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2019年04月10日
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カテゴリ:柳田国男の部屋

日本昔ばなし 海月骨無し

  

柳田国男全集 大正元年版 一部加筆

 

 大昔、龍宮の王様のお妃がお産の前になって、猿の肝が食べて見たいという、珍らしい食好みをなされました。

龍王はどうかしてその望みをかなえて遣りたいものと、家来の亀を呼んで、何かよい考えはあるまいかと尋ねられました。

亀は知恵のある者で、早速目本の島へ渡って来て、ある海岸の山に遊んでいる猿を見っけました。

猿さん、猿さん、龍宮へお客に行く気はないか、大きな山もあり御馳走はなんでもある。

行くならば僕が乗せて行ってあげると言って、大きな背なかを出して見せました。

猿はうっかりとこの亀の口車にのって、嬉しがって龍宮見物に出かけました。

なるほどかねて聞いていたよりも美しいお星敷でありました。

中の御門の口に立って、亀の案内してくれるのを待っていますと、門番の海月が猿の顔を見て笑いました。

猿さんはなんにも知らないな。龍王様の御妃がお産の前で猿の肝が食べたいとおっしゃるのだ。

それで君がお客に呼ばれて来ることになったのにといいました。

こいつは大変だと思いましたけれども、猿にも智恵があるので何食わぬ顔をしていますと、

やがて魁が出て来て、さあこちらへと言いました。

 猿さん僕は飛んでもないことをした。こんなお天気模様なら持って来るのだったが、

うちの山の樹に肝を引掛けて、乾して置いて忘れて来た。

雨が降り出したら濡れるだろうと思って心配だと言いました。

なんだ、君は肝を置いて出て来たのか、それじゃ、もう一度取りに行くより他はあるまいと、

再び亀の背中に載せて、元の海岸まで戻ってまいりました。

そうすると猿は大急ぎで上陸して、一番高い樹の頂上に登って、知らん顔をして方々を見ています。

亀がびっくりして「猿君どうした」というと、海中に山無し、身を離れて肝無し、と言って笑いました。

是は龍宮で門口に待っているうちに、あのおしゃべりの海月がしゃべったに相違ないと、

亀は帰って来て龍王に訴えますと、けしからぬ奴といふことで、皮は剥がれる。骨は皆技かれる。

とうとう今の海月の姿になってしまったのは、全くこのおしゃべりの罰だといふことであります。






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最終更新日  2021年04月26日 16時55分33秒
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