カテゴリ:山梨の歴史資料室
アイヌ語
山梨百科事典 山梨日日新聞社刊
アイヌ種族が話す言語。 もとは北海道方言、 樺太(からふとーサハリン)方言、 千島方言の3大方言があったが、 千島方言は今はなくなり、 樺太方言は太平洋戦争終戦後、樺太アイヌの北海道移住によって、 現在は北海道で約1万5000のアイヌ人によって話されている。 もともと文字はなく、 神話ユーカラも久しく口頭伝承によって今日に及んだものである。 音韻は a・i・u・e、o の5母音と12の子音からなり、 音節構造も単純で、 アクセントも高低アクセントであることとともに日本語に似ているが、 清濁の区別がなく、子音で終わる閉音節の語がある点は日本語と異なる。 語法では、語順が、 主語一目的語・補語一述語の順で日本語に似ているが、 名詞、動詞に人称変化があり、 さらに周囲のアジア民族の言語にはみられない 抱合語 (動詞に主語、目的語、接辞などが合体して、一語一文のようになる) の性質を持つ。
例 a - yai- ko - tuima-shira-msuye われ 自身 について 遠く 回想する
この特徴によって日本語とは別系統で、 アジア大陸の極北諸説やエスキモー語と同じ傾向のものとみられている。 しかし、アイヌ種族と日本民族とは古くから接触があったので、 語イ(彙)の上では互いに取り合っている。
アイヌ語のtuki(杯)、potoki(仏)、kamui(神)、menoko(女子) などは日本語からはいり、 日本語の蝦夷-えぞ(enju、人)、 厚司(attushi)、 鮭-サケ(shak-ibe、夏食)、 桜皮-かにば(karimba、ヤマザクラ)
などはアイヌ語を取り入れたものである。 また東北地方の地名の 毛馬内(けまない)、 平内(ひらない)、 比内(ひない)、 苫辺地(とまべち)、 野辺地(のべち)、遠 別(とおべつ) などのナイ、ベチ、ベツはアイヌ語のnai(沢)、pet(川)の残存である。
なお、富士川の語源については 徳川時代(1603-1867年)以後、諸説がある中で 「ふじ」はアイヌ語の フンチ(hunchi 火山)または ウンチヌプリ(unchinupri 大の女神) からきている、とアイヌ語研究家の英人宣教師ジョン・バチェラが説いているが、 もしそうであるなら山梨県にもアイヌ語が足跡を残していることになる。 <稲垣 正幸氏著> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年04月25日 11時16分35秒
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