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狂歌百人一首 太田南畝集 その一(1~50)
1. 天智天皇 正 秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ 狂 秋の田のかりほの庵の歌がるたとりそこなって雪はふりつつ 2. 持統天皇 正 春すぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山 狂 いかほどの洗濯なればかぐ山で衣ほすてふ持統天皇 3. 柿本人丸 正 あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む 狂 あし引の山鳥のをのしだりがほ人丸ばかり歌よみでなし 4. 山迢赤人 正 田子の浦にち出でてみれば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ 狂 白妙のふじの御詠(ぎょえい)で赤人の鼻の高嶺に雪は降りつつ 5. 猿丸大夫 正 奥山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の声きく時ぞ秋は悲しき 狂 嗚く鹿の聲聞くたびに涙ぐみ猿文大夫いかい愁たん 6. 中納言家持 正 かささぎの渡せる橋におく霜の白きをみれば夜ぞふけにける 狂 そのままに置くしもの句をかり橋の白きをみれば衰ぞ更にける 7. 阿部仲麿 正 天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも 狂 仲麿はいかいはぶしの達者もの三笠の山にいでし月かも 8. 喜撰法師 正 わが庵は都のたつみしかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり 狂 わが奄はみやこの辰巳午ひつじ申酉戌亥子丑寅う治 9. 小野小町 正 花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふる眺めせしまに 狂 衣通(そとほり)の歌の流義におのづからうつりにけりな女どし故 10. 蝉丸 正 これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関 狂 四(よつ)の緒のことをばいはず蝉丸のお歌の中にもの字四ところ 11. 参議篁(たかむら) 正 わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣舟 狂 こゝまでは漕出けれどことづてを一寸(ちょっと)たのみたい海士の釣舟 12. 僧正逼昭 正 天つ風雲の通ひ路吹き閉ぢよをとめの姿しばしとどめむ 狂 吹きとぢよ少女(おとめ)の姿暫しとはまだ未練なるむねさだのぬし 13. 陽成院 正 筑波嶺の峰より落つる男女川恋ぞつもりて淵となりぬる 狂 みなの川みなうそばかりいふ中に慰ぞ積りて淵はげうさん 14. 河原左大臣 正 陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにしわれならなくに 狂 陸奥のしのぶもぢもぢわが事をわれならなくになどと紛らす 15. 光孝天皇 正 君がため春の野に出でて若菜つむわが衣手に雪は降りつつ 狂 光孝と何かいふらん君がため若菜を摘むは忠義(ちゅうぎ)天皇 16. 中納言行平 正 たち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む 狂 行平は狐のまねをしられけりまつとし聞けば今帰りこん 17. 在原業平朝臣 正 ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは 狂 千早振御代も聞かぬ御趣向をよくよみえたり在五(ざいご)中将 18. 藤原敏行朝臣 正 住の江の岸による波よるさへや夢の通ひ路人めよくらむ 狂 とし行といふはもつとも住の江の岸による波顔による波 19. 伊勢 正 難波潟みじかき芦のふしの間も逢はでこの世を過ぐしてよとや 狂 難波がたみじかき芦を伊勢ならばやただ浜荻と詠みそうなもの 20. 元良親王 正 わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ 狂 詫ぬれば鯉のかはりによき鮒のみを造りても飲まんとぞ思ふ 21. 素性法師 正 今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな 狂 今来んといひし計りに出でこぬは素性法師の弟子か師匠か 22. 文星康秀 正 吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ 狂 喰ふからに汗のお袖の萎(しぼ)るればむベ豆(まめ)粥(がゆ)をあつしといふらん 23. 大江千里 正 月見ればちぢにものこそ悲しけれわが身一つの秋にはあらねど 狂 月みれば千々に芋こそ喰たけれ我身一人のすきにはあらねど 24. 菅家 正 このたびはぬさもとりあへず手向山紅葉の錦神のまにまに 狂 このたびはぬさも取敢ず手向山まだその上に賽銭もなし 25. 三條右大臣 正 名にしおはば逢坂山のさねかづら人にしられでくるよしもがな 狂 三條の右大臣なら前に居る河原の左大臣はなじみか 26. 