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2019年06月09日
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カテゴリ:甲斐駒ケ岳資料室

甲斐駒ケ岳 七丈小屋

駒ケ岳・仙丈岳・自嶺縦走-柳澤登山口

    『日本南アルプスと自然界奥付』

昭和六年発行 流石英治氏著 甲府市朗月堂発行 一部加筆

 

七丈小屋は二三〇〇mの辺りで、北には尾白川の渓谷の枝澤が急角度に崩壊して大ガレを呈している。水は東南に五〇〇m計り下ると得られ、東南が開けているも、西北は山林を以って遮られるので、西南風を防ぎ小屋の位置としては適当な處である。

 菅原村、「古屋七兵衛」氏の経営する小屋である。二間半に四間の木造小屋で、約三十人は収容出来る。十二年前に山梨県で建築したものである。一ケ年登山客の利用は約一千名である。県内に於いて登山客を相手に経営の出来る山小屋としては、富士山を除いては三ツ峠と甲斐駒ケ岳の二か所である。三ツ峠は東京の大岳、専門学校の学生団を主として一日のピクニックに適している。

 此の處は宗教上より信者が登山し、「駒ケ岳講」の禧讃場として名高い。しかし、最近に於いては大武川渓谷、尾白川渓谷及釜無川上流の渓谷、それに野呂川渓谷の四方より、渓谷探勝者にとってはかなり多くの未踏査区域を包蔵しているので、これからは一層登山客を吸引するであろう。

七丈小屋に到肴した時より風は次第に烈しく、およけに早川尾根の前面一体に白雲が飛んで来た。

 サウシカンバが雪に抑さえつけられて矮生になり樹下のツマトリソウ(褄取草)、ハナイカリ(花碇)、大文字草なども、ハイマツの出現と共に目立って美しさを増してきた。

 七丈小屋より登る事、約一昨間で八丈に着す。此の處は昔から「御来迎場」として、信者が日の出を拝する霊場であった。「寶殿講」寄進の「(そん)(おう)大神(おおかみ)」(蚕の神の石鳥居をはじめ、大日(だいにち)大聖(だいせい)不動明王(ふどうみょうおう)を祀れる石祠、石碑が林立してる。

 此處より喬木帯が全く尽きて灌木帯に変わり、おまけに大ガレの為に、稍ようやく平坦の小地を山腹に見出し、眼界開けて甲府盆地は悉く双眸の裡に収まる絶好の展望揚である。

 標高二七〇〇m、甲府市からも遥かにこの地点を指示することが出来るのである。

 八合目以上は比較的緩傾斜であるが、南斜面は急峻で崩壊の跡、生々しく断崖哨壁屹立して肌に粟を生ぜしむ感がある。東から見た駒ケ岳は黒戸山を腰に据えて、互丈と八丈とに緩やかな段階を存するのである。

 ハエマツは山頂に向って其の繁殖能力を絶大に発揮して、一面の海さながらである。

 もしも此の中に踏みとすると、其の枝状に妨げられて二進も三進も動けなくなるであろう。枝條を踏みつけ踏み付けて上下運動をなす事故、その苦悶は一通りでない。しかし頂上に至るに従って矮生になる故に、山路を歩く人にとっては左程にも感ぜられない事であろう。

 荒天の予報者としての雷鳥は、登山者に一種の恐怖を与えるものである。丁度八合の「御来迎場」に到着する際に於いて、ハエマツの間より岩角の上を徐行する一羽を発見して、これを追い廻したが、ハエマツの露に濡れショボたれたのみで、遂にその緑濃き中に潜入されてしまったのは残念でもあり、おかしくもあった。

 「人面石」は御岳昇仙峡のそれ程巧緻(こうち)(巧み)を極めたものではないが、花崗岩風化の過程に於て自然彫刻したものとしては推賞に値するものである。






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最終更新日  2021年04月14日 14時38分00秒
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