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2019年06月07日
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武川町の俳人 武藤樹青 『武川村誌』

 樹青は本名武藤寿晴といい明治二十八年(1895)五月一日、武川町下三吹二四三六番地に父武藤直吉母はぎの長男として生まれた。
富里尋常小学校を卒業するや上京し早稲田大学に入学し理工科を専攻した。
卒業後愛知県の矢作水力発電に就職したが、間もなく愛知県で進めていた耕地整理組合の主任技師として迎えられ千種、築地、豊川と次々に耕地整理事業を完成し、名古屋汎太平洋平和博覧会会場土地造成事業を担当した。この博覧会は、昭和十二年(1937)三月十五日から五月三十一日まで七十八日間開催された。その後は豊川市役所土木部長を最後に退官した。名古屋で戦災にあい戦後は郷里に帰ったが再び甲府に出て寿工営社を設立、持前の技量を活しながら専ら設計、製図を業とした。
 樹青の俳歴は幼いころから同村俳人対岳堂素自宗匠の門に入りその基礎を学び、東京に出て早稲田大学在学中は、巌谷小波、星野麦人の両先生に教えを乞い、名古屋に在住するようになってからは、獅子門十三世江面庵富宝宗匠の門に入り俳道の修業をつみ、宗匠より立机允許を受け、昭和六年(1931)五月九日名古屋市中区南伏見町弘法堂楼上において、江面庵御翁の来会を仰ぎ、諸先輩や、知名人の参列のもとに立机及び披露句会を催した。この時樹青は三十八歳であった。富宝宗匠は俳諧連歌に江寿庵樹青に立机を許して
   古道や探りいそしめ行々子
  に対して樹青は次のように返している。
   すゝしき影の明残る月
 なおこの時俳誌「コトブキ」を創刊するに当たり創刊句集を募り、全国各宗匠から多数の祝章を得ている。また全国各選者宗匠からは選句を、各吟社からは数多くの俳誌が送られ、机上句稿の山なす盛況であった。宗匠富宝は、
   これからが大事な坂ぞ花の山
 と引き立てた。
 その後は俳誌「コトブキ」を年六回出刷し、コトブキ名古屋支部の設立など各支部の設置に努力し、後輩の指導に当たった。

 立机式は、

  宗匠 江面庵富宝
  脇宗匠   梅宇
  執筆    其道
  香元    五峰
  知司    呼雁
  座配    儀山
であった。
自賀して 
   其の端を吾も借らばや花建
と、吟句した。各宗匠は江寿庵立机祝吟を次のように寄せた。
玉を巻くはせをや末の頼母しき    京都百世庵三間
仰がるる樹こそ明るし青柳      東京五乳人柳翁
寿くや君が立机にかほる梅      茨城江寿庵陽炎
大空に広がる声や揚雲雀       名古屋平手茶堂
桃咲くやはるかに富士の見ゆる丘   山梨若楽洞句楽
 
 樹青は日本列島の中央名古屋市に住居を構えていたこともあって俳道においては全国の宗匠とも通じ立机式には七七名が参加している。
 その後は毎月句会を催し、ほとんど自宅で行っていた。日田亜浪の主催する俳誌「石楠」の他飯田蛇第の主宰する雲母にも盛んに投句した。
昭和十八年五月号には
   梅ぬくし神馬癖ある首を振る
 と詠んでいる。
 終戦と共に郷里に帰った樹青は暫く武藤亜山、輿石糊秋、小沢草の王等と地域の俳人と共に句会を催し地域の文化向上に力を尽くした甲府に出てからは、甲府市役所参与として土地家屋調査士となり山梨県初代調査士会会長を勤めたこのころ俳道においても「石楠」に投句している。
   大晦日顧みて悔いなしとせず    樹青
   年迎え新巻鮭買って心足る     
   街狭し山の初日光を手に      
 また雲母にも次の投句が見られる
   緋に燃えて椿にすこし重さあり   樹青
   なめくじの跡ぎらぎらと梅雨あがる 
 境川の飯田蛇笏との交友も深めながら盛んに作句を続けていたが、昭和三十九年十月二十九日七十歳をもって他界した。
 法名は長證院建功寿晴善居士 常体院に墓がある。
   初袷見せに来し子を抱いてやる   樹青
 如何にも樹青らしき一面をのぞかせた句であり眼鏡の奥から細い目で笑みのある顔がうかぶ。





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最終更新日  2021年04月14日 15時38分19秒
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