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2019年04月23日
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《山高八左衛門尉源信賢奉納自詠自筆百首》(『武川村誌』一部加筆)
 高龍寺十二景は東都山高家の作とあるとおり山高氏の作ったものを徳翁が書き写し掛軸としたものである。
 
 信賢は八左衛門尉源信賢といい、甲斐源氏の一族として、一条源八時信が武川衆の祖として同地方に流布され、時信の孫信方が山高を称してからの家系に生まれた人である。信賢は高龍寺中興開基である山高孫兵衛信保の孫に当たり、山高家は代々柳沢家との縁組もあって、柳沢吉保が和歌を嗜んだ為その影響を受けており、四季折々の感懐を詠じていた。
 信賢は自詠一〇〇首を幸燈宮(山高)に献納するに当たり、
「正一位唐土大明神は、元祖より以来崇め奉り猶また名字の末流に至るまで蒙恵事今以不少尊敬の余りに集め置きたる自詠を自筆して心の実を宝前に備え奉る」として春の部二五首、夏の部二〇首、秋の部二五首、冬の部二〇首、他に雑詠として一〇首合せて一〇〇首を表装箱入りとして納めた。
一〇〇首和歌のうち何首かを次に記して見ると
春の部
(立春)
立帰里空も長閑に巡る日の影改留春や釆ぬらん
(立春霞)
吹風の音には春の色もなし空に志れとや先霞らむ
(春来鷺)
春そとは霞める空に見えながらけふもまたるゝ鷺の声
(早鳴鷺)
世は寒し春ともしらぬ梅の枝にもれて長閑き鴛の声
 
夏の部
(更衣)
花染の名残りはけふに立かはる挟も蒔き夏衣かな
(郭公一声)
誰か里に契り置てかはとゝきす雲井の余所に通る一声
(古郷橋)
阿るじなき庭と維も古郷に誰がため匂ふ宿の橘
(森蝉)
吹夙に声もみだれて噂蝉の栴涼しき森の下かげ
秋の部
(立秋)
立かはる衣手涼し秋風に乱初ぬる萩の音かな
(早秋)
さすがまた身にしむ色は見えねども枚にかよふ秋の初風
(七夕月)
月影も晴れて今よいに巡り阿ふせきのつきせぬ星合の空
(庭の萩)
夕露に発しほ染てむらさきの色に乱るゝ庭の萩の枝
冬の部
(初時雨)
今朝よりほ小笹に結ぶ白露も乱てかほる初時雨かな
 (閏時雨)
夢となり現と成りて小夜時雨幾度閏におとろかすらん
(森初冬)
冬釆てはいかにあらしの吹かへて名も木枯の森の下かげ
 (初雪)
春近き程に知らせて木々の枝に盛を見する由ヨの初花
  雑の部
 (陣払)
波よする岩根の岸に年辺てもかはらぬ色は和歌のうら松
 (四季中山)
  草枕日数重ねて見し不二の姿をかはる今朝の白雪
   (寄日祝)
  巡る日の影豊にも限りなく治れる代の色そ志つけき
   (寄松祝)
  恵ある君かよはいも十かつりの松にかわらぬ色を習ひて
  「右百首和歌武運長久家名之栄を奉祈而己」
続けて、
   「神鏡を納奉りて」
  千早振神もまことの跡とめて曇らぬ世々の鏡とぞなる
また、
   「願望の心を」
  山高み茂る栴の末葉までもれぬ恵を祈る神垣
 と詠じた。
干時正徳二年 季秋十九日
      山高八左衛門尉 源信賢 書判
 信賢は次の年正徳三年(一七一一)二月二十四日五十八歳で没しているので、これを幸燈官に納めたのは五十七歳の時であった。





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最終更新日  2021年04月25日 05時51分29秒
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