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2019年06月09日
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カテゴリ:甲斐駒ケ岳資料室

駒ケ岳・仙丈岳・自嶺縦走-柳澤登山口

 

   『日本南アルプスと自然界奥付』

昭和六年発行 流石英治氏著 甲府市朗月堂発行

一部加筆

行程

1 甲府――柳澤--駒ケ岳鉱泉(六時間)

2 鉱泉――五丈の小屋(九時間―十時間)

3 五丈――頂上-―仙水峠――北澤小屋(十時間)

4 北澤小屋―滞在(三日間)

5 小屋――千丈岳――両股小屋(十二時間)

6 小屋――三国――間の岳――石室(十四時間)

7 石室――唐松谷(十時開)

8 唐松谷――唐松尾根――大門澤――西山(十四時開)

9 西山温泉――大峠――青柳――甲府(十二時間)

 

1、甲府より駒ケ岳鉱泉

 第一日 七月二十八日 晴

 久しく降り続いた雨が上ってから四日目だ。まだしばらくは天気が績くであらうと予想して、予定の日に出発する事にした。午前八時甲府駅に至ると、甲府聯隊の将校が転任見えて、多数の送人が待合室に溢れていた。客や見送りの人々の混雑に巻き込まれるには不充分な程、リュックサックの荷は大き嵩張っていた。とうとう大勢に見つかってしまった。

「どちらの山へお登りになりますか?」

「まア、大役なお荷物ですね、南アルプスですか、それは御苦労ですな折角、成功を折ります」 聯隊であの出征ざして知られたM中尉や、F大尉が元気つけてくれたのも嬉しかった。同行のものも皆揃ったので汽車に乗り込んだ、H氏が既に石和駅から乗って車中に居られる。凛々いし登山姿には日ごろ元気な君の面影が躍動している。

 汽車が動き出すや、全ての混雑を車輪の響に収めつつ、甲府盆地を西に疾走して、アルプスの行進曲を奏した。

 綱棚にはかなり背囊が並んだ。そしていづれもが逞しい風姿と希望に燃えた眸で地図を開いたり、山の話に打ち興じで前途に横たわる艱難(かんなん)予想微塵もなく、高嶺に嘯く快感に浸されている様子であった

 冨美台地(旧双葉町)が緩い傾斜か見せて甲府平らに交叉しているあたりは、何となく「火山の裾野」という感じが濃厚である。そして、いつもこの豪地のトンネルを過ぎる頃には、茅ケ岳から押出された泥流の物凄さが心に浮んで、第三紀終末から洪債世にかけての火山活動の情景が、幻影となって現われてくるのを覚える。

 塩川左岸に切り立った(ぎょう)塊集(かいしゅう)塊岩(かいがん)を浸蝕した風景は、茅岳が活動し当時を偲ぶ好資料である。その「甲府湖」しばらくこで呼ぶ大きな化石湖、それは今の甲府台地より、もっ其の縁が広かった洪積世の湖水に茅ケ岳から溢れ出た火山灰・砂礫・岩塊なが流出した常時を想像する、かの十勝岳が富良野平原に泥流を流した以上の凄愴(せいそう)な光景が惣藏されるのである。

 船山(韮崎)と呼ぶ七里岩台地の(カットオブ)(スパー)していりことは、地形白いこである。嘗ては韮崎の町中を釜無川の本流が貫流して川の右岸を脅かし、が合流事もあった。それこそ船山は孤島して流奔溢の真只中に頭角を抽出していたに違ない。そして韮崎の町の地盤も幾夜か河水の見舞う処となって其の渦巻を繰返したとれる。そんな地質時代の氾濫は昔の夢で、今は南アルプス登山銘打った宣伝も(やかま)しく台ケ原(白州町)への自動車道路が開通以来、往昔、蔦木(つたき)(富士見町)往還(すう)駅として栄えた過去の歴史に回生した感がある。

 甲府湖がもし青藍を湛えたならば、此處はさし向き展望台して屈竟の(こう)(かく)であに相違ない

今は「池田プール」が夏季遊覧の雅客を引きつけて韮崎名物と呼び交わされる。







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最終更新日  2021年04月14日 14時40分13秒
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