カテゴリ:山口素堂・松尾芭蕉資料室
▽素堂、三月、桃青(芭蕉)・信章(素堂)『江戸両吟集』 ** 其の二 ** 1 梅の風俳諧諸国にさかむなり 信章 2 こちとうづれも此時の春 桃青 3 さやりんす霞のきぬの袖はえて ヽ 4 けんやくしらぬ心のどけき 章 5 してこゝに中頃公方おはします ヽ 6 かたぢの雲のはげてさひしき 青 7 海見えて筆の雫に月すこし ヽ 8 趣向うかべる船の朝霧 章 9 いかに漁翁こゝろえたるか秋の風 青 10 實に土用也あまの羽衣 章 11 うつ蝉もよし野の山に琴ひきて 青 12 青有らしふくひとよぎりふく 章 13 松杉の木間の庵京ばなれ 青 14 糞擔桶きよし村雨の宿 章 15 夕陽に牛ひき帰る遠の雲 青 16 老子のすがた山の端がくれ 章 17 寓言のむかしの落葉かき捨て 青 18 桐壺はゝ木々しめぢ初茸 章 19 鍋の露夕の煙すみやかに 青 20 釘五六升こけらもる月 章 21 古里のふるがねの聲花散て 青 22 志賀山の松ふゐとふく風 ヽ 23 さゞなみや二蔵か袖にさえかへり 章 24 あかゞり洗ふあし原のすゑ 青 25 ある説に泡のかたまる石一ツ 章 26 玉子は前やうちくがく覧 青 27 傳聞く唐のやうかんかすていら 章 28 上碧落より下は杉折 青 29 付うどのたとひ千尋の底までも 章 30 親類分はのがれがたしや 青 31 世間に大名あれば町人あり 章 32 柳は緑かけは取がち 青 33 古帳の横點を引朝霞 章 34 火鉢をはりし氷ながるゝ 青 35 かねのあみかゝれとてしも浪の月 章 36 河童のいけどり秋をかなしむ ヽ 37 うそばなし聞ばそなたは萩の聲 青 38 地ごくのゆふべさうもあらうか 章 39 飛螢水はかへつてもえあがり 青 40 熊手鳶口瀬田の長はし 章 41 釣瓶取龍宮までも捜ぬらん 青 42 龜はたちまち下女にあらはれ 章 43 老鶴の隠居さまへの御使に 青 44 白むくそへて栗五十石 章 45 田舎寺跡とぶらひてたび給へ 青 46 ぬるい若衆も夢の秋風 章 47 床は海朝鮮人のねやの月 青 48 虎の毛ごろも別行露 ヽ 49 くろがねの築地の崩花をふんで 章 50 草もえあがる秦の虫くそ 青 51 朝霞徐福が贋のうり藥 章 52 まづ壺ひとつ乾坤の外 青 53 瀬戸の土金輪際より掘ぬきて 章 54 辨財天に鯰さゝぐる 青 55 かまぼこの鹽ならぬ海このところ 章 56 その夜は不二に足打の山 青 57 かんな屑たいまつはつとふりあげて 章 58 見よく成佛はきだめの虫 青 59 鶏の御齋を申今朝の月 章 60 龍田の紅葉豆腐四五丁 青 61 むら時雨衆道ぐるひの二道に 章 62 人死の戀風さはぐなり 青 63 大火事を袖行水にふせぎかね 章 64 やうくこゆる土手の松山 ヽ 65 日本橋ちんば馬にて踏ならし 青 66 方々見せうぞ佐野の源助 章 67 かいつかみはねうち拂ふ雪の暮 青 68 鷺はかへつて鳶となりけり 章 69 浪に聲芦にものいふ世の中に 青 70 何とて松はすねて見ゆらん 章 71 薄柿ととも茶ともわからぬ峰の雪 青 72 浅間の土を燒歸しゝて 章 73 物語伊勢白粉とよまれたら 青 74 平家の秋ににきびあれ行 章 75 剃刀も内持所も水の月 青 76 のうれんかけしとこやみの霧 章 77 衣屋も既に彌勒の花待て 青 78 かねの御嶽を両替の春 ヽ 79 岩橋のりんとかけたる一かすみ 章 80 天につらぬく虹のつゝばり 青 81 その四隅多門は手木を横たへて 章 82 日傭の札に悪魔おさむる 青 83 獨過都鄙安全になすべしと 章 84 慈悲はかみよりさがる米の直 青 85 人として思はざらんや親の五器 章 86 願によつて雪の竹箸 青 87 いきの松ひねり艾葉ののる迄も 章 88 気根の色を小謠に見す 青 89 朝より庭訓今川童子教 章 90 さてこなたには二條喜右衛門 青 91 宿の月城を弓手に肘曲り 章 92 後陣はいまだ横町の露 青 93 上々新蕎麦面もふらず切て出 章 94 大根の情たちかくれけり 青 95 終夜此本草を読誦する 章 96 南無いき藥師如来迎の時 青 97 紫の蛸は雪路にはひ出て 章 98 とがり矢二筋まなばしの先 青 99 軍は花追手勝手をもみ合 章 100 其勢何百きさらぎの巻 青
『江戸両吟集』 山口信章(後素堂)と両吟にて菅神奉納の二百韵を試み、延宝四年春三月『江戸両吟集』の標題にて開板せるものである。後、延享四年(1747)一浮齋盛水「芭蕉素堂両聲たる梅花の韻は亡父一葉一永が古文庫より出たり」とて此一巻を「梅の牛」の題名としたものが世に行なわれる。『江戸両吟集』は今その所在を知らず、文政四年(1821)三月柳亭種彦が古板本より筆写せるもの、並に『奉納貳百韵』と題せる別写本を本文とし「梅の牛」及び「一葉集」とした。(「芭蕉一代集」『日本俳書大系』所収。)
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最終更新日
2021年04月22日 05時04分38秒
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