カテゴリ:白州町・武川町 歴史文学史蹟資料室
白州街の俗信と民問療法
俗信 民間信仰の底辺をなしているのが俗信である。 したがってここに含まれるものの範囲は広く、予兆、前兆にかかわる信仰、ト占、禁忌、呪法がある、 しかしこれにまつわる諺、唱え言、妖怪変化、幽霊などは次第に衰退して来たが、 これらを通じて古代の民問信仰を知るには貴重な素材である。
●天候と関係のあるもの
○諏訪口が曇れば、明日は天気が悪い。 ○諏訪口が明るければ、明日は晴れ。 ○八ヶ岳に雲がかかると風が吹く。 ○八ヶ岳に帯雲がかかると雨が降る。 ○駒ヶ岳に雲がかかると雨が降る。 ○駒ヶ岳にアラシがたてば寒くたる。 ○雨が降ったあとは風が強い。 ○雲が北へ行けば雨が降る。 ○中山に雲がかかると雨が降る。 ○月がカサをかぶると雨が降る。 ○月のカサの中に星があると、その星の数だけ晴れの日が続く。 ○ツバメが低く飛ぶと雨が降る。 ○スズメが群れをなして鳴くと雨が降る。 ○ネコが耳をこすると雨が降る。 ○トソビが輸をかいて「ピー」と鳴くと晴れる。 ○ハチが低い所に巣をつくる年は台風が来る。 ○雲が南へ行けば晴れる。 ○ワデの方に黒雲が湧くと夕立になる。 ○夕立は馬の背を分ける。 ○土に地クモが巣を張るときは天気になる。 ○夕虻は百日の照り。 ○朝虹はその日の洪水といって雨が降る。
●農耕に関係のあるもの
○川水の多い年は豊作になる。 ○午の日に田植えは禁物。 ○土用の丑の日に、田の草取りをしてはいけない。 ○田植えの夢は気をつけなければならない。 ○遊び者の節句働き。
●その他 ○カラスの鳴き方が悪いと人が死ぬ。 ○カラスの一声鳴きは悪いことが起こる。 ○寺の木でカラスが一声鳴くと人が死ぬ。 ○ヘビが土蔵に入ると金が残る。 ○ヘビに道を横切られると不吉。 ○いく匹もヘビがいると縁起がよい。 ○朝クモは縁起がよい。 ○晩のクモは殺した方がよい。 ○洪水の夢は火事がある。 ○朝の夢は正夢。 ○死んだ夢は長生きをする。 ○めでたい夢は災難がある。 ○夜口笛を吹くと盗人がくる。 ○下駄の鼻緒が切れると心配事が起こる。 ○夜爪を切ると親の死に目に会えない。 ○桑の木を杖にしてはいけない。 ○ハタ織り道具を燃やすと気違いになる。 ○朝出がけに針を使つてはいけない。 ○戸問口の敷居を踏んではいけない。 〇七日帰りの旅はいけない。 ○結婚式当日野猿返りの道(武川-目野春)を通ると離婚になる。 ○結婚披露宴の料理に豆腐を使うと縁がくずれる。 ○新しい履物は夜おろすものではない。 ○陽が暮れてから塩を買いに行くと火に崇る。 ○おむつを夜干しすると子どもが夜泣きする。 ○妊婦が兎肉を食べると三つ口の子が生まれる。
●医療 〈腹痛〉 ○ゲソノショウコやトウヤクをほして煎じて飲む。 ○オウレソ・セソブリ・ドクダミ・リソドウを煎じて飲む。 〈胃病〉 ○タソポポを根から取り、干して煎じて飲む。 ○ゲソノショウコを煎じて飲む。 ○胃のもたれたときは、ダイコソおろしがよい。 ○タラの根を干して煎じて飲む。 〈歯痛〉 ○ハコベを煎じて飲む。 ○セソブリは熱さましに効く。 ○牛の角を煎じて飲む。 ○ヘビイチゴの焼酎漬がよい。 ○ユキノシタを塩でもんで汁を飲む。 ○ゲソノショウコ・ドクダミを煎じて飲む。 ○梅干をかむ。 ○梅干・笹の葉を焼いて赤い水を出し、それを塗る。 〈風邪〉 ○梅ぼしを焼いて熱湯を注いで飲む。 ○青梅の種の中の汁を飲む。 ○干しいたけを煎じて飲む。 ○みかんを黒く焼いて熱湯で飲む。 く癌〉 ○サルノコシカケを煎じて飲む。 〈かぶれ〉 ○ウルシにかぶれた時は、カニをつぶして布にくるんで患部につける。 〈血止め〉 ○もちぐさをもんでつける。 ○フキの葉、ダイオウなどの葉をもんでつける。 ○蕗の薹の茎の汁をつける。 ○煙草の粉をもんでつける。 〈打身・ねんざ〉 ○ドクダミをすりつぶして塗る。 ○梅酢止小麦粉をねったものを患部に塗る。 ○プムシ酒を患部に塗る。 ○ヘピイチゴの焼酎漬を塗る。 〈切り傷〉 ○フキの葉の筋をもんで汁をつける。 ○々ムシの焼酎濱を塗る。 ○ユキノシタをあぶつて、皮を一枚はいで貼る。 ○ドクダミをすりつぶして貼る。 ○モチグサをもんで貼る。 ○キハダを煎じてかたまったものをつける。 〈毒消し〉 ○桜の皮を煎じて飲む。 〈冷やし薬〉 ○ハコベを塩でもんで患部にあてる。 ○テソナソ草を用いる。 ○キワダを乾燥させて用いる。 ○ヘビイチゴを焼酎漬にして用いる。 ○アンモニヤ水で冷やす。 〈その他〉 ○ビワの葉を煎じて飲むと神経痛によい。 ○ザクロの根は肺病によい。 ○カラスウリの汁をつけると、シモヤケに効く。 ○オシロイ花をすりつぶし、その汁をつけると「たむし」にきく。 ○ナメクジはぜんそくの薬。 ○コウデのときは、障子の穴に手を通し、女性なら男子の末子に、白い糸を結んでもらう。
これらの伝承は、今目の科学的なものの見方、考え方からすれば不合理な面が多く論理的にも根拠のないものが多い。したがって言葉としては覚えていても、現実面では無視されているものもかなりある。 しかし結婚、建築、正月行事等のお祝事や葬式のとき仏様に対して行なう風習など、人問の生死や将来に関するものにはまだまだこれらの伝承にこだわる人も多く、あえて逆わないようにしている。また中には比較的に合理的、教訓的なものもあり、またユーモア的なものもある。また天侯に関するものや民問療法などの伝承は、長い問の経験から出たものが多いために比較的よく使われているものもある。特に最近は人々の健康に関する関心が高く自然食や薬草などの効果が見なおされて来ている。なおこれらの多くの伝承は白州町ばかりでなく広い範囲に広がっているものもある。 〈白州町誌〉
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最終更新日
2021年04月26日 18時25分51秒
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