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2019年06月07日
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武川町の俳人 林立平 『武川村誌』

 今は武川村牧原に住んでいるが、一生れは北巨摩郡穴山村次第窪(現在の韮崎市穴山町)に明治四十四年(1911)十一月二十四日林董平の八人兄弟の次男として生まれた。
 能穴焼で知られている初代林茂松を実兄に持つ立平一家は芸術兄弟として土地の人たちからも親しまれている。商売柄茶をよくし、川柳、俳句に親しむかたわら郷土史の研究にも趣味をもつ人である。
 特に川柳については、小学校のころから山日新聞の文芸欄川柳の部に興味を持ち始め、大正十二年(1923)高等科二年の時先生の進めもあって初めて、甲府の句会に出席した。この時から篠原春雨師匠に認められ、以後同師匠について作句を続け、山梨日日新聞に発表するなど目覚しい進歩を続け、一〇年後には山梨県柳壇に頭角を現し、昭和十一年度山日発表
「川柳課題吟採点番付」には前頭東一七枚目、翌十二年度には前頭二枚目に進出した。
 昭和十五年(紀元二千六百年記念)新春文芸「興亜の春」川柳、篠原春雨選に出句、見事二等に入選した。
春三度いよいよ強き兵の妻
師匠の評は「あらゆる艱難を克服して雄しくも銃後をガッチリと握る兵の妻に三度目の新春は訪れたり、此の句何等巧まざる中に「いよいよ強き」の七字千鈎の重厚さを含む、時局下の日本女性あまねく斯くあるべし」としている。その時代の背景が偲はれる。
 さらに同年五月四日師匠春雨還暦記念川柳大会において課題「還暦記念」の作句が天位に入賞の栄誉を得たことは目覚しい進歩である。
  六十年庭一ぱいの松になり
 春雨師匠から大いに賛辞を得て喜ばれたところである。
一方、このころ山梨日日新聞主催山梨県下青年弁論大会にも北巨摩郡を代表して参加し、県下第二位を獲得した持ち主でもある。
 その後はあらゆる柳壇において常に上位入選を重ねていった。家の光選者川上三太郎の全国川柳大会に出席し次の句を出した
  肉親は遠く寮舎の虫の声
  敵弾下従軍僧の眉宇静か
 また県下川柳大会において最高賞を二回獲得し初代篠原春雨から次の自筆句を戴いた。
  伊勢詣りかたじけなさの歌通り
国の華小さき寺に此の碑文
 さらに祝出征林立平君として
春雨師匠は
  征けよ君日本生れの十七字
 昭和十九年八月十五日となっている。如何にも時代的背景が想像されるところである。
 戦後もずっと山日柳壇に投句した
  面倒になって針めど孫を呼び
  八人目男がほしい岩田帯
  新妻の素足の自さ早苗取る
  長年の功績によって昭和四十
八年度山日文芸川柳の部、年度賞を受賞した。
一方、昭和二十二年武川村に籍をおいてからは小沢草の王の主宰する「奥甲斐吟社」に入社し武藤亜山等と共に同社のリーダーとして同会発展に力を尽くして来た。昭和三十七年長野県諏訪市において「諏訪俳壇主催南信日日後援による秋季大会」が行われ林立平は仲間と共に参加、見事次の句が天位となり、長野県知事賞を獲得した。甲信両県の有名俳人を驚かした話は余りにも有名である。
  鮨を食ふ女の首の偽真珠

 昭和三十年代の句をひろって見ると

  旅十日事なき門の落し文               、
  雲たれて植田に雨意の動きそむ
  虫時雨当分会えぬ子をたゝせ
  短日やふしん長びくきねの音
  如月やものの皆ゆるむ雨を聴く
  雨晴れて梅桃玻璃の彩を抱く
  芽柳や淀みに遊ぶ鍋の炭

 五十年代の秀句から

  鳳仙花少女の声に種とばす
  春愁や塵のポケッ上異返す
  初詣閉ぢし瞼に神引よせ
  押し合って空を見ている鉄線花
 奥甲斐吟社の毎月一回催される句会では常に上位の点数をとり、爾来句歴五十有余年俳人林立平の名は県下に知れ渡り、現在もなお陶芸に専念するかたわら作句に精出し、山日俳壇(加賀美子麓選)欄に毎週投句掲載されていることは立派である。





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最終更新日  2021年04月14日 15時37分25秒
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