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山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

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2019年03月06日
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民話対談 小さな小さな民話の本 (山梨)
<『民話』1975年「」民話と文学の会発行>
語る人 相川文利
 聞く人 佐藤結子
<割注 一部標準語に>

 「アジアの民話」という小冊子が、山梨具に住むおじいさんの手によって出版された。地方の民話を集め考える会が各地に設けられ、民話に親しむ人々が増えている今日、「アジアの民話」を訳し、ガク刷の小冊子にされた、ということに惹かれて、私は、甲府から真に一時問程、電車に揺られて甲斐岩間の相川さんのお宅を訪ねた。東京では、散りかけた桜も、山梨に入ると満開で、期待していたこぶしの花は見られなかったが、二度日の花見をしながらの旅であった。

 王様の天国行き インド(相川文利訳)

 ユネスコが出版した『アジアの民話』より、相川文利さんがお訳しになったお話のひとつを紹介しましょう。相川さんはさし絵もビ自分で描いております。絵本を見ながら模写したり、工夫を加えて描きそえたり、素人ながら楽しい本作りを行っております。

 昔のことだったがな。太っちょで愚かものの王様と、彼につかえるずるがしこい大臣様がおったとよ。その大臣様、事あるごとに、自分の智恵を王様に示すようにつとめたから、王さまも、この大臣様がいなくては、夜も日も明けぬようなってしまったとよ。王様が大臣に、「わしを見棄てるようなことはしないと誓ってくれ。」と言うたびに、大臣様はいつも、「どういたしまして、陛下さま。貴方様のいらっしゃるとこなら、この世は勿論、天国でも地獄でも!お伴をいたしますとも。」と答えたってさ。王様はとても満足顔だったって。
 ある晩げのこと、この王様、河の岸辺をプラブラして、宮殿に帰って来なされたとよ。もちろん、かの大臣様もいつものように、そばにおったってよ。突然、近くの森で狐がほえるのを聞いてさ、王様は大臣様に、怪しんで尋ねたとよ。「あんなに、沢山の狐がほえるとは、なぜかね?わしの高貴な耳も、あの騒ぎを聞かざるをえないとはね。」
 かの大臣様、すぐ答えたってよ。「はい、陛下様。ビ存知の通り、この冬は特別に冷えますので、費乏狐どもめが温い着物
もなく、貴方様にせめて毛布のl枚でもと、願うておるんでございます。」
「そうかそうか。それにしてもお前の賢いことよな、狐めのことばも解るとは大したものよ。ところで、毛布が狐どもの手に入らぬとは、一体どうしてかね。」
「実は、係りの役人の怠慢からでございます。」とその役人に怨みを持っていた大臣様、ここぞとまくし立てれば、「くそいまいをしい。その役人を毛布の係りから追っぱらえ。よし、役人を毛布で巻いて、海へほうり込んでしまえ。そしたら、沢山毛
布を買い入れて、わしの親しい友の狐君たちにやってくれ。」と王様は命じたとよ。
 大臣様、大急ぎで、王様のおふれと吹聴したが、王様の命令の前半分だけ役人を海にほうり込み、狐どもへの毛布を買うお金を王宮の金庫番から手に入れ、あとは、毛布は買わず自分のふところヘポッポという始末。
 次の晩、王様はまたしても狐どものほえるのを聞き、「何ちゅう事か?何故未だほえるのかね?」と驚いて尋ねると、
 かの大臣様、すまして答えて、「貴方様にお礼のことばをと、ほえているのでございます。ハイ、陛下さま」と。「こりゃ素晴しい。お前のような賢い大臣を持つ王様は他になかろう。友よ、お前はいつまでもわしから離れないと約束しておくれ。」
「決して決して。私めは天国でも地獄でもきっとお伴をして離れませんとも。」と大臣様、王様に聞く誓ったとよ。
 王様はとても満足したが、それも長くは続かず、突然小さい猪が森から跳び出して来ただって。王様、まだ猪を見たことがないので、「ヒヤーッ、何ちゅう生き物かよな」と大声出したとよ。かの大臣その生き物が何であるか百も承知だったが、胸に一物落ちつき払って答えた「この生き物は、貴方様のお待ちの象の一匹でございます。ハイ、陛下さま。象係りの役人め、餌をやるのを惜しんだあまり、こんな貧相な姿になってしまったので。」と。
 王様は怒って、即座にそんな役人は死刑にしてしまえと命じ、かの大臣に、必要なお金はいくらでも金庫から持って行って、可末相なかの生き物を養生してくれろとの頼み。これ幸いと、又も狡る大臣、王庫から沢山のお金を引き出したが、これも又全部自分のふところヘポッポとよ。
 一月ほど経ったある晩、王様がかの大臣と連れだってのぶらぶら歩きの帰り途、王様の目の前払かの猪が再び跳び出し、びっくり仰天、そばの大臣に、「こりゃ、いつかの飢えた象だぞ、どうしてあんなにしてやったに、少しも太らぬとは。」と不審がると、かの放る大臣少しも騒がず、「いいえ、どういたしまして。あの象は貴方様と同じ位肥えまろんでおりますって、ハイ。陛下さま、この生き物は王宮の台所で、たらふく食べて太った鼠でございます。全くもって、料理人の不注意には。」まあるい、愚かな王様の顔が真赤になって、目をギョロギョロ、口もブツブツ云うばかり、「こりゃなさけない。料理人のやつの不注意で、わしの大事な食糧が鼠に食べられて台なしとは」彼は、料理人に自分の料理をつくったら、ただちに縛り首だと命令したとよ。その夜、その料理人は、ひそかにかの大臣のとこへ一山の金貨を持って行って差出し、大臣が自分の命を助けて下さったら、お礼に王様への特別料理をこれから別に一揃いつくって上げると約束したとよ。大臣様大満足、料理人に「みんなわしに任せ給え、悪いようにはせぬよ。」と胸をボン。その夜おそく、料理人が王緑の目の前で縛り首になるその直前に、かの大臣、大声で、『暫らく、暫らく』と叫びながら登場。王様に言上するに、「恐れながら、陛下さま、ただいま私めが暦を調べましたところ、この夜おそくのこの時刻は、とても幸運の時でございまして、ただいま縛り首になった者はみんな、天国の特等席に坐れるのでございます。陛下様、たゞいま料理人を縛り首にしては、全く罰することになりませんで、ほめることになってしまいます。罪人をなぜ天国に送ろうとなさるんですか。」と。
 意外にも、王様は青んで跳び上り、「こりゃ好い、とてもじゃ!ずっと前からわしは天国を見たいと思ってた。よし、わしは天国を一刻も早く見たい、代りにわしの首を縛れだが、待てよ」とかの大臣をふりかえり見て、わしの良き友よ、お前はいつもわしの行くとこへはお伴をしますと約束して来たな。わしは天国へ行くとこだで、お前、道案内せい。首縛り役人ども。先ず彼を縛り首に。」と。あわてふためいた大臣どの、ことばを出すひまもなく、護衛役人の鎗先が彼の首にプスリ、縛り首役人が室高く引っはり上げたとよ。王様は役のこの果断なやり方に満足したが、大臣の始末が終るや、縛り首役人は今度は王様をも同じように縛り首にしてしまったとよ。それは本当に彼の欲していた通りではあるが。彼らが天国を見たかって?そんなこと、わしらの知らぬことでさ。

 <写真は同誌に掲載の写真>





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最終更新日  2019年03月06日 14時56分22秒
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