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山梨県歴史文学館 山口素堂とともに

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2019年06月29日
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カテゴリ:著名人紹介

 

 寒ネコ 熊王徳平 菊島隆三 深沢七郎     

 

『新人国記』朝日新聞社刊 昭和38年 一部加筆 

 

富豪、実力者、大企業の社長さん。甲州財閥とよばれる成功者冷気二群の世界を、これまでみた。

 一方、貧しくて無名で、しかし恐ろしく巧妙、俊敏、精カ的な甲州行商人の世界が、底辺にある。それを、ユーモラスに、えげつないほど描き尽し、「いや、こうしなくては食えないんだ」と怒りをぶちまけたような小説「甲州べえと牛の糞」また「狐と狸」作者・熊王徳平、増穂町生れ。小学校だけで家業の床屋。三十五歳で廃業、行商人になって全国を歩く。非合法時代からの共産党を十年前に離れて作家。「筆で食えなくなったら、いつでもまた行商をしようと考えている」

 

 シナリオ作家 菊島島隆三 

 

甲府の織物問屋の坊ちゃん。甲府商をおえ、角帯しめて帳場にすわっ冷。戦災で廃業。東宝脚本部へ。

 小学生のとき韮崎の新府城跡に遠足にいく。土を掘ると、武田勝頼落城のときの焼米が出てきた。これが小判だったら……と思う。少年の夢から後に生れたのが、映画「隠し砦の三悪人」。商家で、若尾、根津ら甲州財閥の豪傑たちの話を聞きながら育った。後に、甲州出身のある政商をモデルにして、シナリオ「汚れた手」をかく。

 荒々しく、骨太で、逆接に屈しない。時には手を汚してでも、たくましく生きる。そういう(甲州人らしい)英雄のカゲを、いつも菊島の筆は追い、日本では珍しい「男性」映画の作者と評される。

 黒沢プロの仲間からもらったアダ名が「寒ネコ」。甲府商のころ、寒中、悪友に誘われて、ネコを殺して食った。アワばかりで、うまくはなかったそうだけれども。

 

深沢七郎 

 

石和町生れ。残忍痛烈な貧乏物語「肩山節考」、武田三代を始めて小百姓の目で、勇ましいばかりでなく描いた「笛吹川」。だが三十五年秋「風流夢譚」を発表。いらい逃亡、流浪。

 

山本周五郎 

 

韮崎市生れ(正しくは大月市)。家業は繭仲買から料理屋。むかし武家だったそうで、七歳のとき白装束に裃をつけ、切腹の作法をやらされた。恐ろしくて、十四、五歳まで夢でしばしばうなされる。

 時代小説を書いて、ハラハラドキドキの剣豪、英傑は登揚しない。貧乏、失意、絶望のなかの庶民の気持。男や女が何を考え、どう生きたか。現代につながる普遍的な人間らしさを、時問をかけて、たんねんに構築する。

 生き方もそうで、権力、文壇づきあい、有名、賞の類は大きらい。「日本帰郷記」の直木賞、「樅ノ本は残った」の毎日出版文化賞、「青べか物語」の文春読者賞ほか、賞という賞はみんな辞退した。

 「暗がりの弁当」という文章がある。歳末、昼ごろの映圃館に入った。館内が暗くなる。と、カバンから弁当を出し、音を潜めて食べる人があるのに気がつく。あとでみると、きちんとした背広にオーバー、中折帽、中年の紳士だ。どんな気持で食べているのかを身にしみて感じ、胸が痛くなる。

 横浜の海の見える仕事場をたずねた。風の強い日、六十歳の作家は、ひとり酒を汲み、ショパンを聞いていた。「悲鳴だな。繰返し、繰返し、訴えているんだね。こういう小説を書かなくちゃな」

 

青柳瑞穂 

 

市川大門町の漢詩人の家に生れ、慶応卒。「マルドロオルの歌」ほか仏文学翻訳と、古美術堀出し。----流美街商の一流美術商の一店全部を買い占めて貨車で運んだ富豪の話を前に書いたが、この人に「ささやかな日本発掘」という美しい文集がある。

 甲州財閥と、この文壇の人達と。およそ異質のようであって、同時にまた、写真のネガとボジとであるようにもみえる。

 

増村保造 

 

甲府市生れ。「巨人と玩具」「氷壁」ほか大映監督。

 

画壇 望月春江 

 

甲府市の教育者の家に生れ、。東京美校日本画科卒。花ひとすじの画業。「蓮」で二十七年度芸術院員。六十九歳。

 

萩原英雄 

 

甲府市生れ。警察署長だった父の転任で八歳のとき渡鮮。のち単身上京して東京美校油画科卒。二十八年結核で倒れ、入院と同時に写実を清算。闘病三年、抽象版画で再出発した。けじめ国内での評は冷たかったが、三十七年「白の幻想」でルガノ国際版画ビエンナ-レ胚グラン・プリ。今日でも海外でのほうが、よく知られている。五十歳。

