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2019年03月04日
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甲州山高邑の桜樹の碑

峡(甲斐)の山高邑は一条氏の城址なり。精舎有り、実相寺と曰う。昔日蓮上人峡中を遊化し、法を説かるるの処なり。南面に老桜有り、周囲七尋、蓋し千年以上の物なり。遠条の鳳翥(ほうしょ)し、蟠根の蹲(うづくま)る処なり。春時に至り花開くや、芬芳四(よ)もに聞え、之を望めば雲の如く、一大奇観なり。相伝う、後陽成帝の皇子華頂王、幸燈祠に諦居すること数年、常に帰らんと懐い、悒快(ゆうおう)を嘆いて楽しまず、但だ花時毎(つね)に樹下に来りて遥遠してこれを諷詠し、以て懐土の情を忘る。是を以て文人墨士の遊賞する者、今に至りて相踵(つ)ぐと云う。夫れ峡には勝区奇迹多し、しかも草木も常と異なる有り。桜は老い易きものなり、しかも千載無く生意尽きず、高大繁茂すること是の如し。其の盛なる山豆に土地の常に非ざるの以ならずや、抑も亦た大士擁護の如に有るものか。甘棠(かんどう)の詠、召南古柏の歌、蜀中に於けると樹の異なるに非ざるなり、其の人を思うなり。独り斯の樹の麗華なる、風韻を嚢者に慕い、芽芳を来世に伝えざるべけんや。之に係くるに銘を以てす、曰く、峡の土は秀麗にして、其の山は崎嶇たり。何ぞ彼(かの)穣(ゆたか)かなる、斯れ桜の華、千仭本擢んで、万畝陰は敷く、煒々(えいえい)たり煌々(こうこう)たり、異香衢(ちまた)に満つ、姑射(こや)雪を封じ、赤城霞を起す。維れ皇国の産、八紘所無し、祝んや復た千載をや、久しく栄えて枯れず、大士は法を説き、帝子は遊娯す、観者は賛咲し、操觚(さかずき)は踟蹰(ちちゅう)す、桜は皇国に生じ、所在に能く育つ、芳野と泊瀬と、数百千域、未だ斯の如きを開かず、寿、かつ郁々、生意これ隆きは、神の初くる所、今、逸異を著く、維れ石之れ勒(しる)す、諸を己往に観るは、伝の如く極まり罔(もう)けん。

万延元年庚申の春 機山公十世従四位下前侍従 源信之撰






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最終更新日  2019年03月04日 13時09分18秒
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