貞信公 正 小倉山峰のもみぢ葉心あらば今ひとたびの ゆき待たなむ 狂 小貪山みねのもみぢ葉心あらば貞信公に御返歌かせん 27. 中納言兼輔 正 みかの原わきて流るる泉川いつ見きとてか恋しかるらむ 狂 泉河いづみきとてかかね輔(すけ)がとなりの娘戀しかるらん 28. 源宗于朝臣 正 山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば 狂 山里は冬ぞさびしさまさりけるやはり市中がにぎやかでよい 29. 凡河内躬但 正 心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花 狂 心あてに吸はばや吸はん初しもの昆布まどはせる塩だしの汁 30. 壬生忠峯 正 有明のつれなく見えし別れよりあかつきばかり憂きものはなし 狂 在明のつれなくみえしわかれより暁ばかりおこるしやくかな 31. 坂上是則 正 朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪 狂 是則がまだ目のさめぬ朝ぼけに在明の月とみたるしら雪 32. 春道列樹 正 山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり 狂 質蔵にかけし赤地のむしぼしはながれもあへぬ紅葉なりけり 33. 紀友則 正 ひさかたの光のどけき春の日に静心なく花の散るらむ 狂 ひさかたの光のどけき宴の日に紀の友則がひるね一時 34. 藤原與風 正 誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに 狂 誰をかも仲人にして高砂の尉(じょう)と姥とのなかよかるらん 35. 紀貫之 正 人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける 狂 人はいざどこともしらす貴之がつらつらつらとよみし故郷は 36. 清原深養父 正 夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月宿るらむ 狂 夏の夜は未だ宵ながらよく寝ればげに鱶(ふか)やぶと名をやいふらん 37. 文屋朝康 正 白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける 狂 かぜの吹く秋の野のみか瀧壹もつらぬきとめぬ玉ぞちりける 38. 右近 正 忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな 狂 忘らるゝ身をば思はす誓ひてし人のいのちの世話ばかりする 39. 参議等 正 浅茅生の小野の篠原しのぶれどあまりてなどか人の恋しき 狂 徳利はよこにこけしに豆腐汁あまりでなどか酒のこひしき 40. 平兼盛 正 しのぶれど色に出でにけりわが恋は物や思ふと人の問ふまで 狂 留むれどよそに出にけり小息子はうちに居るかと人の問ふ迄 41. 壬生出見 正 恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか 狂 召せといふわか菜の聲は立にけり人知れずして春になりしか 42. 清原元輔 正 契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山波越さじとは 狂 清はらの元輔といふ御名にてお歌は末の松山といふ 43. 中納言敦忠 正 逢ひ見てののちの心にくらぶれば昔は物を思はざりけり 狂 またしてもじゝとばゝとのくりごとに昔は物を思はざりけり 44. 中納言朝忠 正 逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし 狂 すく人の絶えてしなくば真桑爪皮をもみをもかぶらざらまし 45. 謙徳公 正 あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな 狂 初松魚(はつがつを)くふべき客は不參にてみのいたづらになりぬべきかな 46. 曾禰好忠 正 由良のとを渡る舟人かぢを絶えゆくへも知らぬ恋の道かな 狂 由良のとを渡る舟人菓子をたべお茶のかはりに塩水を飲む 47. 恵慶法師 正 八重葎しげれる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり 狂 八重むぐら茂れる宿のさびしさに恵慶法師のあくび百遍(ひゃくべん) 48. 源重之 正 風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけて物を思ふころかな 狂 花見んともちしささえをぶちおとし砕けてものを思ふ頃かな 49. 大中臣能宣朝臣 正 みかきもり衛士のたく火の夜は燃え昼は消えつつ物をこそ思へ 狂 御かき守衛士(えじ)のこく屁によし宜(のぶ)か鼻かゝヘつゝ物をこそ思へ 50. 藤臣義孝 正 君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひけるかな 狂 めいていにすゝる海鼠腸昧(このわた)よくて長くもがなと思ひけるかなお気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年04月17日 14時33分57秒
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