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2019年04月29日
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母の感化を受けた小池国三 祖父は白州町出身

『人と旧跡 山梨県歴史の旅』山梨県観光連盟監修 堤義郎氏著 一部加筆
 
 明治のはじめ、甲府の上級小学校を卒業して間もない小池国三は、友だちが駄菓子をたくさん持っているのを見て、母からもらった金で菓子を買いに行った。その金で自分もたくさん買えると思っていたら、一つしか買えなかった。家へ帰って母の顔を見ると、大声をあげて泣いた。
国三の父は養子であったが、巨摩郡白須村(北巨摩郡白州町)から甲府へ出た祖父が行商をして世間に知られるほどの店を構えたのに、気ままな性格から家運を傾かせた。母屋を人に貸す破目となり、ある日、母は表へ突き出されカギを忘れた戸を開けてはいり「神様が入れて下さいました」といった。そんなにまで、母はしんぼう強い人だった。

若尾家の奉公人

六男一女の四男として生まれた国三は、なんでも兄たちのお下がりをあたえられ、小学校を終えると繭仲買商の紹介で甲府一の実業家・若尾逸平の店へ住みこみ奉公にはいった。
 若尾家は主人がからだを資本にたたきあげただけあって、奉公人の労働は激しかった。新参者の国三は、番頭や女中にこき使われ、一緒に牛ナべをあてがわれてもネギの追加を取りに行かされて、戻ってみれば牛肉の一片もなかった。それでも、夜は書物に目をさらして勉強に励んだ。
 主人の逸平はしばらくして、火鉢の灰に小さい手の平の跡がついていることを気づいた。国三を呼んで聞いたら、火の用心に毎晩灰の上から触っていますと答えたので、こいつ、なかなか見どころがあるなと印象づけた。
 陰日向なく働いた国三は、十六歳で地所部に取り立てられ、その標に糸織り羽織をもらった。特例の昇獲であり、母は赤飯を炊いて祝った。

二度も蒸発上京

破格の待遇を受けながら、二年たったら、もっと大きな働き場所を望んだ国三は、不意に蒸発してしまった。心配した父は半病人になったが、国三が東京にいる兄の家から便りをよこしたので、母が急いで迎えに上京した。つれ戻された彼
を前に、父はまだ苦労が足らんと説教した。
 それから、二年後、国三はまた黙って東京へ行った。このときは日本橋の株屋にいたのを、若尾の店員が見つけてつれ帰った。
「お前はどんなところへ行きたいんだ」
と聞かれて、国三が三井か、岩崎(三菱)のようなところへと答えたら、主人の逸平は
「三井も岩崎も大きいには違いないが、若尾だってまんざらバカにしたもんでもねえぞ」
 といったそうである。
 逸平は生糸の暴落で大損をしたと㌢もあったが、甲府ではすでに押しも押されぬ資産をもち、中央進出をめざしていたのだ。手塩にかけた青年・国三のたび重なる無断上京にも、かえって闘志を燃やすのであつた。

株式仲買で独立

日清戦争がはじまると、国三は南巨摩郡都川村(早川町)の金鉱支配人を命じられた。若尾家からは賞与一千七百円と株券をもらい、足どりも軽く赴任した。しかし、努力を振り絞ったにもかかわらず、鉱山は減産をたどって、無残な結果に終わった。
 こんどこそ国三は正式に退社して、東京へ出ると兜町の株式仲買店につとめ、結婚にも踏み切った。日露戦後の好況に乗じて独立、二階建ての小池商店をうち建てた。海外旅行の念願も果たしたが、五十二歳の大正四年(一九一五)かねてから予告していた株式界引退を声明し、解散に涙を流す社員のため、のちに山一合資会社を設立した。
 母の感化と無言の教えを守った彼は、その後、銀行の設立に尽力したり、東京ガス社長におされたりして、六十歳で病没した。





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最終更新日  2021年04月23日 18時29分31秒
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