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2019年04月15日
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北杜市人物伝 明野町 永峯秀樹 (生1848:6:1~歿1927:12:3)

(資料『中央線 1971 7号』 一部加筆)

身辺に感じられる三人の北巨摩人の先達を思い浮べながら、明治、大正と牛きてきた三人の足跡の中に、編集の方からいいつけられた「生き甲斐」を探ってみることにした。

北巨摩人という言葉があるかどうか知らないが、北巨摩の人の特質を私は抽象することが出来るように感じる。それは峡南の人々から感じた一種の物柔らかさ、峡東で感じる剛気不周が甲州人の特色を示すアクセントであるなら、北巨摩の人々は、千古の人問経験を蓄積した地殻のような皮膚の厚さを感じる、どっしりとした重さを感じる。私が身近の人(仕事の上からも、精神的にも)として取り上げようとしている三人の方はその馨咳(せいがい)には接してはいないが併しその書き残した言葉と業績に、この北巨摩人を感じる。三人は教育者=文化人であった。

北巨摩が郷土に生涯をかける教師、公務員の産地であるといわれるが、これは学問を愛する大衆の多いことを意味する。韮崎市、北巨摩郡が中学から高校への進学率で県下において最高地域の一つであることはこれを示している。

**永峯秀樹**

明野村浅尾新田の蘭方医小野通仙の四男(末子)として生れた。長男、泉は県立病院創設者、次男実も蘭方医戸塚文海の弟子、実の孫娘に小野勇二氏(甲痢市小野病院長)を迎えている。三男民也は京都の有名な広瀬元恭の弟子、この四人兄弟の叔父には日本画家の三枝雲岱がいる。故、柳田泉先生は「永峯秀樹伝」(「明治初期翻訳文学の研先」春秋社発行)で昭和二年九月、秀樹(七十九才)より直聞の話しを克明に伝えておられる。それによると、秀樹は茅か嶽の麓の兄の家で子守をしながら勉強していたが、甲府で開業した父に呼びよせられ、お城の中にある徴典館に入り四書五経を学び詩文にも上達した。(後に彼が翻訳した「智氏家訓」の序には当世流に彼自ら漢文で「査斯徳費耳土公(チェストルフイールド公)小伝)と書いている)十五、六の時、「二十になったら独立せよ」と父に言われる。

少年志士気取りで黄芸に励み、行学相伴った。京都から江戸へ。

その頃永峯という武士の家の株が空いていたのでそこに入り、永峯姓を名乗り士族となる。その頃から洋行を考えていた。幕末志士として飛び廻ったが王政維新となり、徳川家の武土と共に静岡へ。沼津の兵学校に入り英数を勉強し始めた。地理やパーレーの万国史(当時流行の本)を通し国際事情が分かると、海軍に入り、日本を護らねばならぬと思った。明治四年に築地の海軍兵学校へ。そこへは生徒になる積りで入ったが、数学の教師が不足していて、教師となる。明治三十五年退官迄三十年間、数学理科の教師であった。

彼の人生は、世界の様子を知らせて「日本人の島国的独尊心をくじくこと」のために、翻訳に捧げられたのである。彼が明治八年十月十九日に甲府常盤町四番地内藤伝右衛門(蔵版)から発行した「物理間答」「二冊を甲府の古本屋で発見した時の嬉しさを私は忘れられないこれは篠尾村今井某氏の使用されたものである。「物及ヒ物性論」「重カ論」「運動論」「光論」「天文論」などがある。「アメリカのウェル及びクェツケンボスの物理書中より抄訳、物理ノ学タルヤ人家ノ日用ニシテ各人知ラ,ザル可ラザル者トス」とある。「智氏家訓」(三冊)明治十一年八月十九日、静岡県士族永峯秀樹訳述兼発行となっているがイギリスのチェスターフイールドが子供に与えた日常生活の規範で、一種の修身書である。(明治四年には微典館の教頭をしたことのある中村敬宇の「西国立志篇」が出て、明治初期のベストセラーになっていた。)

私がみつけた本は東山梨郡小佐手村某氏のものである、当時県下に広く愛読された様子が分かる。

ギゾオの「欧州文明史」アラビアンナイトの日本の最初の訳本である「暴夜物語」(二冊)(静岡県立葵文庫ですぐ借り出すことができる)ミルの「代議政体」から農業の本にいたる迄、彼は日本人の眼を世界に見開かせる努力を続けた。柳田先生が、「明治の初期文化功労者」として高く評価しておられるのも当然である。

小野家の跡地は浅尾新田の明野線の大榎のあるバス停から南へ少しいった処にある。その空地を南へ上った小高い丘に小野家の墓石が並んでいた。併し秀樹の墓があったとは思われなかった。彼の生き甲斐は、文明開化の先鎗になることであった。






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最終更新日  2021年04月25日 13時47分09秒
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