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2019年03月05日
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  • 『甲陽軍艦』米倉丹後守重継の武略

 

永禄五年(一六五三)戊の二月二十八日に、信玄公甲府を御立あり、三月北条

氏康子息氏政、武田信玄公子息太郎義信公、両家合せて四万六千余にて松山の

城を攻め給うに、武田勢の先衆甘利左衛門尉、より口から城ちかく取よせ、城

の内より降参仕る。子細は、甘利殿同心頭米倉丹後守と云う弓矢巧者の武士、

き工夫の故、天文二十一年壬子に信州刈臣原の城を信玄公攻め取り給う時、甘

利左衛門尉より口にて、竹を束ね持ちて立て置き、城際へ寄り、跡を崩しては

操り寄りに仕り、甘利家中よく働き、諸手に勝れ候て此の城を攻落すこと、悉

皆米倉丹後守武略の故、かくの如し、今度松山においても米倉丹後を武田の諸

人まね、竹ばかりにも限らず杭柱までからげ集め、武田の語勢是を竹克と名づ

けて城近く付寄するは、根本刈屋原の城において、竹を束ねて米倉丹後守付よ

りて、味方の手負すくなく利運にしたる故なり。米倉丹後、信玄公の二十人衆

頭とて倅者頭(カセモノガシラ)なれ共、いくさの時御便にありき、武篇度々の覚あ

りて弓矢にはたばり有る故、所領を下され、甘利同心頭に定めあづけ下さる。

件の竹束にて松山の城弱り、あけて北条へ渡し、氏康公の利運になるは城の早

く落つる事、米倉が武略、竹束の故なり。

 

  • 長男彦次都晴継と甘利左衛門の情愛(『甲陽軍艦』

    甘利左衛門尉、同心頭米倉丹後守の惣領子彦次郎鉄砲にて腹をうしろへうち抜

    かれ、胴の中へ血入りて腹はつしてすでに死するに、芦毛馬の糞水にたてて飲

    み候へば血を下すと申して与へ侯所に、父丹後に劣らぬ武者ゆえ、彦次郎申す

    は、此手、前からうしろへうち抜かれ、助かるべきにあらず、さありて命惜し

    きとて、牛馬の糞まで飲みたるとあれば、武道をかせぎて骸の上の恥なりとて

    飲まず、甘利左衛門来りて申さるるは、さすがに武き米倉彦次郎ともおぼえぬ

    事を申すものかな、か程の深手にて助かり難けれ共、もし能き事もあれば又信

    玄公の御用に立つべきものを、心懸け無き侍は何共いへ、能き武士は命を全う

    し高名をきはめてとありて、馬の糞を立てたるを左衛門尉とりて二口飲み、一

    段味よきとほめ、左衛門尉手より彦次郎にくれらるる、彦次郎飲み候へば不思

    議なり、胴の血一桶ほど下り、彦次郎其の深手平癒なり。左衛門尉其の歳二十

    九歳なれ共父備前守に劣らぬ名誉の人かなと、彦次郎に懇ろを見聞きて諸人ほ

    め、甘利下の同心被官涙を流して左衛門尉になじみ候、これを信玄公聞召し、

    一入甘利左衝門尉御秘蔵なさるる侍大将なり。

 

 と記している。米倉父子の武勇、甘利米倉主従の情愛は、武士道の鑑というべきであろう。

 

 彦次郎晴継は、寄親甘利左衛門尉の恩情こもる計らいにより九死に一生を得、以後もすぐれた働きをしたが、永禄十二年(一五六九)四月、駿河興津の薩埵山において北条の大軍と合戦し、遂に討死したので、父重継は晴継の弟、五郎兵衛尉忠継を家督として米倉家を継がせた。

 永禄十年(一五六七)八月、甘利左衛門尉昌忠は、不幸にも急死したので、重継は甘利家陣代として昌忠の弟の郷左衛門尉信康を助け、甘利衆の指揮をと

ったが、天正三年(一五七五)五月、三州長篠の戦いにおいて、信康とともに討死を遂げた。

甘利信康の墓は長篠の西、新城市竹広に、米倉重継の墓は塩山市恵林寺米倉家墓地にある。






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最終更新日  2019年03月05日 12時34分35秒
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