人間も犬も同様に育て
ていけばいいのかしらん・・・。

　シェパードを飼うと夫と娘が言い出してから、ある程度自分なりにこの犬に関し
ての知識は得ていた。

※19世紀後半ドイツ陸軍が優秀な牧羊犬を集め、軍用犬として改良。医薬品や武器
を運搬したり、捕虜を見張る役目を果たした。現在では警察犬や災害救助犬として
世界中で活躍している。※
ふむふむ・・・なんかスゲー犬だ！！
※自分で判断し行動する事の出来る唯一の犬である。人間の心を読み、信頼関係を
重視するのでムラ気のある人や、毅然とした態度で訓練に望めない人は最初から
諦めたほうがよい。※
やっぱダメだ・・・！！アタシにはとうてい無理！！！

　夫と娘が面倒を見るという約束ではあったが、私はコイツらの約束ほど信用でき
ないということを嫌というほど身にしみて知っている。
どうせ私が面倒を見る羽目になるに違いない。
だいたいこのぶっとい足！いづれものすごい巨体になることを予感させる。
小型犬でさえ鳥肌がたつほど犬嫌いなこのアタシがこんな野獣を操れるわけがない。

　だったらいっそのこと、情が湧いてしまうその前に子犬を返してしまおうか。
金など返してもらわなくてもいい。今だったらまだ間に合う。うっしし！！
　そんなことしちゃだめよ！せっかく縁あって我が家に迎え入れたこの子がまた
あの犬舎に連れ戻されたら、きっとこの子のお父さんと同じく種犬として一生
汚い所で暮らさなくちゃいけないのよ！！
私の中の悪魔と天使が押し問答をくり返している。

　そんな悪魔と天使の狭間ですやすや眠る子犬は日増しに成長していくのだった。
－つづく－