カテゴリ:山口素堂資料室
主催は秋元但馬守(老中)家老 高山伝右衛門 麋塒 「錦どる」(一百韻一巻)
錦どる都に売らん百つゝじ 麋塒 壹 花ざくら 二番 山吹 千春 風の愛三線の記を和らげて 卜尺 雨双六に雷を忘るゝ 暁雲 宵うつり盃の陣を退りける 其角 せんじ所の茶を月に汲む 芭蕉 霧軽く寒や温やの語を尽ス 素堂 * 梧桐の夕繻盞を抱イて 似春 狐村遙に悲風夫を恨ムかと 昨雲 媒酒旗に咲みを進ムル 言水 別るゝ馬手は山崎小銭寺 執筆 猶ほれ塚を廻向して過グ 糜塒 袖桶に忘れぬ草の哀折ル 千春 小海老爪白母を慰む 卜尺 たる鷺の鬘ヲ黒やかに 曉雲 捨杭の精かいとり立り 素堂 * 行脚坊卒塔婆を夢の草枕 芭蕉 八聲の月に笠を揮 其角 揮=はたはた 味噌樽にもる露深き夜の戸は 言水 泣ておのゝく萩の少女 昨雲 妻戀る花馴駒の見入タル 似春 柱杖に地を切ル心春 千春 陽炎の形をさして神なしと 麋塒 陽炎=かげろう 帋鳶に乗て仙界に飛 曉雲 帋鳶=しえん 秦の代は隣の町と戦ひし 其角 ねり物高く五歩に一樓 芭蕉 露淡く瑠璃の真瓜に錫寒し 素堂 *真瓜=まくわ 蚊の聲氈に血を含むらん 言水 夜ヲ離レ蟻の漏より旅立て 卜尺 漏=うろ 槐のかくるゝ迄に帰リ見しはや 似春 匂落ツ杏に酒を買ところ 芭蕉 強盗春の雨をひそめく 昨雲 嵐更ケ破魔矢つまよる音すごく 千春 鎧の櫃に餅荷ひける 麋塒 末の瓦器頭巾に帯て夕月夜 曉雲 猫口ばしる萩のさはさは 素堂 * あさがほに齋まつりし鼬姫 言水 齋=いつき 蔵守の叟霜を身に着ル 芭蕉 叟=おきな 此所難波の北の濱なれや 似春 紀の舟伊勢の舟尾張船 麋塒 波は白波さゝ波も又おかし 素堂 * 傾城に袴着せて見る心 曉雲 今宵年忘。戀の榮を盡スらん 其角 柊が枝に小哥たてまつりける 昨雲 柊=ひいらぎ 庭稲荷椴に隠れて仄なる 卜尺 仄=ほのか いたらぬ役者藝冥加あれ 千春 豊さはぎ院に日待をもよほされ 芭蕉 霞の外の権田樂をなん召ス 素堂 * 紫の鰯を花に折しきて 言水 鰯=いわし しだのみ荒し楪の宿 其角 楪=ゆずりは 去年ウラの月の三十日の月くらし 曉雲 雪ものぐるひ筆を杖つく 卜尺 山鳥の音に羽ぬけ子や尋ぬらん 千春 鶴の箔衣ありし俤 似春 梦に入ル玉落の瀧雲の洞 昨雲 日を額にうつ富士の棟上げ 芭蕉 松髪の祖父蔦上下に出立て 麋塒 祖父=ぢい 城主に靈の蜜柑献ズル 嵐蘭 或卜に火あての鰹生かへり 峡水 卜=うら 旅木刀の吼脱て行 曉雲 吼脱=ほえすけ 世捨木や世捨の松に名を朽て 其角 からすの衣堤にくらし 素堂 * 橋上の番太は鐘を恨みたる 嵐蘭 西瓜はしらず潮満らん 千春 露くだるしだれ角豆の散柳 曉雲 月は築地の古キにやどる 麋塒 遁世のよ所に妻子をのぞき見て 芭蕉 よ所-よそ つぎ哥耳にのこるよし原 峡水 歩別レ馬は侍らん榎陰 其角 歩=かち 百姓の家に入て腹切ル 嵐蘭 榾=ほだ 是此年先祖の榾の火の消ス 昨雲 時ならず米に生る菌 千春 菌=くさびら 雨を聞て放下の村に閑カなる 素堂 * 燕尾小勝が墓に落くる 曉雲 衣装草萌出る翠リ紅に 麋塒 雪ふゞき茶や花の端つゞき 其角 御池漕扈従の渡守しばし 峡水 薫ふるふか水引の簑 昨雲 張雀鳴子なるこにおどろきて 麋塒 無カラン情人秋の蝉 嵐蘭 蝉=ぬけがら 月は問ふ山寺殿を離に 其角 離=かれがれ 石風呂の跡は哀ありける 素堂 * 箒木の茂きは鍬に夭せられ 千春 今其とかげ金色の王 峡水 袖に螭夢を契りけん 芭蕉 螭=あまれう 涙の玉あり明ケ暮レにかはかず 糜塒 我聞ケリ鈍士は胸の中黒しと 昨雲 閣思君堺町に溺るゝ 其角 閣思君=わざくれ 肩を踏て短尺とり立蹂グ 曉雲 蹂=さわ 奥にての御遊塀を隔つる恋 芭蕉 篝火を刀に掛て忍ぶ山 嵐蘭 浪は井積にかくす落人 千春 物あらふ盥をふせて暮る程に 峡水 藍搗く臼のごほごほし聲 塒糜 市賤の木びらを負る木陰には 曉雲 日傘さす子と嫗と男と 嵐蘭 嫗=うば 玄関にて神楽をまふけ給ひけり 其角 夜と共照らす袋提灯 素堂 * 花の奥盗人狩に泊して 芭蕉 八重八重霞飛行小天狗 其角
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最終更新日
2021年04月18日 14時39分56秒
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