 

 壊れたトランク

 

「甲州人は忍耐づよく、執念深い。聯き方では、これが、あくなき真理探究心となり、すぐれた科学者を産む」林髞の説だ。

 林は甲府市で六代続いた医家に生れ、甲府中から慶応医学部卒。神経生理を学び、五年後、助教授。昭和七年から、レニング-ラ-ドで粂件反射のバブロフに師事。

 いつも若い林が議論をふっかけた。八十歳のバブロフは、少しもごまかさない。四つに組んで、解決するまで激しい討論を続けた。留学一年足らずで、影響は決定的だった。条件反射を手がかりにして大脳生理学をやろう。野心を抱いて林は帰国する。

林の筆で、条件反射とパブフの名は、帰国後たちまち知られた。しかし、肝心の学問のほうは、だれも理解してくれない。学会では孤立無援。大学では万年助教授。バブロフも死んだ。あとは、忍耐と、あくなき執念しかない。

 「冒険だった」と、いま、林はいう。当時、世界でも、大脳生理学は学問として認められていなかったのだから。それが戦後、ようやく認められ、最近は日進月歩。日本は今日、本家のソ連につぐ条件反射学国だという。

 むずかしい大脳生理学を、たくみにかみくだいた「頭脳」「頭のよくなる本」「勉強が好きになる本」林のベストセラ-三部作。また、木々高太郎の名で発表した探偵小説が三十年間に二百編ほど。「人生の阿呆」で昭和十一年の直本賞。ほかに、人生相談、テレビ。

 ほんとに忙しいひとだ----執筆は朝。午前九時半きっかり、筆をおく。「デアリ」までで、そとで中断、翌朝「マス」から書き継ぐ----のだとか。六十六歳。

 

内藤多仲 代表作・東京タワー

 

耐震建築設計で、昨秋、文化功労者に選ばれた。早大名誉教授、七十七歳。

 櫛形町の貧家に生れ、甲府中、一高から、日露戦争直後の前景気で、東大造船科をえらぶ。ところが講義の冒頭、教授はいう。

 「戦争は終った。君たち、今ごろ来たって船では食えんぞ」

 貧しい内藤にとって、これは困る。いそぎ、建築科に籍を移してもらった。

 つまずきは続く。建築科で図形ばかり書かされたこと。内藤は製図が苦手で、くさっていた。そこへ「耐震建築をやらないか」と、教授のすすめ。目をひらく思いで大学院から早大教授、そして大正六年念願の米国留学。だが、米国では収穫が少ない。逆に「耐震建築なら、日本人がやるべき仕事じゃないか」といわれて帰国。また、日夜苦しむことになる。

 ある日、ふと浮んだのは、こわれたトランクだ。新しいのを買っていったのに、アメリカ旅行中、汽車から汽車への積み替えで、見事につぶれてしまった。あれは、トランクの中の仕切りを外して使ったのが原因だった----どうだろう、建物も、壁や筋交いで、効果的な仕切りをいれたら、地震に強くなるんじゃないか。

 着想を内藤はさっそく歌舞伎座や興銀の建物の基礎設計に生かした。論文も書いておいた。

 また、ある日----大正十二年九月一日、大震災が関東を襲う。たまたま銀座裏にいた内藤は、歌舞伎座に飛んでいく。瓦が二、三枚ずれた程度で無事。つぎは興銀へ。まわりの新築ビルは見るかげもないのに、興銀は無事。トランクは、壊れなかった。

 内藤理論の正しさは、こうして大震災が、ありありと実証してみせる結果となった。

 

今日の代表作・東京タワー。パリ・エッフェル塔より十メートル余り高く、使った鉄材はけ半分以下という。

 

雨宮育作 

 

山梨市生れ。水産学、水産動物学の権威で東大・名大名誉教授。富士五湖にワカサギの移植を図って成功、いま、アメリカに日本のアユの移植を手がけている。

 

民法、労働法の東大教授(白根町)、金属学の早大教授・飯高一郎(東八代・芦川村)、

青出学院大学長・大木全次郎(甲府市)、数学の阪大教授・功力金二郎(韮崎市)、国語研究所第二研究所長・輿水実(須玉町)、内科、血液学の熊本医大・東京医大名誉教授・小宮悦造(大月市)、公衆衛生院長・斎藤潔(白根町)、解剖学の九大名誉教授・進藤篤一(小淵沢町)、合成雲母の名人教授・野川稲吉(御坂町)、科学史の大阪市立教授・原光雄(白州町)、農林省蚕糸試験場長・横山忠雄(八代町)。






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最終更新日  2021年04月12日 17時01分29秒
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